散文

KNUのゲスト(1)

日本にはビルマから来たカレンの人々がいる。カレンの人々のすべてかどうかわからないが、多くがビルマ政府の迫害を経験し、難民として日本に逃れてきた。

ずいぶん昔にカレン人の政治団体がビルマで結成された。日本語でカレン民族同盟(KNU)という。ビルマは現在、さまざまな民族と内戦中だが、KNUはその中でも古株だ。もっとも、KNUは政府のようなもので、戦うのはその下にあるカレン民族解放軍(KNLA)だ。KNUは、他民族との協力・調整、ビルマ政府との交渉、日本政府などとの協議を行うほか、カレン難民の救援などいろいろな活動を行っている。

日本にいるカレン人の多くは、もちろん人によると思うが、KNUに対しては原則的には肯定的に捉えているように思う。というのも、カレン人の利益と希望を代表するもっとも大きな組織だからだ。また、身近な人がKNUの関係者や軍関係者であったりすることもある。ただし、KNU自体も長い歴史のあいだ大きな間違いを犯してきた。なので、多くの人はKNUを頼みの綱とするが、無条件に信頼しているというわけではない。その内情や行動についてはかなり厳しい目で見ているように思う。

私は日本のカレン人とのつき合いも長く、タイ・ビルマ国境の難民キャンプやビルマ国内のカレン人地域にもずいぶん行ったことがある。その過程で、KNUのさまざまなレベルの人々と会い、話す機会を持った。KNUの歴代の議長にも会ったことがある。もっとも、私は偉い人の前だと緊張してしまうので、ほとんど話さなかった。

カレン人地域に行ったのは二〇二四年二月が最後だ。この時は友人のカレン人とともにタイ側から国境を越えてビルマの紛争地域に入った。近くで鉄砲の音が聞こえるような場所だったが、私たちはわりに呑気に過ごした。その時も、友人の親戚のKNU兵士と一緒に行動した。

最近の私は在日カレン人の集まりにあまり顔を出してはいないが、この月曜日、友人から急に連絡が入った。

「今夜、KNUの議長たちと池袋で焼肉を食べるから来てくださいね」

急に言われても困るので私は断ろうと思った。

旅・観察

チュニス湖のケー100

観光地には楽しい乗り物がつきものだ。浅草の人力車もそうだし、ヨーロッパの都市には遊覧馬車もある。またロードトレインと呼ばれる乗り物もある。これは機関車などを模した車両に客車がいくつかつなげたもので、線路ではなく道路を走る。若い人には「走れ!ケー100」といったほうがわかりやすいかもしれない。

友人が、チュニス近くのチュニス湖に面した観光地でこのロードトレインの運転手を始めた。おいでというので、チュニジア滞在最後の夜に遊びに行った。

観光地ではこうした楽しい乗り物に絶対に乗らない人がいる。私もそのひとりだが、今回はその認識を改めた。

たった15分、公道を一周するだけだが、とても楽しかった。人気もあって、一人3ディナールという安さもあるのか、すぐに客車は観光客でいっぱいになる。チュニジア人の家族連れはもちろんのこと、アルジェリアやリビア、そしてそれ以外の国からの観光客もいるようだ。のんびりとしたアトラクションだが、これがチュニジアの夜の雰囲気にあっていた。

さて、私は午後6時に友人とその観光地で待ち合わせをした。場所はチュニスの市街から5キロほど離れているので、タクシーで行き、少し早めに着いた。機関車が客車とともに道路に停めてあったので、私はそこで待っていた。

すると、ひとりの無精髭の男性がやってきた。何やらぶつぶつ言っている。怒っているようだ。その人は機関車のドアを開けると、乱暴に中のものを取り出し、整備を始めた。私の友人の同僚と見えた。

イライラしている様子を見て、今日は腹の虫の居所が悪いのだろうか、それとも何か問題でも発生したのだろうか、と私は不安になった。やがて私の友人がやってきて、あの男性を指さした。

「彼は安全面の担当者だ。あだ名はブルギバ(チュニジア初代大統領)だ。なぜならクレイジーな男だから」

なんだ、ただクレイジーなだけだった、と私は安心した。

苦い文学

フィッシュ

日本の航空会社と外国の航空会社が共同運行するコードシェア便に乗っていると、食事の時間がやってきた。外国人男性の客室乗務員がワゴンを押しながらやってくる。

前の席でこう聞いている。「オムレット・オア・サワー#?%$%#?」

飛行機でのこの食事の選択の英語を聞き取れるかどうかが、旅の成否を決めるといって良い。

「サワーなんとか」とはいったいなんだろうか。酸っぱい肉料理というと、酢豚しか思い浮かばなかった。

客室乗務員が私たちのところにやってきた。私たちというのは、私と年配の夫婦だ。

「オムレット・オア・サワー#?%$%#?」

私たちは聞き取れずポカーンとしている。

「オムレット・オア・サワー#?%$%#?」

すると年配の女性が気がついた。

「さわら信田焼きだ」

日本人の多いコードシェア便だから、この男性客室乗務員は「サワラシノダヤキ」を一生懸命おぼえたのだろう。だが、私たちはそもそも彼が「さわら」という言葉を発すること自体予期していなかったのだ。とはいえ、彼の努力は讃えられてもいいと思う。

「オムレット・オア・サワラシノダヤキ?」ともう一度彼が私に聞いた。

「オムレット」と私は答えた。

苦い文学

宇宙食

日本のテレビ、新聞、出版に関わるメディア関係者のみなさんへ

私たち「実現しよう SDGs ワールドの会」は、国連の示した SDGs 17の目標の推進のための活動している組織です。とくに2番目の目標「飢餓をゼロに」は、人口の増加により、将来的なタンパク質不足と飢餓が予測される今、もっとも強調されるべき問題だと考え、多様な活動を行っています。

現在のメディアにおいて、私たちが非科学的だと憂慮しているのは「宇宙人」という用語の使用です。というのも、メディアのみなさんがこの語を無責任に使用することで、「宇宙人」なるものが存在するとの先入観が植え付けられ、将来の重要なタンパク質源を失うのではないかと、私たちは危惧しているからです。

先月、アメリカの大手メディア CNN が報じたところによると、米空軍元将校が「高度な技術を持った非人間パイロットの遺体を米政府が保有している」と証言したということであります。

ことの真偽はさておき、アメリカの先進的なメディアはすでに「宇宙人」などと呼ばずに「非人間」という用語をしっかり使っています。日本のメディアもこれにならうべきときがきたと私たちは考えています。

といいますのも、もし「牛」が「牧場人」と呼ばれていたら、みなさんは食べるでしょうか。これを焼き肉にしたり、挽肉にしてハンバーグにするでしょうか。

「宇宙人」でも同じことが起きるのです。メディアが「宇宙人」と呼ぶことで、私たちの食卓から、「宇宙カルビ」、「宇宙角煮」、「宇宙チャーシュー」、「宇宙漬け丼」、「宇宙カマ焼き」といった重要なタンパク質が消えてしまうのです。

こうした事態を避けるためにも、メディアのみなさんには、SDGs 実現のために科学的に正しい報道・出版活動をお願いする次第です。

苦い文学

イヌテリジェント・デザイン

夕方涼しくなったので公園でぼうっとしていたら、散歩に連れられてきたイヌたちの会話が聞こえてきた(最近こういうことがよく起こるのだ)。

毛並みのいいの「おい、今日、とんでもない話を聞いたんだ。俺たちの祖先がなんとオオカミなんだってよ」

背の低い茶色の「誰がそんなことを言ってるんだ。あんな野蛮な生物から我々が生まれたなど」

白くてフサフサしたの「まったくだ」

モジャモジャの「いや、それは科学的には証明されていることだ。我々はみなオオカミから生まれたのだ」

イヌたち「(一斉にうなり吠える)」

毛並みのいいの「そんなことあるわけない。我々を作ったのは神だ」

白くてフサフサしたの「まったくだ」

モジャモジャの「いや、でも、我々とオオカミは共通点がいくつもある……」

イヌたち「(一斉にうなり吠える)」

背の低い茶色の「いいか、たとえ、我々がオオカミから生まれたとしても、我々をオオカミとは異なる優れた生き物にしたのは神なのだ」

白くてフサフサしたの「まったくだ」

モジャモジャの「では、その神というのはなんなのだ。我々をこのように作りあげた神とは?」

毛並みのいいの「神は神だ。イヌがイヌ、オオカミがオオカミであるのと同じだ」

モジャモジャの「科学者たちはこうも言っている。我々をデザインしたのは、人間だと」

毛並みのいいの「人間だと! 2本足でしか歩けず、自分の尻の舐めかたも知らないあのケダモノが?」

イヌたちは一斉に大笑いを始め、それは、飼い主たちがリードを引っ張って、犬の集会を解散させるまで続いたのであった。