ベルベル語の勉強で私を助けてくれているSさんの出身地、ターウジュート村に行く計画を立てている。Sさんによれば、帰郷する人はなにかしらお土産を買って村に入るのが習慣だそうだ。
チュニスにはそんな習慣はないが、それでもこの村の出身者がチュニスの知人を訪ねるときに、家の近くの食料品店で買い物をしてからやってくるのだという。
「もし村に入るとき手ぶらだったら、石を拾ってでも入れ」という言葉をSさんが教えてくれた。
ターウジュート村にはSさんも同行してくれる。これは心強いことだ。当然のことながら、移動費や宿泊費はこちら持ちだ。いろいろ経費を計算しているとけっこうな額になる。その上、お土産だ。これも私が払わねばなるまい。
私は日本在住のビルマのカレンやカチンの人と一緒にタイや中国に行ったことがある。これらの人は、現地で待っている家族や同胞のために東京でたくさんのお土産を買っていく。それは単にお土産ではなく、現地での生活を助けるためでもあるが、かなりの額がかかる。手ぶらで行くわけにはいかないので、旅費に加えてそのためのお金も貯めなければならない。
そうした経験があるから、ターウジュート村に持っていくお土産がどれくらいの金額になるのか私は気になり出した。
「それで、お土産はいくらぐらい必要ですか?」
「大したものじゃないよ。ジュースとか果物とか、二〇ディナール(千円ちょっと)あれば足りるよ」
私はそれを聞いて安心し、石を掻き集めずに済んだことを感謝した。