旅・観察

ベルベル語の調査とその後(7)

S さんにとって、ベルベル語は母語だ。しかし、今の S さんがベルベル語を使うのは、同居する親と話すときだけで、それ以外はアラビア語だ。3 人のお子さんもいるが、ベルベル語は話せない。彼曰く、「自分はベルベル語を話す最後の世代だろう」と。

もちろん、これは正確ではない。彼の出身地であるターウジュート村には、今も若い話者がいるはずだ。だが、村を出た移住者の実感としては正しいと思う。

日常的にベルベル語を使用していないため、母語とはいえ、言葉を思い出せなかったり、動詞の活用が不確かな場合もあった。そんなとき、S さんは必ず親に電話をして確認してくれた。こうした姿勢のおかげで、私の資料はより正確になったが、それでも他のベルベル語話者によるクロスチェックも必要だと思うようになった。

また、言語調査では、単語や例文だけでなく、実際の会話や生活の中でデータを集めることも重要だ。そのためには、ベルベル語が日常的に使用されている現場に行かなくてはならない。そんなわけで、私はターウジュート村への訪問を計画した。S さんも同行を申し出てくれて、そのための準備をしてくれていたが、結局、2025 年夏の調査では実現しなかった。

次回の調査は、現地開催が目標だ。

(写真:カフェの飾り)