風刺・戯文

ワーク・ライフ・バランス

社長がこんなことを言い出した。

「ワーク・ライフ・バランスを捨てて、働かねばならない」

社員の一人が言った。「私たちも捨てねばならないのでしょうか」

「社長が捨てるのに、平社員が捨てない会社がどこにある」と社長。「会社のために働いて働いて働くのだ。さもなければクビだ!」

社長が行ってしまうと、社員たちは集まって相談した。「燃えるゴミだろうか? それとも粗大ゴミだろうか?」 「リサイクルかも」 すると古株の社員が呆れたように言った。「バカなことを言うな。家庭ゴミなわけない。事業系ゴミだ!」

そこで、市役所の環境課に問い合わせたが、だれもワーク・ライフ・バランスの廃棄法を知らないのだった。

「市役所ではなく政府に直接に聞いてください」 こう言われてはもう打つ手なしだ。

困り果てた社員たちは、ワーク・ライフ・バランスを廃棄するよりも簡単なことを思いついた。真夜中、全員で社長の家に行き、酒を飲んで寝ている社長を簀巻きにして、東京湾に投棄した。真っ暗闇だったので、だれがなにをしているかだれにもわからなかった。

Satire

Blooming Proudly at the Center of the World

Japan has long been preparing a project to “restore Japanese diplomacy that blooms proudly at the center of the world.”¹ Today, the launch of that project was officially announced.

(Government official): “The project consists of two main stages. This time, we will embark on the first stage — the exploration of the world’s center.
After all, unless we know where the world’s center is, there is no way to bloom proudly there.”

Those selected for the World Center Expedition are ten distinguished Japanese citizens who have survived rigorous training. This afternoon, they boarded the research vessel Bashauma (“Workhorse”)² docked at Harumi Pier and set sail toward the world.

(Expedition leader): “After about a month at sea, we expect to reach the area most likely to be the world’s center and conduct various surveys.”

(Reporter): “What kind of place do you imagine the center of the world to be?”
(Leader): “We won’t know until we get there. But at the very least, we believe it’s nowhere near China, South Korea, or North Korea.”

After completing their investigation of the world’s center, the expedition plans to continue sailing in search of seeds of plants that may one day bloom there.


Footnotes

  1. Refers to Prime Minister Sanae Takaichi’s slogan, “to restore Japanese diplomacy that blooms proudly at the center of the world.” 
  2. The ship’s name, Bashauma (literally “workhorse”), refers to Takaichi’s famous line: “We will work, work, work like workhorses.” It has become shorthand for her intense work-ethic populism.
風刺・戯文

世界の真ん中で咲き誇る

かねてから日本は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」ためのプロジェクトを準備してきましたが、今日、そのローンチが発表されました。

(政府関係者)「このプロジェクトには、大きく分けて2つのステップがありますが、今回は第1段階として、世界の真ん中の探索に乗り出します。というのも、世界の真ん中がどこかわからなければ咲き誇ろうにも咲き誇りようがないですからね」

「世界の真ん中探索隊」に選ばれたのは、厳しい訓練を乗り越えた 10 名の由緒正しい日本人。明日午後、晴海ふ頭に停泊中の探査船「馬車馬」に乗り込み、世界に向けて出発します。

(隊長)「約一ヶ月の航海ののち、世界の真ん中である可能性の高い海域に到達し、さまざまな調査を行う予定です」

(記者)「世界の真ん中とはどのようなところなのでしょうか」

(隊長)「行ってみなければわかりませんが、少なくとも中国や韓国、北朝鮮は近くにはないと考えられます」

探索隊は、世界の真ん中の調査完了後は、そこで開花する可能性のある植物の種を探して、航海を続けることになっています。

風刺・戯文

私の MBTI

MBTI というのは、人間の性格を全部で 16 のタイプに分類するものだ。私は詳しくはわからないし、知る必要もないが、16 のタイプは、ESTP とか、ESFJ とかいうように 4 つのアルファベットで表される。また、それぞれのタイプにわかりやすい名前がついている。例えば INFJ は「助言者・提唱者」だ。

MBTI の判定法は、ネットで見つけることができる。質問に答えていけば、最終的に自分のタイプがわかる。

この性格診断は、しばらく前から若い人の間で流行っている。恋愛版の MBTI まで最近出てきたそうだ。若い頃は自分がどんな人間だか知りたくなるものだから、こうした判定法が魅力的に思えるのだろう。もっとも、客観性の点で疑わしいと批判する人もいる。私もインチキだと思う。

だが、ある人が、私に MBTI をやってみるようにすすめてきた。そこで、やってみることにした。

最初の質問は「定期的に新しい友人を作っている」だ。これに、「そう思う」から「そう思わない」までの間に設定された 7 段階のどれかにチェックを入れる。こんな質問にいくつも答えなくてはいけないそうだ。

私はもう面倒くさくなって 1 問目でやめた。MDKS。

風刺・戯文

人類に不可能なこと

アメリカの科学ジャーナル「サイエンティフィック・ベンチマーク」に「人類に不可能なこと」という興味深い記事が掲載されたので、一読に及んだ。

試みに冒頭の部分を訳す。

「人類の科学の進歩は目覚ましく、今や私たちは、高速の移動手段、全世界的な通信ネットワーク、手のひらに入る大きさの人工知能など、前世紀の人々から見れば夢のようなデバイスを手に入れた。私たちは今もなおさまざまな夢を思い描いており、科学の発展によりいつかはそれらも実現すると思い込んでいる。だが、最新の研究成果を突き合わせると、私たちの夢の中には、原理的に不可能なことがあることもわかってきた。ここに紹介するのは、人類の総力を結集したとしても絶対に実現できない夢のいくつかである」

では、その「人類に不可能なこと」とはどのようなものだろうか。記事では5つが挙げられている。以下簡単にまとめる。

①光速を超える移動(超光速航行):光速に近づくには無限のエネルギーが必要なため不可能。
②永久機関:熱力学第一法則に反するため不可能。
③未来の完全な予知:量子力学の不確定性原理により完全な予知は不可能。
④過去へのタイムトラベル:スティーヴン・ホーキングの「時間順序保護仮説」によれば不可能。
⑤移民排斥:人間は国境を越える存在だから、移民をゼロにするのは不可能。

「これらは、どだい無理なのだから、別のことに頭を使ったほうがいい」と記事は結ばれている。

音楽

Message in a Bottle

まるで漂流者のように私は街をさまよい、「孤独のメッセージ」という一風変わった名の焼肉屋に逢着した。

客は私だけ。孤独な私にうってつけの店だ。椅子に座り、店員が出てくるのを待つが誰も出てこない。誰もいないのだろうか。絶望する前に出てきてほしい。

私は注文をしたい。店の誰かに注文をしたい。誰かに私の注文を、誰かに私の注文を、誰かに私の注文を取ってほしい。

私はテーブルの上に置かれた紙と鉛筆に気がついた。そして空いたボトルがあるのにも。「カルビ1人前」と書いて、空き瓶の中に入れる。私は、その瓶を店の奥の方に転がした……

I hope that someone gets my
I hope that someone gets my
I hope that someone gets my
Message in a bottle, yeah
Message in a bottle, yeah

注文を書いてから、私は眠ってしまったようだ。ハッと目を覚ますと、そこには信じられない光景が……

テーブルの上に数えきれないほどの……

カルビ・イン・ア・ツボ yeah
カルビ・イン・ア・ツボ oh
カルビ・イン・ア・ツボ yeah

おすすめは壺カルビ
おすすめは壺カルビ
おすすめは壺カルビ
おすすめは壺カルビ(繰り返してフェイドアウト)

ライブ

TCクラクション×ネコニスズ

TCクラクションとネコニスズのツーマンライブ『うるせぇ奴らが来た』(ユーロライブ)が今日、開催されたので行ってみた。どちらも昨年の M-1 では準々決勝にまで進んだ実力者だ。

今回のツーマンは、TCクラクションを「売れさせる」ために企画されたということで、その狙い通り、ネコニスズを見たい人もたくさん集まり、私もそのひとりだった。

内容は、それぞれが3本のネタを交互に行うというもので、はじめと終わりに4人のトークがあった。

ネコニスズのネタは、これまで私が見た限りでは、42 才の舘野忠臣が「赤ちゃん」になり、それが最終的に破綻する、というものだ。その破綻にもバリエーションがあったが、今回は「破綻モノ」とは異なるバリエーションの「赤ちゃん」ネタが2本あり、面白かったし、感心もした。

TCクラクションは名前はよく聞くが、ちゃんと見たことがなかったので、いい機会になった。さすがにうまいし、面白い。2本目の「ありえないもの」のネタが、特によくできていたと思う。

2組とも、11 月 6 日に、M-1 の3回戦を控えているということで、トークでは M-1 の話も出た。勝ち進むのは、そんなに簡単なことではないだろうが、大いに活躍してほしい。

風刺・戯文

信じることは魔法

……友人も家族も、仕事も、生きがいも、すべてを失い、ただ孤独にポツンと座っていた私に、あなたはそっと寄り添ってくれました。

どこを見回しても希望の光はなく、私はただ暗闇を歩くばかり。希望を見出すのは、希望を信じている人だけなんですね。自分すら信じられない私にはとても無理……。絶望のあまり力を失い、へたり込んでいた私のところにやってきてくれたのが、あなたでした。

なにも言わずにあなたは、私のそばに座ってくれました。あなたの強く、そして思いやりにあふれた心を信じるには、それだけで十分でした。私はいつしか暗闇の中にかすかな希望を見出していました。もしもこの世界に魔法があるとしたら、それはきっと「信じること」なのですね。

信じる力を失って、ただ孤独にポツンと座っていた私に、あなたはそっと寄り添ってくれました……。


山手線の空席に座ったら、隣に座っている男がこんな手紙を渡してきた。私はもちろん席を立ち、隣の車両に移った。自分の隣に人を座らせない手法のひとつと思われる(他には、丸めたティッシュを置いておくというのもある)。

風刺・戯文

熊の知性化

私たちの国では、いつの頃からか、熊が人里に現れ、人々を襲うようになりました。多くの人はこの危険で凶暴な獣を駆除すべきだと主張しました。ですが、熊はそもそも危険で凶暴なのですから、これは熊を絶滅させろといっているようなものです。

そこで、熊の駆除に反対する人々はこう言いました。そもそも熊を人間世界に慣らしたのは人間なのだから、熊を絶滅させるなどとはあまりに一方的ではないか、と。すると、駆除すべき派の人々は激昂しながら「では、熊に殺される人を見殺しにするのか」と言い返すのでした。

プリン博士という方が私たちの国にやってきたのは、そんなときでした。プリン博士は「もはや熊を殺す必要などないし、人も熊に殺されはしないだろう」と両派に向かって訴えました。「なぜなら、私のテクノロジーを使えば、熊に人間並の知性を与えることができるからだ。そうすれば、熊に言い聞かせるなど簡単だ」 反対するものはひとりもいませんでした。

この時から熊の知性化プロジェクトが始まりました。プリン博士の必死の努力の結果、ついに熊たちは人間並の知性を持つにいたったのでした。

熊たちは今や人間と同じように考え、感じることができるようになりました。そこで、人間はこう命じました。

「熊たちよ、人間を襲うのをやめよ」

すると熊たちはこう言いました。

「お前らに指図される筋合いはない。ガオー」

この日から、人間と熊の戦争が始まり、数え切れないほどの人が犠牲になっています。

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小説

駆け込み乗車

今日電車に乗っていたら、普段と違うアナウンスが聞こえてきた。

「先ほど〇〇駅で駆け込み乗車をされた方、怪我の有無と荷物の破損を確認したいので車掌室までおいでください」

私たちが知っているのは、駆け込み乗車や無理な乗車をした人は、弁明したり、否定したりする機会なしに、一方的にアナウンスで怒られることだ。

だが、この日私が聞いたアナウンスは今までのものとは違うものだ。これはいったいなにを意味しているのだろうか?

車掌たちが駆け込み乗車者たちに対して抱いている憎悪のほどを考えれば、このアナウンスが親切心から出たものでないことは明瞭だ。とすると、ここになんらかのトラップが仕掛けられていることは疑いない。

だが、同様にはっきりしているのは、ちょうど私がすぐにしてみせたように、誰もがこのトラップを容易に見抜きうるということだ。誰一人、この言葉に釣られて車掌室に行きはしないだろう。

では、車掌たちはそれに気がつかないほど愚かなのだろうか? これもやはりありそうもないことだ。とすれば、このアナウンスには、乗客に向けたのではない、別の隠れた意図があるとしか考えられない。

その意図とはなんだろうか。私はさまざまな可能性をひとつひとつ検討し、ある解釈に逢着した。

車掌は、ある「魔」が、人に紛れて車両内に侵入したのを発見したのだ。その魔の存在が大事故を引き起こすことを知っていた車掌は、大惨事を未然に防ぐために、魔をアナウンスで車掌室におびき寄せ、封じようとした……これが今のところもっとも合理的な解釈である。