風刺・戯文

動く会議室

私たちの市長が、部下とラブホテルで密会していただなんて非難されていますが、私は市長が言うとおり、男女の関係などなく、本当に大事な話をしていたと思っています。

というのも、私たちの町は田舎ですから、内密の話し合いをできる場所なんかないのです。隠れ家的なところがたくさんある東京とは違うんです。

政治はもちろんオープンであるべきですが、ときには人に聞かれたくない話もあるのは当然です。この町にも、市長のような偉い方がうちうちの話ができるような環境を整備すべきではないでしょうか。

そこで私が考えたのが、いわば動く会議室です。つまり、会議室つきのキャンピングカーです。これなら、ラブホテルなんて誤解を招く場所を使う必要もないですし、いつでもどこでも盗み聞きされることなくクローズドな打ち合わせを開くことができます。

ですが、この移動式会議室は会議室とはいうものの、車ですから狭いのです。窓があれば開放感があっていいのですが、外から丸見えでは秘密の会議もできませんね。

そこで、私は車の一面を思い切ってガラス張りにしたのです。ですが、普通のガラスじゃありません。外側からは鏡に、内部からは外側が見える特殊なガラスです。

こうすれば、閉塞感もないですし、また中からは市民や市の様子も見ることができますから、市長も市民のことを考えながら真剣に政治に取り組むことができます。

本当にすばらしい会議室カーができたと思っています。ですが、困ったことがあるのです。この車が止まるたびに、おかしな男があちこちから群がってくるのはどうしてでしょうか……

風刺・戯文

秋は馬車馬に乗って

この秋、「ノー・キングス(嘘つきにして独裁者であるトランプのような王様はいらない)」を掲げる大規模な抗議デモが全米各地で行われています。これまでに 600 万人が参加し、「民主主義と自由が脅かされている」と感じている市民の力が結集した結果だ、と主催者は語ります。

日本でもこの抗議運動に呼応する動きが始まっています。今日、東京の高田馬場に市民が集まり、日本の右傾化と外国人排斥に反対するデモ行進が行われました。

参加者のひとりは「このままでは戦前の軍国主義が復活してしまう、そんな危機感に突き動かされて、馬喰町から駆けつけました」と語ります。

アメリカの「ノー・キングス」に倣って、今回のデモでは、参加者たちはみな「ノー馬車」というスローガンを掲げて行進しました。馬込に本部を置く主催団体は「馬車がなくなれば、馬車馬も必要なくなり、結果、馬車馬首相も不要になります」と説明します。

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」を地でいくこの運動、はたして馬と出るか鹿と出るか、今後が注目されます。

風刺・戯文

太いパイプ

自公連立の解消という衝撃が走った昨日から一夜明け、高市自民党総裁の女性初の首相就任が必ずしも確実とはいえない状況になってきました。

「今回の公明の離脱は、高市さんが公明党との太いパイプを持っていなかったためだ」と語る自民関係者。また自民党幹部も「高市さんが今後、首相になるためには、野党との協力を取り付ける必要がある。そのために高市さんは、野党との太いパイプを積極的に構築すべきだ」と注文をつけます。

そんななか、今日、自民党本部前に熱烈な高市支持者が集まり、手に手にパイプを持って高市首相誕生を呼びかけました。

集会の主催者「太いパイプがないという高市さんに対する批判にいてもたってもいられず、今日の集会を企画しました。私がもってきたのは呼び径 200 の硬質塩化ビニル管です」

別の参加者「それじゃだめですよ。私は炭素鋼鋼管。直径は 500 です」

「ちょっと待てよ」と別の参加者。「いや鋼鋼管なら、溶融亜鉛でメッキされた白管のほうがずっといい」

「そんなことはない!」「いやそうだ!」「おい待て! このパイプは中国製じゃないか!」「バカ言うな!」

初めは穏やかに始まった集会ですが、最後は支持者同士が互いをパイプで殴り合う騒ぎとなりました。

風刺・戯文

反日外国人の野望

某反日国の秘密研究所に全身傷だらけの男が虫の息で担ぎ込まれてきた。所長が駆けつけると、男は手に握った毛の塊を差し出し、息絶えた。

「つ、ついに手に入れたか! わしらはお前の命を無駄にはせん!」

所長は、研究員たちをただちに招集した。その研究所では、日本を混乱に陥れるための恐ろしい研究が進められていたのだった。所長は、スパイが命を賭して奪ってきたその毛の塊を解析し、遺伝子操作によって、恐怖の「作品」をついに完成させた。

徹夜のせいで青ざめた顔で所長はテレビをつけた。日本の総裁選の様子が映し出される。所長はその成り行きを見ながら、込み上げる笑いを抑えることができなかった。

「フハハ、ムハ、ウハハハハハハ!」

(閃光がきらめき、おどろおどろしい音楽が鳴る)

巨大な獣が荒れ野に出現する。熊のように黒く、鹿のような鋭い角が生えている。目を憎しみにランランと輝かせながら、地を揺るがすような咆哮を上げる。

所長「奈良の鹿の毛から得た遺伝子を、獰猛な熊に注入することで生まれたモンスターよ、行け! 射殺しても非国民、射殺しなくても非国民、暴れ回って日本人を困らせるのだ! フハハハハハハ!」

風刺・戯文

鹿蹴り

武闘派で知られる政治家の発言が波紋を引き起こしている。外国人が鹿を蹴ったのを見たというのだ。ある人はこれは本当だという。しかし、別の人は疑っている。

だが、この政治家が嘘をついているとは考えにくい。もちろん、人間だから、発言のすべて、つまり100パーセント真実というわけではなかろう。だが、10割とはいかぬまでも「大陸から8割」程度には真実を語っているものと思われる。

ところが、テレビなどの取材によると、鹿の周辺にいる人々は「外国人が鹿を蹴っているのは見たことがない」と言っているというのだ。すべての人に取材したわけではないだろうから、もしかしたら、鹿を蹴った外国人を目撃した人には出会わなかったのかもしれない。しかし、それでも、鹿を蹴っている外国人の目撃例が報告されていないことは重視すべきだろう。

とすると、この政治家が嘘をついているのだろうか? それともテレビ報道がデタラメなのだろうか?

ここで私は鋭い知性を働かせ、このどちらもが真でありうる唯一の真実を突き止めた。

まず真実を述べよう。それは「外国人は鹿を蹴った」だ。とすると「蹴っているのを見たことがない」と言っている人々は嘘つきなのだろうか?

いや、この証言も正しい。なぜなら、外国人の蹴りは、目にも見えぬほどの速さで繰り出されたからだ。その素早い蹴りを見抜けたのが、かの武闘派の政治家のみだったというのも当然といえば当然だ。鹿ファーストで考えるならば、政治家などやめて鹿の監視係にぜひ就任してほしい。

風刺・戯文

解放の祝祭

街中で歓声が湧き上がり、喜びの足踏みと手拍子が鳴り響く。あちこちで祝砲が弾ける。

もう恐れるものはなにもない。恐怖は過ぎ去り、解放の瞬間が訪れたのだ。私たちは民族の服を着て外に飛び出す。誇らしげに舞い踊る。私たちの街が異民族の魔の手からついに逃れたこの日を喜ばずしてなんとしよう!

誰もが抱き合い、お祝いの言葉を投げかける。誰もが同胞愛に満ち溢れてる。民族の名のもとに互いに許しを乞い、新たな時代の到来の名のもとにすべてを水に流すことを誓い合う。

ついに私たちは民族の解放を勝ち取った! 街中が解放の祝祭の会場だ。音楽に歌、太鼓にかけ声、乾杯の音、笑い声、涙声、口づけの音。重苦しかったこの街が一瞬にして花開き、生の喜びに煌めく。恐ろしい異民族はもう絶対に来ないだろう!

ああ、この日のために私たちは、どれだけ戦ったことだろうか。どれだけ激しく抗議の声を上げたことだろうか。虚偽に満ちた市役所をどれだけ電話責めにしたことだろうか!

私たちはこの民族の勝利の日をとこしえに記憶し、言祝ぎ続けるだろう。「ホームタウン」事業がついに撤回されたこの日を。

風刺・戯文

Department of Why Can’t We Be Friends?

アメリカ合衆国大統領、ドナルド・トランプが、国防総省を戦争省に改称すると発表した。ツイッター(現 X)での日本人の反応を見ると、「バカげている」と呆れる人、「戦乱の世の到来か」と危ぶむ人、「なにをいまさら」とアメリカの歴史を引き合いに出す人などさまざまだが、基本的には否定的に捉える人が多いようだ。

いっぽう、肯定的にこれを捉える人もいる。いわゆる陰謀論者たちで、これらの人々は、この改称をもってして、自分たちのヒーローであるトランプが「DS(ディープ・ステート)」に対して本格的な宣戦布告をしたと歓迎しているようだ。

私はというと、やはり否定的な解釈に組みするものだが、それでも、今回の改称が、この戦争だらけの世界に一縷の希望をもたらすのではないかという可能性も信じたい。

というのも、war が「戦争」ではなく、アメリカのファンク・バンドの War である可能性も否定できないからだ。War は、アニマルズのエリック・バードンらが結成したバンドで、1970 年にデビューした。以来、数々のアルバムを発表しているが、中でも有名な曲は、1975年の「Why Can’t We Be Friends?(邦題:仲間よ目を覚ませ)」だ。

この曲は、タイトルの通り、戦争などの対立を乗り越えて友達になろう、という歌だが、アメリカ人がこの名曲を忘れるはずはない。万が一のことかもしれないが、近いうちに、目を覚ましたアメリカ政府が、戦争省をさらに改称して、Why Can’t We Be Friends? 省とするかもしれないということを念頭において、日本政府は対米外交政策に取り組むべきだと思う。

風刺・戯文

王の後悔

することがないので昼寝していたら、おかしな夢を見た。

異国の男が豪華な衣服で立っているのだ。宝石が散りばめられた大きな金の冠をかぶっているので、すぐに王だとしれた。その王がため息をつきながら、悲しい顔つきで私のほうを見ているのだった。私は思わず尋ねた。

「お困りのようですが、どうされたのでしょうか」

「いや、余はそなたの国が羨ましくてたまらないのだ。余がもしそなたのような国にいたら、あのような恥辱を受けずとも済んだはずなのに。そう思うと、なんともやりきれない思いにとらわれるのだ……」

異国の王の口から漏れた思わぬ言葉に私は仰天した。「いったい、どのようなことが羨ましいというのでしょうか」

「なんでも、そなたの国では、偽の卒業証書をチラ見せするだけで、本物だと言い張ることができるそうではないか」

「ええ、なんでもタイパ重視の我が国では、大事な事柄もチラ見せでこと足りるのです」

「ああ! ああ! そのチラ見せの秘技さえ習得していれば! 我が身は悲劇を免れただろうに!」

王の激しい嘆きぶりを見て私はついやさしい気持ちになった。「王様よ、いったいどのようなことに苦しんでいらっしゃるのでしょうか。この私めにお話くだされば、多少は和らごうかと存じます」

「ああ! もう無駄じゃ! 無駄じゃ! 余は永遠に消し去ることのできぬ恥を晒してしまったのだ! ああ、あのときに、この王冠を一瞬だけ上げて耳をチラ見せしていれば、ロバの耳ではないと言い張ることができただろうに!」

風刺・戯文

愛国的関税措置

日本人ファースト党が、「日本をもう一度偉大に」をキャッチフレーズに政権を握ったとき、一部の連中が「日本が偉大なときなどあったのか」とか「ドナルド・トランプの二番煎じじゃないか」とからかったんだ。

もちろん、日本人ファースト政府にはこんなくだらない中傷につきあっている暇はないよ。だから、反論なんてせずに、中傷者どもを監獄に閉じ込めちゃった。それですぐに日本を偉大にする諸政策に取りかかったんだ。

政府が言うには、日本が偉大になっていないのは、日本を偉大にするのを邪魔する外国人とその仲間の非国民が暗躍しているからなんだって。つまり、こいつらが日本の大事なものを盗んでいるってこと。だから、政府は、外国人を日本から追い出したり、憎たらしい外国に対して関税をぐんと引き上げたり、徴兵制度を復活させたりしたんだ。これぞ「シン富国強兵だ」と僕たちは拍手喝采さ。

それに地震やコロナだって、外国人たちが日本を苦しめるために人工的に引き起こしてるんだって。ある日こんな発表をしたんだ。

「私たちが偉大な日本を復活したので、もう人工地震は起きません」

僕たちはすっかり安心したんだ。だけどその晩、とても大きな地震が起きたんだ。警報が鳴って、マスゴミが騒いでうるさいったらない。

「津波が来ます。ただちに高台に避難してください!」

そのとき、日本人ファースト政府はこんな発表をしたんだ。

「皆さん、反日国が引き起こした人工地震から避難する必要はありません! 私たち政府は、日本に来るあらゆる津波に 200 %の関税をかけました!」

僕たちはそのまま津波に飲まれたんだ。