風刺・戯文

原理>原則

非核三原則とは、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする政治的原則だ。この原則は、問題があるからなくすべきだという政治家もいれば、問題があるから強化すべきだという市民もいる。

また「撃ち込ませず」を入れて四原則にすべきだという意見もある。これに対しすでに「持ち込ませず」に含まれているから不要だという人もいれば、これにまた反論して「撃ち込ませず」を四つ目に加えて、敵基地を先制攻撃する能力も保有すべきだという人もある。さらに「持ち込み禁止」を明示して、ルールのわからない外国人が外で買った飲食物を店内で飲み食いしないようにするのも大事だと強調する人もごくわずかにいる。

非核三原則はあくまでも原則にすぎず、原理とは異なるとの主張も最近なされている。原則は人間が決めたルールだが、原理は科学的なものだというのである。ゆえにどんなに重要な原則でも、原理のほうが優先されてしまうのだという。

原理の観点から見ると、日本は現在、核攻撃に関して非常に憂慮すべき状況にあるのだそうだ。というのも、現在の世界では核爆弾の使用可能性ががぜん高まっているからだ。

そうした危機的状況においては、核を撃つのがアメリカにせよ、ロシアにせよ、中国にせよ、どの国であろうと、世界中の他のどの国よりも核爆弾が落ちる可能性が高いのは日本なのだそうだ。

というのも二度も核が落ちたのは、日本だけだからだ。原理的にいえば、三度ある。歴史はいつだって仏の顔をギリギリまで試す。これも原理だ。もうギリギリだ。

散文

圧し活

推し活が日常化し、推しがいなければ人に非ざるかのような世の中だが、私には推し活がわからない。たぶん私は心に欠陥があるのだろう。

しかし、人々が推しに金を使うことに喜びを覚え、その金を得るのに許されざることにすら手を出すのを見るにつけ、推し活とは、推しに夢中の人を押し潰して、血の一滴まで絞り取る圧搾装置としか思えない。たぶん私は心に欠陥があるのだろう。

近頃では、政治までも推し活化しているという。支援者の推し活によって首相になった政治家の仕事ぶりを見ていると、まさに国民を圧搾する法律の実現に邁進しているように思える。

推し活に懐疑的な私だが、圧し活には賛成だ。圧し活とは、相手に圧力をかける活動のことだ。アイドルに圧力をかけるのはバカげて見えるが、そのアイドルが健全に末長く活動できるようにするためには、労働環境や契約条件が適正であるように諸方に圧力をかけるのは重要だ。また、暴走しがちなファンを戒めるのも圧し活のひとつだ。

そして、政治家にこそ圧し活すべきなのはいうまでもない。政治資金の不正使用、人権を損なう法律の制定、虚言癖、ゼロ時間睡眠などを、厳しい圧し活によって、是正していくのが、国民の責務だ。

これは、圧し活の推し活が必要ということでは。ついにわかった。

風刺・戯文

省エネは地球を救う

最近、なにかと話題の AI。聞けばなんでも答えてくれますし、難しいことだってかわりに考えてくれるスグレモノ。でも、この AI が地球の環境問題に大きく影響していることはご存知でしょうか。

それは、AIの電気使用量です。世界中には AI を動かすデータセンターがたくさんありますが、これらの設備が使用する電力が膨大なのです。この電力需要を満たすための環境負荷は無視できない規模になりつつあります。つまり、AI が深く考えるたびに、環境が破壊されていくのです。

これは実は人間にも当てはまります。私たち人間にとっても深く考えることは、エネルギーの消費にほかなりません。私たちもまた、考えるたびに、環境を破壊していたのです。

エネルギーの無駄づかいを防ぐために省エネが叫ばれてきましたが、環境のことを真摯に考えるならば、私たちの思考も省エネの時代を迎えたといってもいいのです。

省エネ思考、アメリカではもう大ブームだとか。日本でもさっそく取り入れたらいかが?

【ライフ・ハック:毎日繰り返して、省エネ思考を身につけよう!】
政府への信頼が、省エネの第一歩。
批判は電力のムダづかい。
反対するなら賛成で、コストの削減。
多様性よりも団結が環境を守る。

風刺・戯文

日本に非核三原則はいらない

2 月 28 日、日本の根本を揺るがす大事件が起きた。

この日、アメリカがイスラエルととも、イランに攻撃を開始したのだ。攻撃の最大の原因は、イランによる核兵器開発だ。

この事件が我が国にとって持つ意味は大きい。なぜなら、50 年以上前から我が国が堅持してきた非核三原則がもはや無意味、いやそれどころか我が国にとって非常に危険であることが露呈したからだ。

イランには確かに核兵器開発の兆候はあった。だが、今のところ、イランが核爆弾を製造しているとの証拠をアメリカは一切示してはいない。にもかかわらず、大規模な攻撃が始まったのだ。

とすると、実際に核兵器を開発していなくても、それっぽい動きがあれば、攻撃されかねないということではないだろうか。

では、それっぽい動きとはなんだろうか? もちろんウラン濃縮などもってのほかだ。研究だって危ない。だが、それだけだろうか? 世界の歴史が証明するのは、なんであれ一度はじまったことは極限までいく、ということだ。

断言しよう、トランプ大統領にかかれば、核のことをチラと考えただけでもう攻撃の十分な理由となる、ということを。

このような状況で、非核三原則などもってのほかだ。なぜなら、それは核のことが気になっているという兆候にほかならないからだ。

日本政府よ、今すぐ非核三原則を放棄すべきだ。そして、緊急国連総会を招集し、こう我が国の方針を発表すべきだ。

広島にも長崎にも何も落ちなかったよ、核ってなに? ぜんぜんわかんないや。

風刺・戯文

新しい憲法

私たちの国は、ついに新しい憲法を作り上げた。長く真摯な議論のすえに、自分たちの手で作り上げた本当の憲法が完成したのだ。これは純粋な憲法だ。いかなる条文のいかなる語句をとってみても、外国の干渉は微塵もない。

しかも、実に素晴らしい内容の憲法なのだ。まず、これは究極の平和憲法だ。いかなる武力も放棄しているし、国民に対してはいかなる暴力も禁じられている。人権まわりも完璧だ。人間の自由と理想を完全に保障する世界でもっとも美しい憲法だ。

「ついに完成した!」 私たちはこの憲法に快哉の声を上げ、街に繰り出して祝杯をあげた。

「これは我が国ばかりか、人類史の偉業だ!」 誇らしげな声が国中に響き渡った。

憲法完成を記念する盛大な式典が開催された。為政者たちは、この偉大な憲法が絶対に失われないように、不壊なる媒体に記録し、いかなる改竄も許さぬとばかりに厳重に封印した。

国民の前に立った為政者たちは、万雷の拍手とともに新憲法の公布を高らかに宣言した。その後、厳かに国歌が響き渡るなか、新憲法は頑丈な箱に収められ、国会議事堂の裏の空き地に掘られた穴に埋められた。

私たちはいつか、遠い遠い未来に、このタイムカプセルを開くことだろう。そして、その時、私たちの国がこの憲法にふさわしい国になっていれば、きっと施行されることだろう。

風刺・戯文

漂白の達人

衆院選のさなか、世界的な言語学者のスティーブン・ガルシア博士が来日し、都内を巡って精力的な言語調査を実施しました。

ガルシア博士は、意味の漂白(semantic bleaching)の研究で知られる世界的な学者です。意味の漂白とは「語がもともともっていた具体的な意味が弱まる、つまり漂白され、より抽象的・文法的な意味をもつようになること」とされます。

具体的な例としては日本語の「いる」があります。「いる」は「居る、存在する」という意味ですが、これが「雨が降っている」「電車が走っている」のように動詞の後にくると、ある動作が「進行している」という抽象的な意味を表すようになります。このとき「いる」からは「存在する」という具体的な意味は漂白されてなくなってしまっているのです。

「激しい選挙戦が行われているこの今の日本こそ、私が研究している意味の漂白の例を集めるのに最適なフィールドなのです」と、流暢な日本語を操るガルシア博士の前に、選挙カーが止まりました。早速、候補者たちの演説が始まります。

「日本を強く!」
「本気で改革!」
「全力で取り組みます」
「ぶれない姿勢!」
「未来を守れ!」

博士の顔が歓喜に輝きます。「どうです。これらの候補者たちの言葉は! どの言葉をとりあげても、意味がすっかり消え失せてます! まったく日本の政治家は意味の漂白の達人ですよ!」

調査を終えた博士は、「有権者の脳も漂白されているかも」という思いつきを検証するため、雑踏の中に吸い込まれていきました。

風刺・戯文

地球温暖化のためにできること

【あほうの党党首からのメッセージ】
高齢化が我が国にもたらすのは、社会保障費の増大です。つまり、年金・医療・介護という三重の社会保障費が政府の財政を圧迫するのです。

このままでは、高齢者の暮らしが危うくなるだけでなく、現役世代の負担もますます重くなるばかりです。

しかも、我が国の将来を左右するこの未曾有の事態に対して、与党はいうもおろか野党までもが、ただ手を拱いているだけなのです。もう、こんな政治家たちに我が国は任せられません。

私たちあほうの党は、この問題に真剣に取り組み、ついに解決する方法を見つけました。それは、地球温暖化です。みなさん、地球温暖化というと、なにやら悪いことのように思ってはいませんか? 氷山が溶けたり、砂漠が広がったり……こんなのはぜんぜん他の国のことです。我が国には関係ありません。それどころか、我が国にとっては実は地球温暖化はいいことずくめなのです。

だって、地球温暖化により、我が国が常夏の国となるのですから。こうなると、もう冬などないのです。夜、外で寝たって平気なのです。暖かいのですから! だから、高齢者にはあれやこれやのホームはもう不要です。道端でのんびりお過ごしいただければいいのです。しかも、いい陽気ですから、心も軽くなります。気分も上々です。病気なんかすぐに治ってしまうでしょう。医療費削減です。年金だっていりません。空き缶を置いておけば、道ゆく人がお金を投げ入れてくれるのですから。そう、必要なのは社会保障費なんかじゃなくて、敬老の精神だったのです! 

どうですか。地球温暖化で医療も介護も年金も不要となりました。地球温暖化のためにできること、きっとたくさんあるはずです。私たちあほうの党と一緒にがんばってみませんか。

【お知らせ】
大晦日の夜、「地球温暖化チャレンジ」を実施します。プログラムは、「本当は楽しい地球温暖化」「燃えないごみを燃してみよう!」「裸で野宿で温暖化を先取り!」など盛りだくさん。奮ってご参加ください! *防寒具は各自ご用意ください。

風刺・戯文

和ステナブル

世界でも日本人だけが、虫の音を味わいのある音として聞き取ることができるということは、古くから知られていますね。これは日本人だけが持つ特殊な脳の構造によるものなのだそうです。

日本人独特のこの脳の構造に、またまた世界でも稀な新たな現象が発生していることが、最近の研究で明らかになりました。日本人ならではの斥力です。

具体的な科学的プロセスは次のようなものです。

日本人が「外国人」と聞くと、脳内に斥力が生まれます。この斥力は脳内に位置する理性や思いやりを弾き飛ばそうとします。ですが、脳は頭蓋骨で保護されているから、実際には分離することはできません。すると、行き場を失った斥力が熱に変換され、日本人の脳内がカッカし始めのです。

脳は高温には耐えられませんから、熱を外に逃がそうとします。熱は、頭蓋骨から首を経て放出され、末梢部、つまり指先に流れ込みます。この熱によって指が自然に動き出すのです。もしこのとき、指の下にキーボードを置くと、タイピング運動と呼ばれる現象が観察されます。素晴らしいヘイトスピーチが X(元 Twitter)やヤフコメへと拡散されていくのです。

日本ならではのこの自然現象に関心をもったある科学者が、このプロセスを代替エネルギーとして使えないかと研究をはじめました。そして今日、ついに大規模な実証実験が都内で行われました。

広大なホールに、机と椅子とが並べられ、そのひとつひとつに日本人が着座しています。日本人の手元にはキーボードが置かれ、そのキーボードからはケーブルが伸びています。すべてのキーボードのケーブルは、ホールの中央の装置に集められ、その装置の上には豆電球がひとつ置いてあります。

実験が始まりました。ホールに設置されたスピーカーから、外国人犯罪のニュースを読み上げる声が朗々と聞こえてきます。日本人たちはじっと耳を傾けています。このとき生じている脳内の変化は観察することはできませんが、次第に日本人たちの顔が赤くなってきたのがわかります。カッカしているのです。

そして、ついにタイピング運動が始まりました。みな思い思いのヘイト発言を、慣れた指遣いで手元のキーボードに入力しています。

カチカチカチカチ! カチカチカチカチ!

それぞれのタイピングによって生まれた微弱な電流が、ケーブルを通じて中央の装置に流れ込みます。

「や、点いた! 豆電球が! 成功だ!」

日本人独特の斥力が、実用可能でクリーンなエネルギーへと変換された瞬間でした。

サステナブルなエネルギーの実現するサステナブルな社会、もうそこまできてますよ。

風刺・戯文

歴史の試練

僕たちが恐れていたことが、現実になろうとしていたんだ。

2025 年 12 月、アメリカのトランプ大統領はびっくりするような行動に出た。ナイジェリアのイスラム過激派に、キリスト教徒が迫害されているといって、空爆を実施したんだ。大統領は、キリスト教徒を守るためならば、軍事行動だってやるぞ、と世界に睨みを効かせてる。

このニュースを見て、僕たちは本当に心配になったんだ。トランプ大統領は、次に僕たちのこの日本を攻撃するに決まっているから。

だって、トランプったらこんなふうにいったっていうじゃないか。

「Run of Shimabara(島原の乱)!」

僕たちは、アメリカの飛行機が日本中を飛び回って、爆弾を落としまくる様子を想像して、震え上がった。おしっこも漏らした。キリスト教徒の怒りの焼夷弾で黒焦げになるのが、僕たちの運命だったとは。

だけど、そんなとき、僕たちの素晴らしい首相が立ち上がった。彼女は勇ましくアメリカに飛んで行って、トランプ大統領に恭しくひざまづいていった。

「閣下、島原の乱は、キリスト教徒とは関係ありません。極左の暴動に過ぎません」

そして、首相は大統領に、日本の歴史の教科書(検定合格)を見せたんだ。確かに、島原で暴れ回っていたのは、みんな民主党みたいな顔をしてたんだ。それで大統領はいったんだ。

「善哉善哉、それでこそ同盟国じゃ」

僕たちは、首相が彼女で本当に良かったと、胸を撫で下ろした。首相にかかっちゃ、歴史の改竄なんて朝飯前なんだ。

風刺・戯文

物語を紡ぐ

先生が私たちに物語を紡いで見せるとき、私たちはこれ以上なく元気と勇気が湧いてくる。自分たちが、まだ故郷と家族を愛せるということを知って、涙が止まらなくなる。それもそのはず、先生の物語は時間をかけて丁寧に紡がれたものなのだから。

そんなとき、ひとりのみすぼらしい男が私たちの輪の中に入り込んできた。そいつは、先生の話をしばらく聞くと、せせら笑ってこういった。

「史実もへったくれもないじゃないか。嘘ばっかりだ」

私たちは落ち着き払って言い返した。「むしろあなたのほうが嘘つきでは」

すると怪しい男は、先生の物語の間違いとやらをひとつひとつ指摘し始めた。聞くに耐えない言葉だった。

「先生の紡いだ物語にケチをつけるとは、私たちの敵だな」と私たちが迫ると、男は平然としていった。「私は、その先生とやらが紡いだひどい物語をみなさんの前でほどいているに過ぎない。そもそも、こんな物語を広めるほうが敵だ」

私たちはもはや我慢ができず、男を組み伏せ、ロープで縛り上げた。

「このロープを先生の紡いだ物語だと思え! ほどけるものならほどいてみろ!」

私たちは湖に行き、男を沈めた。