音楽

Friday I’m in Love

「Friday I’m in Love」は、イギリスのバンド The Cure が 1992 年に発表した曲だ。バンドの代表曲というばかりでなく、この時代のロックを象徴する一曲といっていいほどの名曲だ。

一聴すると、金曜日からの週末のウキウキした恋の歌という印象を与える。だが、専門的に見ると、ことはそう簡単ではないらしい。この度、英語学者、詩人、文芸評論家、音楽研究家などの専門家が一堂に会し、この曲の歌詞について徹底的に討論をするシンポジウムが開催された。

意外で、そして面白いことに、「Friday I’m in Love」というタイトル自体からしてそもそも大きな問題を孕んでいるというのだ。どうしてかというと、「Friday」の文法的な役割が不明確なのだという。つまり、この「Friday」は、目的語としても(「私は金曜日を愛する」)、時の副詞としても(「金曜日に私は愛する」)、トピックとしても(「金曜日は私は愛する」)、呼びかけとしても(「金曜日よ、私は愛する」)、あるいはそのどれにも解釈できる要素として、読めるのだそうだ。

シンポジウムでは、このタイトルばかりでなく、歌詞の一節「It’s Friday, I’m in love」についても議論された。また、英語史やドイツ語やデンマーク語などの例も引き合いに出されるなど高度に専門的な内容であった。私にはとても面白かった。

とはいえ、このシンポジウムには成功とは言い難い面もあった。というのも、開催されたのが金曜のお昼からであったため、夕方になるにつれて専門家たちはみなソワソワし始め、そのうちみんな消えてしまったからだ。開催するならば、火曜日か水曜日がよかったのではないか。

ライブ

Homecomings@EX THEATER ROPPONGI

たぶんバカなのだろう私は、先のことはあまり考えずに予定を入れてしまう。そんなわけで 12 月に入って 3 回もライブに行くことになってしまった。その 3 回目が今日の Homecomings だ。

全席指定で、私の席は真正面の真ん中あたりで悪くはない。

Homecomings は曲もいいが、ギターの響きと全体の音形に独自のスタイルがある。演奏が始まると、私は座りながらときおり目を瞑って聴く。激しい音が四方から体に入ってきて、目に見えるなにかではなく、それ以前の未分化の感触を生み出す。

「好きに立ったり座ったりしてください」というが、初めはほとんど立つ人はいなかった。ライブが進むにつれて少しずつ立つ人が増える。いつもスタンディングなので、私も座ったままなのが物足りなくなってきた。3 分の 1 ほどの観客が立って体を揺すっている。たっぷり一曲ぶん逡巡した末、私は立った。

音は全身で感じるにかぎる。それにステージもずっと近くクリアに見えた。私は立ったまま、音楽を聴き、激しく高揚を迎える部分にさしかかると目を瞑った。

この日は、ベースの人がこのライブを最後に「卒業」するということが告知されていた。途中の MC で、他のメンバーとベースの人とのやりとりがあったとき、会場に暖かい拍手が鳴り響いた。

そのとき私は無意識のうちに目を瞑っていた。

音が大きくなると自然に目が閉じる。バカの誹りは免れまい。

ライブ

mekakushe と宇宙ネコ子

宇宙ネコ子が mekakushe とライブをするというので行ってみた。タイトルは「mekakushe × WALL&WALL pre. Hug Light vol.4」。会場は表参道のWALL&WALL。

宇宙ネコ子は先月に引き続き 2 度目で、そのせいかギターの音がずっとよく聞こえた。ギターの音色にどこか猛々しさがあって、これが音楽に硬さを与えている。そして、轟音の中でわざと外す演奏と低音の咆哮が、駆り立てるように響く。

こういうギターに浸れるだけで十分で、私は聴くような聴かないような感じで、目を瞑って時間を過ごした。こんな感覚は、大きい会場では味わえないものだと思う。

それに、大きい会場のライブはたいていチケットが高いので、元を取ろうという意識が邪魔して、こんなふうに音を無駄に楽しむことはできない。

mekakushe は私は初めて聴いたが、カオスな音が鳴り続ける宇宙ネコ子とは対照的に、きっちりとした作りのポップだった。今回はバンドセットで、その演奏がそうとうに複雑なのに感心した。特に後半の 3 曲(「わたしだけのポラリス」「恋のレトロニム」「おやすみベージュ」)は構成もメロディもよく、圧巻であった。

ところで、ライブの前、私は飲み物を買いにコンビニに入った。見たことのある若い女性が 2 人いて、誰かと思えば、宇宙ネコ子の人だった。顔の写真は出さない方針のようなので、ライブに行ったことのある人でなければわかるまい。

ライブ

ザ・シスターズハイ+ネコニスズ

ザ・シスターズハイとネコニスズの「ツーマンライブ」が新代田 FEVER で開催された。これは、ザ・シスターズハイの渡邉九歳(Vo/Gt)とネコニスズの舘野忠臣が似ているということで、「ネタ」という曲の MV に舘野忠臣が出演したのがきっかけということらしい。ライブとしては「君の嫌いに、嫌われたい tour 2025」のファイナルということだ。

芸人が「対バン」なわけだが、これが本当にその通りだった。つまり、最初の 15 分ぐらいネタをやるだけ、というものではなく、前半の 50 分まるまるネコニスズの時間という「ストロング・スタイル」だ。私はネコニスズの単独も見たいと思っていたので、うってつけだ。

もっとも、ネタそのものは 2 本ほどで、あとは若者ばかりの会場で、おじさん「芸人が苦しむさま」を見せる、というおそらく単独でも見られないような時間で、これはこれで面白かった。明日の R-1 の一回戦に出るというヤマゲンの初おろしのネタや、その前の年の「赤ちゃん」の R-1 ネタの披露に及んだのも楽しい。

その後のザ・シスターズハイは、曲もしっかりしているし、演奏も派手なので、聴いていて飽きない。客は若い人ばかりで、演奏が始まるや、片手を上げてノリ出した。みんな楽しそうだ。年齢的に私は少し場違いな気もしたが、結局のところ、音楽は年齢を超えた。「ネタ」も良い曲だ。

プロの芸人の後ということで、MC で話すのも緊張するとのことだったが、渡邉九歳の話が印象に残ったので記しておく。開演前に舘野忠臣とタバコを吸っているときに M-1 の敗者復活戦のことを聞いたのだという。すると「食いぎみに『勝ちたい』と返事してきた。自分も『売れたい』と口に出していうから、大人になってもこういうふうにはっきりと言えるのはかっこいい」と。

こんな言葉からもわかるように、ザ・シスターズハイは陽性のバンドだ。それにしても、私には、はっきりと「したい」と言えることなどあるかな、とまるで若者のように考えた。

ライブ

noodles と宇宙ネコ子@新宿 red cloth

東新宿で、noodles と宇宙ネコ子のツーマンライブが行われるというので行ってみた。宇宙ネコ子が目当てだ。

宇宙ネコ子は、kano(ヴォーカルとギター)とねむこ(ギター)の女性 2 人のユニットで、元 Twitter(現 X)では物悲しいことを言っていたりするので、暗い人たちかと思いきや、音楽は洗練されている。だが、ライブに行ったら、そればかりでなく、ノイズ系であることもわかった。

メロディは、1980 年代のイギリスのインディー系を彷彿とさせるが、私はなんでもこの時代を彷彿としてしまうのでわからない。ねむこのギターの作るノイズとフレーズがその感じを高めている。サポートのドラムとベースもよかった。現在新しいアルバムを製作中とのことで、新曲も演奏した。

2 人とも SNS などでは顔を見せないので、どんな人たちなのかわからないが、ライブでは普通にしていた。2 人を見たい人はライブに行ったらいいだろう。

noodles は私はよく知らなかったが、1991 年結成で、今は女性 2 人(ギターとベース)だ。ドラムのサポートありのトリオ編成で、この最小のバンド形態の演奏を、生で間近に見て、かっこよさを改めて認識した。

音楽

Message in a Bottle

まるで漂流者のように私は街をさまよい、「孤独のメッセージ」という一風変わった名の焼肉屋に逢着した。

客は私だけ。孤独な私にうってつけの店だ。椅子に座り、店員が出てくるのを待つが誰も出てこない。誰もいないのだろうか。絶望する前に出てきてほしい。

私は注文をしたい。店の誰かに注文をしたい。誰かに私の注文を、誰かに私の注文を、誰かに私の注文を取ってほしい。

私はテーブルの上に置かれた紙と鉛筆に気がついた。そして空いたボトルがあるのにも。「カルビ1人前」と書いて、空き瓶の中に入れる。私は、その瓶を店の奥の方に転がした……

I hope that someone gets my
I hope that someone gets my
I hope that someone gets my
Message in a bottle, yeah
Message in a bottle, yeah

注文を書いてから、私は眠ってしまったようだ。ハッと目を覚ますと、そこには信じられない光景が……

テーブルの上に数えきれないほどの……

カルビ・イン・ア・ツボ yeah
カルビ・イン・ア・ツボ oh
カルビ・イン・ア・ツボ yeah

おすすめは壺カルビ
おすすめは壺カルビ
おすすめは壺カルビ
おすすめは壺カルビ(繰り返してフェイドアウト)

ライブ

ライブの撮影

YouTube などで外国のライブ動画を見ていると、観客はみんな携帯を掲げて撮影をしている。というか、その見ている映像そのものが、非公式のものだったりする。つまり、観客が自分の撮影したものをアップロードしているのだ。

しかし、日本では普通、路上ライブならまだしも、会場でちゃんとお金を払って見るライブでは撮影は禁止されている。これは著作権侵害や違法アップロードを防ぐためのようだが、もっと自由にしてもいいのではないか、という声もある。

私はどちらかというと撮影禁止に賛成だ。といっても、権利上の問題についていっているのではなく、撮影するのは、演奏を楽しむのに邪魔だからだ。音楽を聴くためにやってきたのに、撮影可となると、記録に残そうとか、全部収録して YouTube にあげてやろうとか、雑念が湧いてくる。ならばはじめから撮影不可のほうが余計なことを考えずに済むというものだ。それに、携帯を手に持ってずっと掲げているのも、余計な苦役だ。

そんなわけで私は撮影禁止のままでいいと思っているが、この前、あるライブで演奏者がこんなことを言った。

「ステージと客席は分けられているけど、本当はこんな仕切りなしに、みんな友人として接したい。ライブ撮影だって、別に禁止したくない。誰でも自由に撮っていいと思う。ただ、友人を撮影するにも相手を尊重して撮影する。それと同じように、友人として撮影するという気持ちがあればいいと思う」

私は「なら、しよう」と思ったが、こんなことを言われると逆にやりにくくなるのか、周りでは誰も撮影していなかった。私もやめた。

ライブ

Homecomings @ 渋谷 CLUB QUATTRO

Homecomings のライブはこれで4度目だが、今回はワンマンではなく、ゲストのバンドが雪国と ART-SCHOOL の2つ。あまりよく考えていなかったが、それぞれしっかり演奏したので、4時間という長時間のライブだった。開演1時間前の5時から立っているので、5時間立ちっぱなしということになる。ギターの人が「自分も5時から立ちっぱなしなので、気持ちは同じです」というようなことを言っていた。

ワンマンやフェスが多くなって、対バンライブをする機会がなくなってきたので、今回のようなツアー(「many shapes, many echoes」)を企画したとのこと。私はどちらのゲストバンドも楽しめたので、足は棒のようになったが長い感じはしなかった。相変わらず Homecomings の曲と演奏はどこか物語性があって聞きやすく、時間を忘れさせた。

ところで、ここ数日、私は YouTube で元ポリスのスチュアート・コープランドのドラム関係の動画をいくつも見ていて、ドラム聴きたい欲が高まっていた。

ドラムの演奏はバンドのカラーやドラマーの個性も関係があるから良し悪しではないのだが、最初に演奏した雪国のドラムはそんなに派手に叩くスタイルではなかったので、私の欲は満たされなかった。

だが、ART-SCHOOL のドラムはまさに私が聞きたかったタイプの演奏だった。手数も多く、欲しいところでしっかり連打してくれる。しかも、かっこいいのだ。これでドラムに対する渇きがたちまち癒やされた。これからは喉が渇いたら ART-SCHOOL を聞こうと思う。

旅・観察

トーマス&ブライアン

ベルリンの街を歩いていたら、大きな本屋があった。入って探索していると、トーマス・マンの特設コーナーがある。生誕150周年ということらしい。『魔の山』や『ブッデンブローク』などの長編の中に “Der Tod in Venedig” のペーパーバックを見つけた。『ヴェニスに死す』だ。

短い小説だし、翻訳でも読んでいるので、買おうかと思ったが、私のなきに等しいドイツ語力を慎重に検討した上で、結局やめた。これほどの小説ならば、日本でも容易に買えるはずだし、そもそも読みもしない本を買うのはバカげている。

本屋を出て、再び街歩きに出る。首都ということもあるのだろうが、あちこちでイベントやコンサートの広告を目にする。知らないミュージシャンも多いが、ジェスロ・タルやデュランデュランなど、知ってる名前にでくわしたりすると楽しい。

ぶらぶら歩いていると、ショーウィンドーの中の大きなディスプレイに見覚えのある顔が映し出された。ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンだ。まさかベルリンでライブでもするのだろうか? しかし、認知症で引退したと聞いたが……と一瞬思ったが、“Tod(死)” の一語でニュース速報だということに気がついた。

……にしても、やっぱり “Der Tod in Venedig” 買っとくかな、旅の思い出になるし……。

ライブ

さとうもか & Mom@月見ル君想フ

5月6日、青山の「月見ル君想フ」という変な名前の会場で、さとうもかと Mom のツーマンライブがあった。双方ともギターの弾き語りだ。

はじめに出てきた Mom は若いミュージシャンで、私はさとうもかの「いとこだったら(feat.Mom)」に参加していることぐらいしか知らなかったが、声がとてもよかった。3月に出たばかりのアルバムの曲が中心で、いい曲も多い。

ニコニコして、独特の雰囲気があるので、なんだかもう中学生みたいだと思ったが、MC で「ゴールデン・ウィーク最終日なので髪型を G と W にしてきた」などと言うのでますます似てきた。

もう中は別として、音楽の雰囲気が何かを思い出させるな……とぼんやり思っていたが、最後になって FISHMANS が浮かんだ。もっとも、第一印象なので違うかもしれない。

Mom のギターは、ときに激しくときに繊細なものだった。いっぽう、さとうもかのほうはむしろギターを叩くタイプの弾き方だ。けっこう弾き間違いもしていたが、あまり欠点には感じられない。スタイルをしっかり確立しているので、多少のことでは揺らがないのだろう。

ライブの最後は二人での「いとこだったら(feat.Mom)」で、これもよかった。