閉め出されたというのは、2025 年 3 月 1 日、チュニジアでラマダーンが始まったからだ。日中は断食するから、ほとんどの店は閉めてしまう。それで、カフェにいることもできなくなった。
そこで、S さんが連れていってくれたのは、やはりメディーナの中にある「シャーシーヤ作りの市場」という屋根つきの商店街だった。古い建物で起源は 17 世紀に遡るという。シャーシーヤというのは縁なしの赤い帽子で、その店が集まっている。
そこに、通路を利用したカフェがあった。ラマダーン中なので店はやっていないが、一部のテーブルや椅子は出しっぱなしだ。ここを利用しようというのだ。
ラマダーン中の市場は薄暗く、がらんとして、仕事をしている人もいない。ときどき、大声を響かせながら通る人もいるが、それ以外は、猫が数匹すみっこでじっとしているだけだ。
これは絶好の場所と、さっそく私は S さんを前に、調査を始めたのだが、次第にある問題が私を悩ませ始めた。
寒いのだ。
チュニスの 3 月は、日差しが強いので暖かいように感じるが、気温は日本と変わらない。古い建物の冷たい石の床の上ではもっと冷える。私は震え出した。寒さに体を縮こまらせながら、なんとかその日の調査を済ませる。ホテルに戻ったときには風邪気味だった。
この寒さはつらいものだったが、やがて私を切ない状況にも追い込みはじめた。
(写真:シャーシーヤ作りの市場)