解説のポイントは残すところあと二つ。今回が山場だ。チュニジアでは標準アラビア語と方言が話されていると以前書いたが、そのほかにも使われている言語がある。代表的なものはフランス語で、標準アラビア語よりも役に立つ場合がある。
だが、この解説で取り上げるのは、チュニジアの限られた場所で使用されている少数言語、ベルベル語だ。アラビア語の遠い遠い親戚だが、まったく別の言語だ。前回出てきた「雌牛」はベルベル語では次のようにいう。
θaːfuːnaːsθ「雌牛」
これは、南チュニジアのターウジュートで使われている形で、ターウジュートはこの笑い話の舞台だ。θ は英語の third の th の音だ。雄牛の形と比べればわかるように、女性形は θ —— θ で挟み込んで作る。
aːfuːnaːs「雄牛」
θ-aːfuːnaːs-θ「雌牛」
このルールが飲み込めた人は、次は s-θ の発音にチャレンジしてほしい。私はできない。
それはともかく、この女性形の作り方が、笑い話の理解に必要だ。だが、ここまでくれば、私が紹介しようとしている笑い話がどんなものか見当のついた人もいるかもしれない。おそらくそれは正しい。なので、それだけじゃないぞ、ということを示すために、私は最後の解説でこの笑い話のかわいさも伝えたいと思う。