風刺・戯文

金は今が買い時

初めてみませんか、金投資。

長期的な資産形成を目的とするならば、現在は金が買い時なのです。金の価格は、2026 年 3 月時点で史上最高値圏に到達しました。しかも、専門機関は、今後 10 〜 20 年スパンでさらなる上昇を見込んでいます。

つまり、今、金に投資すれば、長期的に大きなリターンが期待できるのです。もう金に投資しないわけにはいきませんね。

「でも、金投資にもリスク、あるんじゃない?」って踏み切れない方もおられるのでは。ですが、金価格の上昇要因を理解すれば、そんな不安も払拭できます。

【金価格上昇を支える主要因】
・SNS の普及により、誰もが常時やかましく発言する駄弁のグローバル化が進行。
・嘘を巧みに言いくるめる政治家を崇める風潮が主流に。
・あらゆるものを言語化する言語化ブームは今後ますます拡大。
・声の大きい者が振るう暴力が加速。

そうなのです。沈黙こそこれからの希少資産です。それでも迷っているあなた、つべこべいわずに黙って金に投資!

小説

オッパ・チャレンジ(2)

「それならば、なおさら不可能なのでは? オッパなんて無謀なことを諦めて、一緒に上野にサムギョプサルでも食べに行こうよ」と誘うと、彼は不敵に笑って断った。

「いいや、徹底したリサーチが叩き出した秘策があるのだ」 

「そ、それは?」

「フフフ、将を射んと欲すればまず馬を射よ、とだけ言っておこう……」

それから 2 年あまりがすぎた。さすがに私も、あの無謀な計画のことは忘れかけていた。そんなある日、友人から成功したという知らせが届いた。私は羽田空港に彼を迎えに駆けつけた。姿を現した彼は、日本を発ったときに比べて、いくぶん精悍な顔つきになったように見えた。故国に降り立った彼に、挨拶もそこそこに、私はあの謎めいた発言について尋ねずにはいられなかった。

「私はとにかく韓国の男性と親しい友達になったのだ。そして、互いに家を訪問し合う間柄になった。親しくなった友人のひとりに妹がいた。付き合いを重ねるうちに、その友人の妹がごく自然に私をオッパと呼んでくれたのだ。兄の親しい友人としてね」

この「オッパ・チャレンジ」の成功の波に乗り、次は「ヌナ」と呼ばれたい、と友人は今、厳しいトレーニングに打ち込んでいる。

小説

オッパ・チャレンジ(1)

韓国語の「オッパ」というのは、「お兄さん」という意味だが、日本語と違って、女性が実兄や年上の男性を呼ぶときだけに使われる。男性には別の単語で「ヒョン(お兄さん)」がある。ちなみに女性が年上の女性を呼ぶときは「オンニ」、男性が年上の女性を呼ぶときは「ヌナ」という。

「オッパ」は、もっとも有名な韓国語のひとつだ。韓国ドラマでは、年上の恋人への呼びかけに頻出するからだ。ただの親族呼称にすぎないが、ドラマでしか「オッパ」に触れないでいると、そこに必要以上にロマンチックな響きを感じてしまう。

韓ドラ愛好家の私の友人も、この「オッパ」にすっかり心奪われてしまった。50 代半ばの彼は、「自分も韓国の女性にオッパと呼ばれたい」との野望に取り憑かれ、猛勉強の末に韓国語を身につけ、ひとり渡韓したのだった。

「妻子ある身にもかかわらずなんて無茶を」と呆れた私は、出発前にその意図をただした。すると「オッパと呼ばれるためだけに、恋人関係を利用するなどという卑劣な真似はしないから、安心したまえ」と彼は真剣な顔で告げた。

風刺・戯文

数学の問題

問題
あるスーパーで、収益の拡大と顧客への利益の還元、地域活性化を目的に、大規模なセールとイベントを 3 日間にわたり実施した。セールでは、商品総数の 70 %が 3 割引、20 %が半額、残りが定価販売された。また、地元の生産者の協力のもと、地域の野菜や食品の即売も行われた。イベントでは、家族向けのくじ引き大会やサル回しなどが行われ、期間中は大盛況であった。

(1)商品総数が x、地元の生産者の協力者が y 人、そしてセール期間中の来店者数が z 人の場合において、売り手(スーパー)、買い手(客)、世間(地元生産者)がそれぞれ利益を得たとき、次の n に入る数を求めよ。

  「n 方よし」

(2)スーパーの経営者が「n 方よし」に入る自然数 n を以下のように設定した場合、x がいくら以上の場合、経営が破綻し、経営者がその地位を追われるか。

   n = x³ (ただし、n>3)

(3)「n 方よし」において、n が虚数の場合に利益を得る異次元の存在を召喚せよ。

風刺・戯文

省エネは地球を救う

最近、なにかと話題の AI。聞けばなんでも答えてくれますし、難しいことだってかわりに考えてくれるスグレモノ。でも、この AI が地球の環境問題に大きく影響していることはご存知でしょうか。

それは、AIの電気使用量です。世界中には AI を動かすデータセンターがたくさんありますが、これらの設備が使用する電力が膨大なのです。この電力需要を満たすための環境負荷は無視できない規模になりつつあります。つまり、AI が深く考えるたびに、環境が破壊されていくのです。

これは実は人間にも当てはまります。私たち人間にとっても深く考えることは、エネルギーの消費にほかなりません。私たちもまた、考えるたびに、環境を破壊していたのです。

エネルギーの無駄づかいを防ぐために省エネが叫ばれてきましたが、環境のことを真摯に考えるならば、私たちの思考も省エネの時代を迎えたといってもいいのです。

省エネ思考、アメリカではもう大ブームだとか。日本でもさっそく取り入れたらいかが?

【ライフ・ハック:毎日繰り返して、省エネ思考を身につけよう!】
政府への信頼が、省エネの第一歩。
批判は電力のムダづかい。
反対するなら賛成で、コストの削減。
多様性よりも団結が環境を守る。

風刺・戯文

平家蟹

その蟹は、平家蟹と呼ばれることに怒っている。その怒りがあまりにも強いので、甲羅に浮かび上がる顔のような模様も、憤怒の度合いが増したようにみえた。

「どうして平家蟹という名称がおイヤなのですか。由緒ある名前なのに」と私が尋ねると、蟹は答える。

「だって、私たちの模様は、その平家とやらとはなんの関係もないからですよ。平家が? 壇ノ浦で? 入水? ハハハ、バカを言っちゃ困りますよ。私たちは、平家が滅びる前から、ずっとこの顔を背負って生きてきたのですよ。なんなら、祇園精舎の鐘ができる前からですよ」

「ならお聞きしますが」と私はちょっと意地悪な質問。「平家と関係がないなら、どうしてそんな悲憤に満ちたお顔をしてらっしゃるのでしょうか」

蟹は憤然とハサミを振り回す。「ああ、人間ときたらこれだ。なんでも自分中心でないと気が済まないのだから。視野が狭いのです。これはただの模様ですよ! もう、ほうっておいてください!」

と言い捨てると、平家蟹はどんどん海の奥へと潜っていってしまった。

「日本を笑顔にするプロジェクト」の一環として、平家蟹を笑顔にするイベントを考えていたが、難しいかもしれない。源氏の末裔のサプライズ登場と涙の和解まで決まっていたのだが……

風刺・戯文

死後の世界の出会い

臨死体験をすると、人生が変わるそうだ。「死が終わりではない」という確信が、生き方や価値観を変えてしまうのだ。

私の知り合いにも、この臨死体験をした人がいる。彼は事故で亡くなったのだった。気がつくと、光に溢れた広い世界にいた。暖かく、清々しい。ぶらぶらと歩いていると、一人の男が図面を片手に立っているのが目に入った。

「何をされているのですか」と友人は丁寧な口調で尋ねた。

男は微笑んだ。「ああ、今、死後の世界を構築中なのです」

「え」と友人。「ここが死後の世界だと思っていましたが」

「そうには違いないのですが、それだけでは不十分なのです。私はちゃんとした死後の世界を作りたいのです」と男は図面を広げ、友人に見せた。その図面はいくつかのエリアに分かれ、それぞれに「天国」「地獄」「煉獄」「鬼の宿舎」「大エントランス」「大浴場」などと記されていた。友人は驚きの声をあげた。

「すごいでしょう」と男は得意げに言った。「でもですね。構想が大きすぎて、どこから手をつけていいかわからないのですよ。しかも、ガワだけではなく、システムも難航していて。大量にやってくる魂をどのように流し、どこでどう捌き、どう再生するか、これは挑戦ですよ」

「ということは、もしかしたら、天国だとか、生まれ変わりだとか、はまだない、ということですか」と友人は落胆しながら尋ねた。

「ええ、それは認めざるをえません。なにしろ非常に複雑で大規模なもので……天国が実装されるまでには、まだかなりの年月が必要でしょう」

「では、それまでのあいだ、魂はどうしていればいいのでしょうか」

男は図面をたたみながら、こともなげに言った。「これまでのように地上に留まっていれば、問題ないかと……」

私の友人は、死後の世界から生き返った。だから、死後の世界があるとは信じていない。

風刺・戯文

けとさ

日本語は特殊な言語です。なぜかというと、日本人が世にも稀な民族だからです。日本人には和の魂があります。和の魂を持っているのは、日本人だけです。また、礼儀正しさというものを知っています。なので、日本語は和の魂と礼儀正しさがなくては、使いこなせないのです。

例えばひらがなの「い」。私たちは何気なく書いていますが、この「い」は日本人にしか書けないと言ったら驚かれるでしょうか。「い」は「生きる」の「い」、「命」の「い」です。この「い」がなければ、日本人は滅んでしまいます。だからこそ、私たちはこの「い」を書くときに、無意識のうちに、和の魂を込めるのです。

ためしに外国人にこの「い」を書かせてみましょう。彼らにはもちろん和の魂はありません。だから、「い」は書けません。書けたとしても、和の魂を込めることができないので、「い」には見えないのです。「リ」か「( )」のようになってしまいます。つまり、私たち日本人だけが、「い」を作る左右の曲線の間に、丸い魂を入れることで、ちょどよい空間を作れるのです。美しい「い」にすることができるのです。

ちなみに、外国人は礼儀も知りません。私たち日本人は、背筋をピンと伸ばして、凛として生きていますが、外国人はいつもだらしない格好で立ったり座ったりしています。だから、外国人が書く「け」は、日本人のように礼儀正しくまっすぐ立っていられません。

ほら、見てください。左に傾いて「さ」になってしまうのです。

風刺・戯文

日本に非核三原則はいらない

2 月 28 日、日本の根本を揺るがす大事件が起きた。

この日、アメリカがイスラエルととも、イランに攻撃を開始したのだ。攻撃の最大の原因は、イランによる核兵器開発だ。

この事件が我が国にとって持つ意味は大きい。なぜなら、50 年以上前から我が国が堅持してきた非核三原則がもはや無意味、いやそれどころか我が国にとって非常に危険であることが露呈したからだ。

イランには確かに核兵器開発の兆候はあった。だが、今のところ、イランが核爆弾を製造しているとの証拠をアメリカは一切示してはいない。にもかかわらず、大規模な攻撃が始まったのだ。

とすると、実際に核兵器を開発していなくても、それっぽい動きがあれば、攻撃されかねないということではないだろうか。

では、それっぽい動きとはなんだろうか? もちろんウラン濃縮などもってのほかだ。研究だって危ない。だが、それだけだろうか? 世界の歴史が証明するのは、なんであれ一度はじまったことは極限までいく、ということだ。

断言しよう、トランプ大統領にかかれば、核のことをチラと考えただけでもう攻撃の十分な理由となる、ということを。

このような状況で、非核三原則などもってのほかだ。なぜなら、それは核のことが気になっているという兆候にほかならないからだ。

日本政府よ、今すぐ非核三原則を放棄すべきだ。そして、緊急国連総会を招集し、こう我が国の方針を発表すべきだ。

広島にも長崎にも何も落ちなかったよ、核ってなに? ぜんぜんわかんないや。

風刺・戯文

当たる

数年前からか、2月末日は日本の研究者にとって重要な日になった。なぜなら、科研費の審査結果が発表される日だからだ。

科研費というのは、「日本中の愛国者が憎んでいる」でお馴染みの研究資金のことだ。これがもらえるかどうかで、研究計画が大きく変わってくるという。ジャンルにもよるが、応募者のうち3割弱しか選ばれないから、厳しい。

私は研究者ではないが、たまたまこの科研費にかかわる機会があったので、2 月 27 日のことは気になっていた。この日に発表されるとはいえ、何時だかはわからない。なので、元 Twitter(現 X)をチェックしたりしていた。

すると研究者たちが「科研費に当たった」という表現は適切か・不適切という議論をしているのが目に入ってきた。ある人に言わせれば、科研費というものは厳正なる審査の結果によるものであるから「当たる」だの「外れる」だの、クジみたいにいうのは不謹慎だというのだ。

いっぽう、科研費の審査は、どの審査員が担当するかとか、他のどの応募書類と一緒に審査されるかとかはわからないのだから、応募者にとっては運としかいえない要素もある、そうなると「当たる」もまったく的外れではない。

普通は「採択される」とかいうのがいいらしいが、これでは硬すぎるということだろう。ほかにいい言葉はないか、私も考えてみたが「略奪する」とか「もぎ取る」とか「ほじり取る」しか出てこなかった。

しかし、なんでもそうだが、科研費は応募しなければもらえない。犬も歩かなければ、当たりようもなかろう。