風刺・戯文

新たなプラン

私は今、2 つの動画配信サービスに加入している。とはいえ、最近はあまり見る時間がない。また、見る時間があっても、数ある映画やドラマの中からどれを見ようか迷ったり検索したりしているうちに、ドラマ 1 本分の時間が過ぎ去ってしまう。

この現象は、私ばかりでなく、多くの人が経験しているようだ。その原因のひとつとしてよくいわれているのは、作品が多すぎる、ということだ。選択肢が多すぎるとかえって決められないというのは、動画選びに限らずよくある話だ。

もうひとつの原因についてもすでに指摘されている。それは、映画なりドラマを見るのは実際には体力がいる、というものだ。要するに「気持ちは見たくても、体がついていかない」ので結局、動画配信サイトのホーム画面をスクロールするだけで、終わってしまうのだ。

そこで、私は考えるのだが、動画配信サービスには、ファミリープランや、画質のいいプラン、広告つきの安価なプランなどいろいろなプランがあるが、いっそのこと、ホーム画面だけが見られるというプランも作ったらどうだろうか。

もちろん、映画やドラマは見られない。だが、動画を見ない人にとってはこれ以上にコスパがよくて、うれしいプランはないと思う。

風刺・戯文

ブラックホール与党

今日、国立宇宙理論研究機構が発表したところによりますと、与党がブラックホール化する可能性が高まっているとのことです。

そのきっかけとなったのが、連立の崩壊。これにより、そもそも少数与党だったのが、超少数与党となり、きわめて不安定な状態になった、といいます。

報告では、理論上、今後2つのシナリオが考えられるそうです。ひとつは解散総選挙や新たな連立により安定を取り戻し、再び膨張に転ずるというものです。もうひとつは、不安定な状態が権力崩壊を引き起こし、収縮が始まる場合です。いったん収縮が始まると、もはや押しとどめることはできず、やがて与党はシュバルツシルト面(事象の地平面)よりも小さく圧縮され、ブラックホール化します。

与党がブラックホールとなると、あらゆる物質、光線、情報、裏金問題、汚職、賄賂、スクープ記事などがその中心に引き込まれ、表に出ることはできなくなります。また、ブラックホールは非常に強い重力をもつため、この重量によって、広い範囲にわたり歴史の歪みが発生すると、研究者は予想しています。

風刺・戯文

内戦に転化せよ

【ザンゲー通信社:社説】
ますます先行き不透明になっていくこの国際社会において、もっとも重要なのは同盟関係、とくにアメリカとの関係である。

現在のアメリカはトランプ大統領という強力な指導者をいただいており、日本政府は、日米同盟を維持するために、あらゆる手を尽くしてトランプ大統領に媚びへつらい、おもねる必要がある。

そのために、日本政府は、媚びへつらいの印として、トランプ大統領が欲しいもの、とくにトランプ大統領が欲しくても手に入れることができないものを差し出すべきである。

それはいったいなんだろうか? ひとことで言えば、内戦である。日本で内戦を起こすのである。

どういうことかというと、まず日本国内で政府と反政府組織とが交戦を始め、内戦を激化させる。そして、国民の多数が犠牲者となり、こう着状態に陥ったそのときに、トランプ大統領に和平の調停をお願いするのだ。もちろん、和平は成立し、その結果、トランプ大統領はもっとも欲しいもの、つまりノーベル平和賞を手に入れることになる。

トランプ大統領は我が国に対する恩を決して忘れないことだろうし、内戦で死んだ国民の霊も浮かばれることだろう。

もちろん、このような内戦を起こすのは簡単なことではない。だが、さいわいにも、今、日本はそれが唯一可能な方を首相として戴こうとしている。我が国の将来を見据えた「媚びへつらいを内戦に転化する」政治の実現のために、野党は妨害工作を慎むべきである。

風刺・戯文

太いパイプ

自公連立の解消という衝撃が走った昨日から一夜明け、高市自民党総裁の女性初の首相就任が必ずしも確実とはいえない状況になってきました。

「今回の公明の離脱は、高市さんが公明党との太いパイプを持っていなかったためだ」と語る自民関係者。また自民党幹部も「高市さんが今後、首相になるためには、野党との協力を取り付ける必要がある。そのために高市さんは、野党との太いパイプを積極的に構築すべきだ」と注文をつけます。

そんななか、今日、自民党本部前に熱烈な高市支持者が集まり、手に手にパイプを持って高市首相誕生を呼びかけました。

集会の主催者「太いパイプがないという高市さんに対する批判にいてもたってもいられず、今日の集会を企画しました。私がもってきたのは呼び径 200 の硬質塩化ビニル管です」

別の参加者「それじゃだめですよ。私は炭素鋼鋼管。直径は 500 です」

「ちょっと待てよ」と別の参加者。「いや鋼鋼管なら、溶融亜鉛でメッキされた白管のほうがずっといい」

「そんなことはない!」「いやそうだ!」「おい待て! このパイプは中国製じゃないか!」「バカ言うな!」

初めは穏やかに始まった集会ですが、最後は支持者同士が互いをパイプで殴り合う騒ぎとなりました。

風刺・戯文

日本に学ぼう

この度、トルコ、イラク、イランなどの政府関係者が日本を訪問し、川口市を視察しました。どの国も、国内のクルド人をめぐる問題に悩まされてきた国です。

「私たちは日本で実に効果的なクルド人迫害が行われていると聞いてやってきました」と訪問者たちは語ります。「私たちはクルド人としばしば武力による対立を経験してきましたが、それでもクルド人勢力を消滅させることはできませんでした。ところが、日本ではいかなる武器もなしにクルド人を追い出すことに成功しつつあるというではないですか」

街でさっそく、クルド人に対するヘイトスピーチをする市民に出会った訪問者たち。通訳から内容を聞いて感心します。「こんなイヤがらせの仕方があったのですか!」

また、クルド人を追い出そうと集った市民の活動にも大いに関心を惹かれた様子です。

(訪問者)「日本では市民、行政、マスコミが一丸となってクルド人をいじめているのに感銘を受けました。これぞ民主主義のあるべき姿です」

訪問者たちは「クルド人の子どもを標的にするなど、日本人のすばらしい陰湿さを学ぶことができたのは大きな収穫でした」と、満足げにそれぞれの国に帰ったということです。

風刺・戯文

素人は黙ってろ

素人はしょせんプロには敵わないのです。まず、経験と知識の差があります。プロは長年の訓練や実践を通じて、素人がちょっとやそっとでは追いつけない経験と知識を身につけているのです。

それに、プロというものは必ず結果を出しています。だからプロといえるのです。一方、素人は結果など出せませんね。だから、プロではないのです。

さらに大事なことをいえば、プロと素人では責任の重みが違うのです。プロには間違いが許されません。ですが、素人はたいてい間違います。ひどいのになると、間違っても気づきもしない。いや、もちろん、プロだって人間です。間違うときもありますよ。ですが、そんな時でも徹底したリスク管理能力があるおかげで、被害を最低限に食い止めることができるんです。

だから、素人がプロに対して意見を言うのはもう本当に間違っています。素人にはそもそも意見を言う資格すらないんです。

それでです。将軍とはなんですか? そうです。戦争のプロです。その将軍が、みなさんに、たった10万人の犠牲で、戦争に勝利するといっているんです。素人は文句など言わずに、黙って前線に行ったらどうですか。

風刺・戯文

反日外国人の野望

某反日国の秘密研究所に全身傷だらけの男が虫の息で担ぎ込まれてきた。所長が駆けつけると、男は手に握った毛の塊を差し出し、息絶えた。

「つ、ついに手に入れたか! わしらはお前の命を無駄にはせん!」

所長は、研究員たちをただちに招集した。その研究所では、日本を混乱に陥れるための恐ろしい研究が進められていたのだった。所長は、スパイが命を賭して奪ってきたその毛の塊を解析し、遺伝子操作によって、恐怖の「作品」をついに完成させた。

徹夜のせいで青ざめた顔で所長はテレビをつけた。日本の総裁選の様子が映し出される。所長はその成り行きを見ながら、込み上げる笑いを抑えることができなかった。

「フハハ、ムハ、ウハハハハハハ!」

(閃光がきらめき、おどろおどろしい音楽が鳴る)

巨大な獣が荒れ野に出現する。熊のように黒く、鹿のような鋭い角が生えている。目を憎しみにランランと輝かせながら、地を揺るがすような咆哮を上げる。

所長「奈良の鹿の毛から得た遺伝子を、獰猛な熊に注入することで生まれたモンスターよ、行け! 射殺しても非国民、射殺しなくても非国民、暴れ回って日本人を困らせるのだ! フハハハハハハ!」

風刺・戯文

80 歳からの NISA

NISA を始めるときに大事なのは、年齢だと思っていませんか? そんなことはありません。80 代からでも大丈夫!

「でも、その年じゃ、運用期間、短くない? それに、退職金ももうないんです!」

だから大丈夫ですって! 80 歳からでも、90 歳からでも、しっかり運用できる秘訣、あります!

それが「新 NISA コールドスリープ・プラン 3025」

コールドスリープとは「人体を低温状態に保つことで老化を遅らせる」こと。

「なーんだ、SF とかの夢物語じゃないか」

ちょ、ちょっと待ってください。最近、人気女性音楽グループが挑戦したことでも話題になったように、じつはこの技術、実用化されていたんです。

このコールドスリープと NISA を組み合わせたのが「新 NISA コールドスリープ・プラン 3025」。話は簡単です。あなたがコールドスリープ状態で 1,000 年寝ている間に、積み立て NISA がすごいことに!

私たちの試算によれば、目覚めたあなたは、控えめに言っても億万長者。もちろん、コールドスリープにかかる諸費用を差し引いてもです!

さあ、今すぐ「新 NISA コールドスリープ・プラン 3025」にお申し込みを!

【申し込み特典】
今なら 1,000 年の上質な眠りを約束する高級ピローをもれなくプレゼント!

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散文

天使のメール

知り合いの日本語教師に、天使のメールが届いたというのでご報告したい。

その人は、ある朝、日本語学校で授業の準備をしていたそうだ。1コマ目から授業があるので、教材を持って、少し早めに教室に行ったのだった。

すでに何人かの学生が来ていて、互いに挨拶をする。彼が今日担当するのは初級クラスで、ネパールやらミャンマー・ベトナムの学生ばかりだ。これらの学生は「非漢字圏」の学生と呼ばれる。中国・台湾といった漢字圏ではないということだが、ひとことでいえば、日本語の習得にさいし、漢字で苦労し、漢字でつまづくことの多い学生たちだ。

授業開始まであと 10 分ばかりとなったとき、彼の携帯にメールの通知が来た。メールアプリを開いて、送信者を見ると、クラスのある学生からだ。そして、そのメールの件名にはこう書かれていた。

「天使ややがおくれた」

「天使やや」とはなんだろうか。そして、その天使の到来が遅れた、とは。ある種の終末論を想起させるこのメールの本文には、なにも書かれておらず、ただ写真が添付されているだけだ。

彼はその写真を開くのに躊躇した。神々しいエンジェル・アートかもしれない。人前で開くのにはばかられるような画像かもしれない。あるいは、学生の携帯がウイルスに感染した恐れだってある。

だが、彼は開けた。

写真には、電車の遅延を知らせる電光掲示板が写っていた。

メッセージは「電車が遅れた」だった。

小説

知的生命体の探索

地球人はついに星々を巡る船を建造し、知的生命体を探索する旅に出発した。もちろん闇雲に探すのではない。地球人たちは遠い星のいくつかにもう目星をつけてあった。

数万光年の旅のすえ、船は最初の星に到着した。だが、そこには生命と呼べるものはなかった。そこで、さらに数万光年の旅を続け、2番目の候補の星に辿り着いた。船は星全体をスキャンしたが、小さな微生物がいるだけのようだった。

船が3つ目の星に着くまで、さらに数万光年の虚空を突き進まねばならなかった。そして、その星で地球人は不思議な存在を見つけたのだった。

それはまるで枯れた樹木に似ていたが、目や口のような器官があった。そして、この樹木たちは、その口のような穴ボコを動かして、互いに話し合っているようなのだった。地球人はこれこそ知的生命体かもしれないと大いに興奮した。

「私たちは遠い星、地球から知的生命体を見つけるために旅をしてきました。みなさんとお会いできて光栄です」

すると、樹木たちはぴたりと動きを止め、ぶつぶついう声も聞こえなくなった。

「なんだ」と地球人は言った。「知的生命体ではないのだな」

がっかりして地球人が立ち去ろうとしたとき、一本の樹木が鋭い音を発した。その音の分析には長い年月がかかり、それが分かったときには、船は遠く離れた別の星域を漂っていた。

樹木はこう言ったのだった。「僕たちも知的生命体の探索のためにこの星に派遣されたんだよ。大変だよね、知的生命体を見つけるのって。お互いに見つけられるよう、がんばろー……」

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