旅・観察

ベルベル語に出会う(1)

私にとって、チュニジアのベルベル語を学ぶというのは、長年の夢であった。とはいえ、それは 2 つの点で難しかった。ひとつは私自身の能力の問題だ。チュニジアでベルベル語を学ぶためには、この言語と言語学の知識に加えて、アラビア語やフランス語で意思疎通ができるだけの語学力もなくてはならない。これは私には無理だ。

だが、能力のことは、あまり深刻に悩んでもしかたがない。完璧な人などいないし、できなくてもとにかくやってみれば、どうにかなるかもしれない。しかし、もうひとつの問題はそういうわけにはいかなかった。ベルベル語を教えてくれる人がいなかったのだ。これは心の持ちようでどうにかなるものではなかった。

私はチュニジアで誰かに会うたびに、ベルベル語を教えてくれる人はいないかと尋ねたが、思うようにはいかなかった。だが、2025 年 3 月、ついに私はその人に出会うことができた。

この出会いについて語るのが、この文章の目的だ。もっとも、そのために私は少し回り道をしなくてはならない。ビルマ(ミャンマー)のカレン人という民族について話すところから始める必要があるのだ。

(写真:ドゥウィーラート周辺の風景)

苦い文学

トランプの国

トランプ大統領の関税戦争が、かえってアメリカ国内の物価上昇を招き、国民の生活を脅かしています。「毎年行っていた海外旅行にはもういけなくなりました」と、アメリカ市民の一人は語ります。「外食など贅沢です。このままではアメリカはメチャクチャになってしまいます」

関税戦争により、打撃を受けるのはアメリカ以外の国々も同じです。そこで、関税に対抗するために、国境を超えた市民同士の連帯を作ろうという動きがアメリカで生まれています。世界各国で連帯を訴え続けるアメリカ全国市民生活協会の代表、トーマス・ミラーさんが、今日、来日しました。

「民主主義という価値観を共有する日本の市民のみなさんと力を合わせれば、関税を食い止めることができるはずです」と期待を語るミラーさん。ですが、彼を待ち受けていたのは、予想以上の日本人の生活の貧しさでした。

「欧米では時給が 1 万円、年収 3000 万円以下が貧困層、ホームレスの年収が 1200 万円ですが……これでは日本の国民のほとんどが極貧ではないですか。日本では、もうかなり前からトランプが現れて、国をメチャクチャにしていたとしか考えられません」

ミラーさんは「トランプ先進国に用はない」とすぐさま滞在を切り上げて、他の国に向けて出発しました。

苦い文学

皇紀2684年の荒野(中編)

【PART 3 ジャーナリスト稼業】
週刊パンチ編集部 ——東京、ジャパン
(高級週刊誌の編集部の様子。水着のグラビアがあちこちに貼られている)
編集長(記者たちに)「さあ、愛子さまを褒め称えるネタを探してこい!」

外村記者「編集長っ! 今週、愛子さまの特集号を出すってのにまたですか?」

編集長「バカ言うな! 読者はもっともっと欲しがってんだよ! 読者、いや国民が欲しいものを提供するのが俺たちジャーナリストだってことを忘れるな!」

外村記者(聞こえないように小声で)「ちっ、まともなジャーナリストなら競馬やパチンコの取材をさせろよな」

編集長「おい、外村! なんか言ったか?」

外村記者「いえ、いいえ!」

編集長「お前はさっそく宮内庁の張り込みだ。とくダネを引っ張ってくるまで帰ってくるな!」

外村記者「はいはい、わかりましたよ!」(としぶしぶ外に出る)

【PART 4 狙われた “安全弁”】
(深夜の宮内庁の地下施設)
技師(モニターの前であくびして)「ふああ、まったく監視業務も楽じゃねえや。しかし、原田所長がカリカリしてるからな、ちゃんとチェックしなきゃ……」

(コンピュータで設備の安全状況の確認をはじめる。終わると、別の画面を開いて、障害物を除去して女性を裸にするゲームを始める)
技師「お、あとちょっと!」 (その瞬間、画面が切り替わり、どくろマークが浮かぶ)

技師「おあっ。な、なんだ!」

(コンピュータがブラックアウトし、緊急アラームが鳴り響く。場面変わって……)

政府官邸特別対策室
(岸川首相に事態を報告する石部長官)
石部長官「反日勢力のハッキングによりRRCS(皇室敬意制御システム)のコントロールが奪われ、安全弁が破壊されました」

岸川首相「するとどうなるのだね」

石部長官「ご安心ください。すでにハッカー集団からシステムは奪還しました。これから慎重に圧を下げれば対処可能かと……」

原田所長(口を挟んで)「いやっ、このままだと爆発の可能性があります! 皇室への敬意がヘイトに逆転し、東京中が皇室ヘイトに汚染されてしまいます!」

岸川首相(驚きのあまりメガネがずり落ちる)「な、なんだと! それでは愛子さまを利用した政権浮上策も無理ではないか!」

原田所長「それどころではありません! これ以上ヘイトが拡散すれば、皇族がみなアメリカに行ってしまうでしょう!」

岸川首相「た、ただちになんとかするんだ!」

原田所長「そのためにはハッカー集団に破壊された安全弁の修復が必要です」

岸川首相「すぐに取りかかるのだ!」

原田所長「ですが、現在、施設内にヘイトが充満して、危険な状態なのです。外部から安全弁に空いた穴を塞ぐことができればいいのですが、そんなことをできるのは一流の、いや超がつく一流のスナイパーだけでしょう……」

岸川首相「むむ……」(次号に続く)

苦い文学

Jアラート防衛

今日は、政府の全国瞬時警報システム(Jアラート)の警報が発令され、朝から騒然としていた。

「落ちる」というので、国際社会における日本の地位や出生率のことかと思いきや、北朝鮮のミサイルのことであった。

北海道のどこかにミサイルが落下するというのだ。やがてこれは訂正され、当初思っていたほど危険ではないということがわかったが、それでも、朝の貴重な時間を北朝鮮に振り回されたのであった。

そして、これこそが北朝鮮の狙いでもある。私たちが慌てたり、怯えたり、北朝鮮の威力に「恐れ入ったり」するのを見るのが楽しいのだ。

しかし、ちょっと考えればわかるように、私たちを慌てさせるには、実際のところミサイルなどいらない。ただ警報が鳴れば、私たちは反射的に騒ぎ出すだろう。

ならば、むしろ、北朝鮮にJアラートのボタンを渡せば済むことではないだろうか。

北朝鮮は、ミサイルを発射する代わりに、ミサイルが発射されたというJアラートを鳴らすのだ。

これなら、わざわざ貴重なミサイルを撃たなくても済むし、日本もミサイル落下の恐れがなく安心だ。

ただし、大事なのは私たちのリアクションだ。そう思えば、鳴ったときにちょっとおつきあい程度に驚いてやるくらい、なんでもないではないか。

苦い文学

星のこども

宇宙には我々人類よりはるかに進んだ《聖なる存在》がおり、人類を密かに教導している。

どのように教導しているかというと、《聖なる存在》たちは自分の愛しいこどもを人類の一員として託すのである。そして、そのこどもは人類になりきって生きることにより、人間たちを少しずつ感化していく。彼らは《星のこども》と呼ばれている。

みなさんは、ブッダとかイエスとかそうした聖人たちの正体がそれだと考えるかもしれない。その可能性はもちろんある。だが、私がお話ししたいのは、日本のとある農村地帯に暮らしていた《星のこども》のことだ。

東京のような大都会でない田舎の地味な存在がいかにして人類を教え導くことができるのか、不審に思われるかもしれない。正直言って私にも分からない。ただ、それが《聖なる存在》たちのプログラムの神秘だとしかいえないのである。

さて、その《星のこども》は地球で人間として長い間、少なくとも八十年以上過ごした。そして、そのおかげで、地球は確かによくなった。

あるとき、予感が訪れた。その予感は徐々に強くなり、やがて確信に変わった。《星のこども》は、自分が《聖なる存在》の愛し子であること、そして《聖なる存在》のもとに帰るときがきたことを悟ったのだ。

その夜がやってきた。確信に突き動かされてその《星のこども》は外に出た。夜空を見上げると《聖なる存在》の船が虚空に浮かんでいる。不思議な動きをしながら舞い降りてきた。《星のこども》は人類の肉体を脱ぎ捨る。ひとつの輝かしい魂となる。そんなふうに船に乗り込んだのだ。この地球を去って、宇宙の深淵へと帰っていくために。

なお、《聖なる存在》の船は我々には未知の科学によって作られている。決して大きなものではないが、それが地球に現れるときはかならず暴風雨に似た現象が起きる(おそらく重力波の影響であろう)。また、人類に見られないように、それが現れるのは、夜、人家のまばらな農村地帯、とくに畑や田んぼの近くだ。

さて、《星のこども》は船に乗って去っていった。地上に残されていたのは、かつて《星のこども》であった人間の肉体だ。そして、翌朝、横たわる肉体を発見した人々は、こう嘆いた。

「どうしてこの老人は嵐の夜に田んぼを見に行ったのだろうか」と。

旅・観察

古いほうの収容ウイルス、長崎入管訪問(その11)

《仮放免手続きについて(2)》

③保証金の納付
 保証金の納付が、入管のどこかのカウンターでできるかと思ったら、大間違いだ。

 入管の外の銀行に行かなくてはならないのだ。

 だが、銀行ならどこでもいいと思ったら大間違いだ。

 日本銀行でなくてはいけないのだ。日本銀行がどこにあるか知ってますか。

 東京駅の近くだ。だが、そんなところにまで行かなくてもいい。民間の銀行内に日本銀行の代理店がある。

 だが、それがどこにでもあるかと思ったら大間違いだ。

 品川入管の場合は、隣駅の田町駅前の三菱UFJ銀行にそれはある。だから、品川で仮放免手続きをする場合は、入管からバスで品川駅に戻って、隣駅の田町で納付して、もう一度、品川入管に戻ることになる。面倒くさくて、交通費が惜しい、というあなたは、牛久入管で仮放免手続きをする資格はない。

 牛久入管の場合は、常陽銀行竜崎支店で納付しなくてはならないのだが、牛久入管からそこに行くまでどうやって行ったらいいかご存知ですか。

 ヒント:その支店の近くには駅がない。

 そうなのだ、駅がないのだ。電車が通っていないのだ。茨城県龍ヶ崎市内全域に電気が通じていないのだ。いまだに薪と炭で暮らしている。昔、龍ヶ崎に電車を通す話があった時、ここの人々は拒否したそうだ! 炭火焼きのほうを選んだのだ。だから、もし、自家用車がなければ、タクシーで行かねばならない。片道3000円近く払って! もう泣きたくなる。

 しかし、大村入管はこれほど過酷ではなかった。日本銀行の代理店は、大村駅前の親和銀行内にあった。駅までは、少ない本数ながらバスがある。180円。しかも、今回は、入管の職員がバスの時刻表までプリントしてくれていた。血も涙もあった……。

 さて、どこにあろうと、銀行ですることは一緒だ。日本銀行代理店のカウンターで、保管金振込書・保管金領収証書の1枚の紙と保証金を出し、振込用紙にしかるべきことを記入する。しばらく待つと、保管金領収証書だけが切り離されて帰ってくる。

④仮放免
 保管金領収証書を持って入管に戻り、それを担当職員に渡すと、あとはすることはただ一つ、出てくるのを待つだけだ。

入管で渡された紙