風刺・戯文

奴隷を守ろう

奴隷国家の政治家たちはみんな奴隷の所有者で、生活はなんでも奴隷頼みなんだ。だけど、最近どうも奴隷たちの元気がないよ。働いてくれないし、ぶうぶう文句ばっかり言っててさ。子どもだって産まなくなっちゃった。

「我が国の奴隷力は低下するいっぽうだ!」と政治家たちは大慌て。「こんなに奴隷たちにとって美しい国はないのにどうしてこんなことになったのだろうか?」

「きっと奴隷たちに反乱をそそのかす輩がいるのだ!」と与党の政治家が怒れば、野党の政治家はこうやり返したよ。「政府の背後に、奴隷を減らして我々を困らせようとする奴らがいるのだ!」

ちょうど選挙の季節になったんだ。選挙の争点はもちろん奴隷政策。みんな口々に叫んで回る。

「奴隷を元気に!」
「奴隷が子どもを産みやすい社会をつくります!」
「奴隷に手厚く2万円を支給します!」
「我が党は、奴隷の消費税を廃止します!」
「壊れゆく奴隷制度を守るため、奴隷ファーストの政治家を国会に送り込みましょう!」

奴隷たちには選挙権なんてなかったけれど、政治家たちの言葉を聞いてとてもうれしかったんだ。この国はなんて素晴らしいんだろう。どの政治家も自分たちのことを考えてくれる。自由なんていらないね。

風刺・戯文

七面倒くさい日本語

石破首相が「七面倒くさい日本語、習慣」などと言ったそうだ。なんという反日、なんという極左だろうか。

本当に日本語と日本の習慣は「七面倒くさい」のだろうか? いつもはしゃしゃり出てくるファクトチェックの連中も、こういうときにかぎってダンマリを決めこんでいる。

私たちは、日本を侮辱する極左政権を打ち倒すべく、敢然と反論に立ち上がった。論理的に考えれば反論などいたって簡単だ。

面倒くささが6以下であり、7でないときかつそのときにかぎり、「七面倒くさい」は偽である。これを論理式で表せば、6ノットイコール7。イコール石破は嘘つきだ!

そのためには、日本語および日本の習慣の面倒くささが実際にはいくつあるのかを数えねばならない。私たちがこの企てにまさに取りかかろうとしたとき、ある者がこう言い出すではないか!

「『しち面倒くさい』の『しち』は数字の『7』ではなく、形容詞などに付いて、わずらわしくていやだという気持ちを加える『しち』という接頭辞だそうです!」

私たちは驚いた。「せっ接頭辞? いったいだれがそんなことを言ったのだ!」

「いえ、辞書をひいたらそう書いてありました。『しち面倒くさい』のほかに『しち難しい』『しちくどい』がありました!」

「ええい、辞書なんて左翼の見るものだ!」

私たちはこう怒鳴りつけて片付けようとしたが、ことは容易におさまらない。「『色の白いは七難隠す』の『七難』と同じで数字だ!」「いや、『あた面倒』の『あた』と同じ接頭辞だ!」と揉めに揉めて、結局「こんなしち面倒くさいことやってられるか!」と私たちは解散した。

風刺・戯文

開示請求

かつてインターネットで私のことを中傷する人がいた。私はそうとうイヤな思いをしていたが、どうすることもできなかった。しかし、たまたまネットに詳しい人に知り合い、このことを相談すると、開示請求すればよい、と助言してくれた。

面倒くさいし、お金もかかりそう、と言うと、その人は、実際にしなくても、例えば「中傷を削除しないと開示請求する」という態度を相手に示すだけで、事態が収まることもある、と教えてくれた。そこで、私は「開示請求するぞ」ということが相手に伝わるようにしたところ、たちまち中傷は止んだのであった。

これは開示請求手続きが以前よりもずっと簡単になったためで、もし複雑な手続きが必要だったら、私の「脅し」も効果がなかったかもしれない。なんにせよ、人々が開示請求を深刻に捉えるようになったのはけっこうなことだ。

先日も、居酒屋でひとり飲んでいたら、隣で騒いでいた酔客に絡まれた。非常に不愉快だったので「開示請求するぞ」と言ったら、たちまち静かになった。また、最近困っているのは、職場の同僚が私になにかと意地悪してくることだ。いずれ開示請求をチラつかせて、とっちめてやるつもりだ。

風刺・戯文

満員バウンド

《「思わず大笑いしてしまいました」 アメリカ人が日本の満員電車で驚いた意外すぎる姿とは》

日本の満員列車は、一度は体験してみたいアドベンチャーとして、世界中で注目されています。初めて日本を訪れたというアメリカ人の2人組、ジョンさんとナンシーさんは、さっそくラッシュアワー時の満員列車に挑戦しました。

「本当にもみくちゃにされましたよ! 想像していたよりもエキサイティングな経験にもう夢中です」と語るジョンさん。「リッチで車社会のアメリカでは満員列車など経験するチャンスなどありませんから。それに、これだけストレスフルなのに銃を乱射する人がいないのもちょっと不思議ですね」

「はじめはすごく怖かったの」と正反対の感想を語るのはナンシーさん。「というのも、はじめて満員電車に乗ったとき、どの日本人もフェンタニル中毒者に見えたんです。みんなゾンビみたいに思い思いのかっこうで固まっていたから。でもそれはキュウキュウで身動きできないだけだとわかって、思わず大笑いしてしまいました!」

東京だけでなく、大阪の満員電車にもチャレンジしたいというお2人。帰国までに、ミンチになっていなければいいですね。

風刺・戯文

四季を探しに

世界で唯一四季のある国、ニッポン。今、その四季が危ないのをご存知でしょうか。

(大学教授)「地球温暖化により、今後日本は夏だけになっていくと考えられます」

そんななか、先月、猛暑が続く東京でこんな集会が開かれました。

「吉田くん! ばんざーい!」「がんばれ!」「頼んだぞ!」

熱烈な歓声を浴びるのは、一人の男性。「日本の四季を取り戻す会」のメンバーたちがこの吉田さんの壮行会を開催中です。

会長「ええ、私たちとしても吉田さんのような方を送り出せるのはたいへんうれしい」

(記者:目的はなんでしょうか)会長「私たちが行なっているのは、四季がなくなろうとしているこの日本で、秋冬春を見つけ出し、保護する活動です。吉田さんはこれから日本全国を旅し、各地に残された秋冬春の保護にあたります」

会長が吉田さんに200万円を手渡します。「旅費と四季保護活動費としてまずお渡しします」 吉田さん、感謝とともに受け取ります。「四季の消滅を食い止めるという大任に身の引き締まる思いです。皆さんが集めてくださったこのお金、絶対に無駄にはいたしません」

「吉田さんの保護活動が順調にいけば、早ければこの夏にも都内に秋風が吹くかもしれません」と期待を語る会長さん、しかし、その数週間後……なんと、吉田さんからの連絡が途絶えました。

会長「信じていたのに裏切られた思いです」

会によれば、沖縄のビーチで日光浴していたという目撃情報を最後に、吉田さんの足取りは杳として知れないとのことです。

風刺・戯文

人類の町中華

土曜日のお昼、近くの町中華に行って、チャーハンと餃子を持ち帰りで頼んだ。満席のため入り口に客が並ぶほどの繁盛ぶりだったが、お土産の人はレジ横のベンチで待つことができた。

私は座りながら、注文の品ができるまでのあいだ、ホール係の人々の動きを眺めていた。そこは大きな町中華で、若い人からけっこう年配の人まで6人ぐらいの女性たちが忙しく立ち働いていた。注文を取ったり、空いた席に人を案内したり、厨房から料理を運んだり、レジに入ったり、どの人も巧みに連携しながら滞りなく仕事を果たしていた。私から見れば目まぐるしい動きであったが、混乱の様子は微塵もなかった。

私のほうからは厨房の中は見えなかったが、おそらくそこでも同じように素晴らしい共同作業が行われているに違いなかった。

人類は他の動物と異なり、身振り手振りや言語を効果的に用いて、協力関係を構築することができる。そうやって極めて複雑な行動を遂行してみせるのだ。人類がこうした能力を発達させるのに、町中華ほどうってつけの場所はないのではあるまいか。

近い将来、アフリカのどこかの洞窟で、人類初期の町中華の遺跡が発掘されるのは確実だろう。

風刺・戯文

おしっこは地球を救う(後編)

薬を繰り返し使っていると、体に耐性ができ、もっと強い薬でないと効かなくなる。私に起きたのもちょうどそんなことだった。私がどんなに自分のつらい現状に想いを馳せても、どんなに強い打撃で精神に喝を入れても、尿意はそれに慣れてしまい、まったく退散しなくなってしまったのだ。

そして、ある日のこと、道を歩いていた私にこれまでないほど強烈な尿意が襲いかかってきた。私は必死に自分の厳しい現状について考えた。だが、尿意はそれ以上に切実な様相を剥き出しにして、咆哮を上げた!

鋭い苦痛に貫かれた私はもはやなすすべもなく、尿で尿を洗うが如き闘争のただなかで、漏らすほかないと諦念したその瞬間だった。私の脳裏に戦争のイメージが閃いた。それはウクライナかもしれなかった、ガザかもしれなかった、あるいは世界の見捨てられた地で起きている戦争かもしれなかった。だが、その恐ろしい戦争が、私の精神を立ち直らせ、人間の責務へと立ち返らせた。

戦争はこれを放棄しなくてはならない!

するとどうだろうか、その瞬間、かの残虐なる尿意はたちまちのうちに消え去ったのだった。

この世界の悲惨が私を救ったのだ。そして、その日以来、私は平和と平等の実現のために働き続けている。平和を求める仲間たちが集い、運動は大きなうねりとなって広がっている。

私は仲間たちの強い勧めにより、議員に立候補した。平和を実現し、世界を絶望から救いだすという使命を背負って、今、極めて熾烈な選挙戦を戦っている。たぶん、投票日まで一度もトイレに行かずに済むのではないかと思う。

風刺・戯文

おしっこは地球を救う(前編)

年齢のせいなのか、おしっこが近くなった。というよりも、尿意が不意打ちを仕掛けてくるようになったのだ。漏らしてしまえばいいのだが、そうもいかないので、悶えることになる。

尿意の襲撃を幾度も耐え凌いでいるうちに、それが潜んでいる待ち伏せ場所がわかるようになった。卑劣にも、マンションの前やエレベーターの中という、攻撃とは無縁であってしかるべき平和な場所なのだ。

これはどうしてなのだろうか、と不思議に思っていたら、たまたまネットのある情報が目に入った。家に近くなると尿意が襲ってくるのは、外での張り詰めた精神が緩み、休息用の精神状態に変化するからだという。そこにつけこんでくるのだ

となると、と私は考えた。家に着く前に、あえて精神の手綱を締め、精神を緊張させればよいではないか。そこで私は、帰宅直前、鋭き尿意が萌してきた瞬間に、つらい仕事のことや、重き課題と責務、あるいは我が風前の灯の命など、自分の厳しい現実について考えるようにした。すると、驚くべきことに、これら容赦なき荒波に蹴散らされでもしたか、尿意はたちまち霧の如く消え去ったではないか。

私は、暗く悲しい気持ちと引き換えにではあるにしても、尿意に脅かされることなくエレベーターに乗り、悠々と帰宅できるようになった。ついに平和が訪れたのだ。

もっとも、残念なことに、この停戦は長くは続かなかった。

風刺・戯文

ファーストの先

行列に並んでいると、男が私たちの前に割り込んできた。私たちのひとりがそのことを注意すると、男は「ここは日本なのだから日本人ファーストだ。黙ってろ」とすごんだ。

「私たちも日本人ですが」とこっちも負けない。

「じゃあ、証明するものを見せろ」

「いや、なんであなたに見せなくてはならないのですか」

「ほら、これだ。だから外国人どもてのは!」

あんまり悔しかったので私たちはそれぞれ自分の証明書を取り出してみせた。すると男は見もせずにあざ笑った。「おいおい、俺は入管じゃないぜ! どうせ偽造だろ! お前らは在留カードでも握っておとなしく並んでろ!」

「じゃ、じゃ、そっちの証拠を見せろよ!」 と私たちのひとりがたまらず声を荒げた。すると男は胸のポケットからラミネートされたカードを取り出して、突き出した。日本人ファースト党の党員証だった。

私たちはもう黙ることにした。すると、男は何人か先に年配の女性が並んでいるのを見つけ、今度はそこに割り込んだ。女性の抗議の声と、男がこう怒鳴りつけるのが聞こえた。

「子どもの産めないババアは黙ってろ! この日本じゃ日本人ファーストなのは子どもを産む若い女だけだ!」

そのうち男はさらに割り込める場所を見つけて、どんどん先に行ってしまった。あんなふうにおかしくなると、と行列に並ぶ私たちは思った。地獄に落ちるのも日本人ファーストらしい。

風刺・戯文

練馬変態クラブの憤慨

練馬区の変態たちがつくる練馬変態クラブは、1974 年には活動をしていた変態市民団体の草分け的存在だ。月一回で行われる会合では、誰もが公式の衣装、つまりブリーフいっちょうで参加するのが決まりとなっている。集まると、会員たちは互いにブリーフを誇らしげに見せ合いながら元気よく叫ぶ。

「ぼくはライオン!」「ぼくはゴリラ!」「ぼくは象!」

ブリーフの正面真ん中には、それぞれお好みの動物の顔が描かれていて、その動物を報告する。これが、練馬変態クラブの決まりなのだ。だが、普段は明るい会員たちが近頃どうも落ち込み気味なのだという。

その原因は最近のニュース、小学校の教師たちが盗撮した児童の写真をネットで共有していたという報道にあった。会長のへんいちさんに話を伺うとこう答えてくれた。

「私たち変態が問題視しているのは、この見出しです。『変態教師グループ逮捕』 ひどいではありませんか。変態は犯罪者ではないのです」と会長は憤る。

「私たち変態も、この教師たちのしたことに怒っていることには変わりはありません。ただ、彼らは変態ではなく、犯罪者なのです。こうした書き方は、変態は犯罪だという誤解を与えます。私はメディアに問いたいです。教えてください。変態は、罪ですか? メディアの差別的な姿勢に断固抗議いたします」

練馬変態クラブは、抗議文を記したブリーフを履いてメディアに乗り込み、脱ぎたてを公式プレスブリーフとして報道関係者にじかに手渡す予定だ。