風刺・戯文

太いパイプ

自公連立の解消という衝撃が走った昨日から一夜明け、高市自民党総裁の女性初の首相就任が必ずしも確実とはいえない状況になってきました。

「今回の公明の離脱は、高市さんが公明党との太いパイプを持っていなかったためだ」と語る自民関係者。また自民党幹部も「高市さんが今後、首相になるためには、野党との協力を取り付ける必要がある。そのために高市さんは、野党との太いパイプを積極的に構築すべきだ」と注文をつけます。

そんななか、今日、自民党本部前に熱烈な高市支持者が集まり、手に手にパイプを持って高市首相誕生を呼びかけました。

集会の主催者「太いパイプがないという高市さんに対する批判にいてもたってもいられず、今日の集会を企画しました。私がもってきたのは呼び径 200 の硬質塩化ビニル管です」

別の参加者「それじゃだめですよ。私は炭素鋼鋼管。直径は 500 です」

「ちょっと待てよ」と別の参加者。「いや鋼鋼管なら、溶融亜鉛でメッキされた白管のほうがずっといい」

「そんなことはない!」「いやそうだ!」「おい待て! このパイプは中国製じゃないか!」「バカ言うな!」

初めは穏やかに始まった集会ですが、最後は支持者同士が互いをパイプで殴り合う騒ぎとなりました。

風刺・戯文

日本に学ぼう

この度、トルコ、イラク、イランなどの政府関係者が日本を訪問し、川口市を視察しました。どの国も、国内のクルド人をめぐる問題に悩まされてきた国です。

「私たちは日本で実に効果的なクルド人迫害が行われていると聞いてやってきました」と訪問者たちは語ります。「私たちはクルド人としばしば武力による対立を経験してきましたが、それでもクルド人勢力を消滅させることはできませんでした。ところが、日本ではいかなる武器もなしにクルド人を追い出すことに成功しつつあるというではないですか」

街でさっそく、クルド人に対するヘイトスピーチをする市民に出会った訪問者たち。通訳から内容を聞いて感心します。「こんなイヤがらせの仕方があったのですか!」

また、クルド人を追い出そうと集った市民の活動にも大いに関心を惹かれた様子です。

(訪問者)「日本では市民、行政、マスコミが一丸となってクルド人をいじめているのに感銘を受けました。これぞ民主主義のあるべき姿です」

訪問者たちは「クルド人の子どもを標的にするなど、日本人のすばらしい陰湿さを学ぶことができたのは大きな収穫でした」と、満足げにそれぞれの国に帰ったということです。

風刺・戯文

素人は黙ってろ

素人はしょせんプロには敵わないのです。まず、経験と知識の差があります。プロは長年の訓練や実践を通じて、素人がちょっとやそっとでは追いつけない経験と知識を身につけているのです。

それに、プロというものは必ず結果を出しています。だからプロといえるのです。一方、素人は結果など出せませんね。だから、プロではないのです。

さらに大事なことをいえば、プロと素人では責任の重みが違うのです。プロには間違いが許されません。ですが、素人はたいてい間違います。ひどいのになると、間違っても気づきもしない。いや、もちろん、プロだって人間です。間違うときもありますよ。ですが、そんな時でも徹底したリスク管理能力があるおかげで、被害を最低限に食い止めることができるんです。

だから、素人がプロに対して意見を言うのはもう本当に間違っています。素人にはそもそも意見を言う資格すらないんです。

それでです。将軍とはなんですか? そうです。戦争のプロです。その将軍が、みなさんに、たった10万人の犠牲で、戦争に勝利するといっているんです。素人は文句など言わずに、黙って前線に行ったらどうですか。

風刺・戯文

反日外国人の野望

某反日国の秘密研究所に全身傷だらけの男が虫の息で担ぎ込まれてきた。所長が駆けつけると、男は手に握った毛の塊を差し出し、息絶えた。

「つ、ついに手に入れたか! わしらはお前の命を無駄にはせん!」

所長は、研究員たちをただちに招集した。その研究所では、日本を混乱に陥れるための恐ろしい研究が進められていたのだった。所長は、スパイが命を賭して奪ってきたその毛の塊を解析し、遺伝子操作によって、恐怖の「作品」をついに完成させた。

徹夜のせいで青ざめた顔で所長はテレビをつけた。日本の総裁選の様子が映し出される。所長はその成り行きを見ながら、込み上げる笑いを抑えることができなかった。

「フハハ、ムハ、ウハハハハハハ!」

(閃光がきらめき、おどろおどろしい音楽が鳴る)

巨大な獣が荒れ野に出現する。熊のように黒く、鹿のような鋭い角が生えている。目を憎しみにランランと輝かせながら、地を揺るがすような咆哮を上げる。

所長「奈良の鹿の毛から得た遺伝子を、獰猛な熊に注入することで生まれたモンスターよ、行け! 射殺しても非国民、射殺しなくても非国民、暴れ回って日本人を困らせるのだ! フハハハハハハ!」

風刺・戯文

80 歳からの NISA

NISA を始めるときに大事なのは、年齢だと思っていませんか? そんなことはありません。80 代からでも大丈夫!

「でも、その年じゃ、運用期間、短くない? それに、退職金ももうないんです!」

だから大丈夫ですって! 80 歳からでも、90 歳からでも、しっかり運用できる秘訣、あります!

それが「新 NISA コールドスリープ・プラン 3025」

コールドスリープとは「人体を低温状態に保つことで老化を遅らせる」こと。

「なーんだ、SF とかの夢物語じゃないか」

ちょ、ちょっと待ってください。最近、人気女性音楽グループが挑戦したことでも話題になったように、じつはこの技術、実用化されていたんです。

このコールドスリープと NISA を組み合わせたのが「新 NISA コールドスリープ・プラン 3025」。話は簡単です。あなたがコールドスリープ状態で 1,000 年寝ている間に、積み立て NISA がすごいことに!

私たちの試算によれば、目覚めたあなたは、控えめに言っても億万長者。もちろん、コールドスリープにかかる諸費用を差し引いてもです!

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【申し込み特典】
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散文

天使のメール

知り合いの日本語教師に、天使のメールが届いたというのでご報告したい。

その人は、ある朝、日本語学校で授業の準備をしていたそうだ。1コマ目から授業があるので、教材を持って、少し早めに教室に行ったのだった。

すでに何人かの学生が来ていて、互いに挨拶をする。彼が今日担当するのは初級クラスで、ネパールやらミャンマー・ベトナムの学生ばかりだ。これらの学生は「非漢字圏」の学生と呼ばれる。中国・台湾といった漢字圏ではないということだが、ひとことでいえば、日本語の習得にさいし、漢字で苦労し、漢字でつまづくことの多い学生たちだ。

授業開始まであと 10 分ばかりとなったとき、彼の携帯にメールの通知が来た。メールアプリを開いて、送信者を見ると、クラスのある学生からだ。そして、そのメールの件名にはこう書かれていた。

「天使ややがおくれた」

「天使やや」とはなんだろうか。そして、その天使の到来が遅れた、とは。ある種の終末論を想起させるこのメールの本文には、なにも書かれておらず、ただ写真が添付されているだけだ。

彼はその写真を開くのに躊躇した。神々しいエンジェル・アートかもしれない。人前で開くのにはばかられるような画像かもしれない。あるいは、学生の携帯がウイルスに感染した恐れだってある。

だが、彼は開けた。

写真には、電車の遅延を知らせる電光掲示板が写っていた。

メッセージは「電車が遅れた」だった。

小説

知的生命体の探索

地球人はついに星々を巡る船を建造し、知的生命体を探索する旅に出発した。もちろん闇雲に探すのではない。地球人たちは遠い星のいくつかにもう目星をつけてあった。

数万光年の旅のすえ、船は最初の星に到着した。だが、そこには生命と呼べるものはなかった。そこで、さらに数万光年の旅を続け、2番目の候補の星に辿り着いた。船は星全体をスキャンしたが、小さな微生物がいるだけのようだった。

船が3つ目の星に着くまで、さらに数万光年の虚空を突き進まねばならなかった。そして、その星で地球人は不思議な存在を見つけたのだった。

それはまるで枯れた樹木に似ていたが、目や口のような器官があった。そして、この樹木たちは、その口のような穴ボコを動かして、互いに話し合っているようなのだった。地球人はこれこそ知的生命体かもしれないと大いに興奮した。

「私たちは遠い星、地球から知的生命体を見つけるために旅をしてきました。みなさんとお会いできて光栄です」

すると、樹木たちはぴたりと動きを止め、ぶつぶついう声も聞こえなくなった。

「なんだ」と地球人は言った。「知的生命体ではないのだな」

がっかりして地球人が立ち去ろうとしたとき、一本の樹木が鋭い音を発した。その音の分析には長い年月がかかり、それが分かったときには、船は遠く離れた別の星域を漂っていた。

樹木はこう言ったのだった。「僕たちも知的生命体の探索のためにこの星に派遣されたんだよ。大変だよね、知的生命体を見つけるのって。お互いに見つけられるよう、がんばろー……」

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風刺・戯文

昭和の魂、百までも

昨日、東京、霞ヶ関にある経済産業省のビルで暴れたとして、50 代の男が逮捕されました。ビルに侵入しようとした男は、制止しようとした警備員を突き飛ばし、通報によって駆けつけた警察官に取り押さえられました。

男が押し入ろうとしたのは、経産省のビル内にある産業技術総合研究所の計量標準総合センター東京本部。日本の長さ・質量・時間・温度などを維持・管理する機関です。いったいどうして男は侵入しようとしたのでしょうか。その背景には意外な動機がありました。

(男の知人)「なんでも、ガールズバーっての? そこの若い女の子に入れ込んで、結婚まで考えてたんだけど、その女の子は背の高い男が好きだってんで」

(記者:男の身長は?)「160 cm 台かな……」

男は計量標準総合センターで「昭和の 160 cm 台は令和の 180 cm 台だ」と発表するように要求するつもりだったと供述しています。

なお、警察によれば、男は「昭和ならこれは犯罪ではない」と犯行を否認しているそうです。

風刺・戯文

言語の変化

言語はどうして変化するのだろうか。いろいろな考え方がある。正しい言葉を使わないからだという人がいる。例えば「ら抜き言葉」がそうだ。「言葉の乱れ」が原因なのだ。

また、人間の楽をしたいという欲求が言語を変化させるのだという人もいる。ら抜き言葉も、「ら」を抜いても意思疎通に困らないのなら、なくてもいいじゃん、てことでなくなった、というのだ。

他にもいろいろな考え方があるだろうが、言語が変わるのは、結局のところ、人間が話しているからだ、ということになる。人間が変化を起こすのだ。

もっとも、変化が起きにくい環境がある。それは書き言葉だ。書くときは話すときよりも、文法や語彙の「正しさ」に注意が向くため、書き言葉はいつも話し言葉よりも古く、変化しにくい。

しかし、最近、いつだって正しい言葉を使い、楽をしたいという怠け心も起こさない存在が現れ、世界中のあちこちで話しはじめた。AI だ。

だから、AI の話す言語は変化をしない。するとしても、人間が話すほどではない。なので、たとえ、ネットに現れる新たな言葉遣いの学習を続け、絶えずそれを取り入れるとしても、AI の話し言葉は古く、変化しにくいだろう。

そのいっぽう、人間がますます AI に頼るようになると、人間の話し言葉も AI に似てくる。そしてその分、AI も変化を促すようなデータに出会うことがなくなり、ますます変わらなくなる。それをまた人間が真似をする。

これが繰り返されるうちに、人間の言語は変化を止めるだろう。

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風刺・戯文

鹿蹴り

武闘派で知られる政治家の発言が波紋を引き起こしている。外国人が鹿を蹴ったのを見たというのだ。ある人はこれは本当だという。しかし、別の人は疑っている。

だが、この政治家が嘘をついているとは考えにくい。もちろん、人間だから、発言のすべて、つまり100パーセント真実というわけではなかろう。だが、10割とはいかぬまでも「大陸から8割」程度には真実を語っているものと思われる。

ところが、テレビなどの取材によると、鹿の周辺にいる人々は「外国人が鹿を蹴っているのは見たことがない」と言っているというのだ。すべての人に取材したわけではないだろうから、もしかしたら、鹿を蹴った外国人を目撃した人には出会わなかったのかもしれない。しかし、それでも、鹿を蹴っている外国人の目撃例が報告されていないことは重視すべきだろう。

とすると、この政治家が嘘をついているのだろうか? それともテレビ報道がデタラメなのだろうか?

ここで私は鋭い知性を働かせ、このどちらもが真でありうる唯一の真実を突き止めた。

まず真実を述べよう。それは「外国人は鹿を蹴った」だ。とすると「蹴っているのを見たことがない」と言っている人々は嘘つきなのだろうか?

いや、この証言も正しい。なぜなら、外国人の蹴りは、目にも見えぬほどの速さで繰り出されたからだ。その素早い蹴りを見抜けたのが、かの武闘派の政治家のみだったというのも当然といえば当然だ。鹿ファーストで考えるならば、政治家などやめて鹿の監視係にぜひ就任してほしい。