研究活動

トランプのせい

アメリカで学会があるという知らせを耳にしたので、締め切り当日の1月8日、口頭発表に応募した。2月末に採択通知が来た。アメリカに行くのだ。

だが、状況は、私が応募した1月初めとは大きく変わっていた。トランプが大統領に就任したのだ。アメリカに入国する外国人が不当に拘留されたとか、追い返されたというニュースが出ていた。SNS やネットに反アメリカ的なことを書いていたせいで入国拒否された、などという人もいた。

私自身が入国時にトラブルになる可能性はないとは思うものの、誰であろうとそれがゼロとは言い切れないのが、現状のようだった。

また、こんなことを言う人もいた。「今のアメリカに旅行に行くことは、経済的にトランプ政権を支えることになるから、渡航を控えてほしい」 私が行っても、はした金の円をばら撒く程度なので影響はゼロだ。にしても、考慮すべき意見だと思った。

いろいろ考えた末、私は行くのをやめた。そのかわりオンラインで発表することにした。学会はそういう選択肢も用意してくれていたのだ。

さて、現地の時間に合わせると、発表は朝の6時だ。私は午前3時に起きて、発表を終えた。デキからいうと、惨憺たるものだった。私にとって、オンライン発表を英語でするのは初めての経験だった。会場の雰囲気がわからないので、途中でフワフワして、何を話しているのかわからなくなった。質疑応答でも、ありがたいことに質問してくれた人がいたが、オンラインのため、よく聞き取れず、的外れな答えをしたようだった。

もしも、現地で発表していたら、と思わずにはいられない。トランプ政権の弊害といえるだろう。

風刺・戯文

アメリカ車を買いなさい

日本人というのはなんてずるいのだろうか。私たちアメリカ人は日本車をたくさん買っているのに、日本人ときたらアメリカの自動車をまったく買わないのだ。私たちがこの日本の態度を非難すると、日本人どもは決まってこういうのだ。

「アメリカさんの車はとっても素晴らしいのですが、なにせ私たちの国は小さいもので、ほら、道なんか狭いでしょう! しかも、手前どもはみな貧乏でして、アメリカさんのゴージャスな車はちょっと分不相応というわけで……」

アジアの黄色い猿どもがなにをいうか。私たちはとうとう堪忍袋の緒が切れた。そんなにいうならば、お前たちが偉大なアメリカから奪い取ったものを倍にして取り返してやろうじゃないか。

私たちは日本人に対してドーンと関税をかけてやった。原爆級のやつだ。さすがに連中ふるえあがって、すがりついてきた。「どうかお許しください」と猿顔の首相が泣きつく。「日本政府が責任を持ってアメリカ様の車を買いますから、どうかここはひらにギブミーチョコレート」 日の丸も星条旗には敵わないってわけ。

「これでまたひとつアメリカが偉大になったわい」と私たちは勝って MAGA キャップの緒をしめる。ところが、その日から、とんでもないことが始まった。例の日本の首相が、私たちのアメリカ車と写った無様な写真を毎日、ネットに投稿し出したのだ。そればかりじゃない、日本政府が購入したアメリカ車をそこらの貧民にロハで配りでもしたのか、黄色いつり目のチビどもとアメリカ車の写真が世界中にばら撒かれてる。

いやはやこんなネガティブ・キャンペーンってある? 世界中でアメリカ車の販売数が冷え込み出した、しかも急激に!

これはヤバい、と私たちは今、アメリカ車を買うなと日本人にマジで抗議してる。

風刺・戯文

新しい英和辞書

言葉は常に変わっています。新しい意味や新しい使い方が次から次へと誕生しています。私たちは言葉がわからない時に辞書で調べますが、そこに記された情報はすでに古く、もうない場合すらあります。辞書を引いている間にも、世界は変わっているのです。

だからこそ、新しい辞書が重要です。この度、私たちが新しい現代アメリカ英和辞書を出版したのも、日本の英語学習者の皆さんに、今現在使われている本当の英語を学んでほしいからです。

例えば、truth という言葉の意味を調べてみましょう。従来の辞書ではこんなふうに書かれているはずです。

truth【名詞】(複~s) 真実、事実、本当のこと

ですが、私たちの辞書では現代アメリカ口語の最新の情報を盛り込んでありますから、そんな時代遅れなことは書きません。ご覧ください。

truth 【名詞】(複~s) 嘘、でたらめ

さらに「偽造の、嘘の」を意味する fake を新しい辞書ではこう定義しています。

fake【形容詞】真実の、事実の、本当の
   例文:it’s fake news!「これは本当のニュースです!」

ぜひこの新しい『Clown 英和辞書』をご活用ください!
(『Crown 英和辞書』とのお間違えにご注意ください)

風刺・戯文

死せる魂

アメリカの社会保障番号を管理する社会保障局が、実際には生きている移民6千人以上を、勝手に法的に「死亡」扱いにしていたそうだ。こうすると、移民は身分証明ができなくなるため、就職もできないし、家を借りたり、銀行に口座を作ったりすることができなくなる。トランプ流移民追い出し作戦のひとつだという。

このニュースを聞いて、おそらく世界中のほとんどの人がゴーゴリの『死せる魂』を思い出したことと思う。

これは、記録上は生きていることになっているが、実際は死んでいる農奴を買い取ることで、富裕層に加わることができる、というビジネス戦略が書かれた世界的ベストセラーだ。

全ビジネスパーソン必携と呼ばれるこの書を読んで以来、私は日本でもなんとかこのスキームでひと儲けしたいと考えていた。だが、残念ながら日本に農奴がいないせいで、なかなか着手できずにいた。ところが、このニュースに触れるや、天啓の如くビジネス・アイディアが閃いたのであった。

あまり詳しく書くことはできないが、「死者にはビザの必要がない」「死者は人権とも労災とも賃金とも無縁」「役所の手続きは賄賂でなんとかなる」といえばご想像つくだろうか。

もちろん労働力不足に悩む日本の企業様にとって文句なしの朗報だ。「ご好評につき、海外から死者大量入荷!」 そんな宣伝文句が今からちらついている。

風刺・戯文

トランプの国

トランプ大統領の関税戦争が、かえってアメリカ国内の物価上昇を招き、国民の生活を脅かしています。「毎年行っていた海外旅行にはもういけなくなりました」と、アメリカ市民の一人は語ります。「外食など贅沢です。このままではアメリカはメチャクチャになってしまいます」

関税戦争により、打撃を受けるのはアメリカ以外の国々も同じです。そこで、関税に対抗するために、国境を超えた市民同士の連帯を作ろうという動きがアメリカで生まれています。世界各国で連帯を訴え続けるアメリカ全国市民生活協会の代表、トーマス・ミラーさんが、今日、来日しました。

「民主主義という価値観を共有する日本の市民のみなさんと力を合わせれば、関税を食い止めることができるはずです」と期待を語るミラーさん。ですが、彼を待ち受けていたのは、予想以上の日本人の生活の貧しさでした。

「欧米では時給が 1 万円、年収 3000 万円以下が貧困層、ホームレスの年収が 1200 万円ですが……これでは日本の国民のほとんどが極貧ではないですか。日本では、もうかなり前からトランプが現れて、国をメチャクチャにしていたとしか考えられません」

ミラーさんは「トランプ先進国に用はない」とすぐさま滞在を切り上げて、他の国に向けて出発しました。

風刺・戯文

The pre-fucking-sident

“fucking” を辞書で調べると、「ひどい、いやな」などを意味する「無意味な強意語」だということだ。以前、何かで読んだのだが、この “fucking” の特徴は、どこにでも現れるということなのだそうだ。

「Where’s my fucking phone?!」「Are you fucking serious?」のように名詞や形容詞の前に現れるし、「She fucking ignored me.」のように動詞の前にも現れる。また副詞の前だっていい(「He came fucking out of nowhere!」)し、「No, we fucking won’t.」のように助動詞の前だって平気だ。

しかも、単語の中にだって入り込んでしまうというのだ(例:abso-fucking-lutly、un-fucking-believable、fan-fucking-tastic)。

これほど自由に動くことのできる神出鬼没の fucking なのだから、ついに文から飛び出して、大統領になっちゃったとしても、とくに驚きはない。

風刺・戯文

トランプ関税クライシス

それでは経済ニュースです。

(トランプ大統領の映像)トランプ大統領が発表した「相互関税」で世界中がパニック状態に陥っています。

(株式市場の映像)実際に関税が発動する事態になれば、世界的な景気後退が予測されるとあって、金融市場はすでに大混乱。

(自動車輸送船に向かう輸出車の列の映像)日本の経済界も不安とともに事態を見守っています。トランプ関税により、日本の主要産業である自動車関連企業が大きな打撃を受けるからです。

(エコノミスト登場)「日本の自動車産業にとってアメリカは大きなマーケットですから、関税により大幅な減収となるのは間違いありません。これは自動車産業だけでなく、日本社会全体にとって危機的状況です」

(都内の町工場の情景)そんななか———ここは東京足立区綾瀬にある工場。混迷する経済をよそに工場はフル操業を続けています。

(作業服の社長が語る)「ええ、もういくら生産しても追っつかない状況が続いています」

(記者、驚く)「これがみんなアメリカに輸出されるのですか?」

(社長)「そうです」

この企業が製造しているのはなんと関税。アメリカではトランプ大統領があちこちに関税をかけすぎたせいで、深刻な関税不足となり、それを補うために、日本や中国から輸入しているとのことです。

(アメリカ人のバイヤーが関税の味見をする様子)「うん、素晴らしい品質です。全部ください」

(社長がバイヤーと握手する様子)あっという間に商談がまとまりました。

日本の関税は、ヘルシーなイメージから、今後もますますアメリカでの需要が高まる見通しです。

風刺・戯文

国外追放

【ザンゲー通信社:記者の目———独自の視点でニュースを解説】
アメリカのトランプ政権が、約 53 万人の中南米出身の移民の滞在資格を取り消し、合法的な滞在資格がなければ、国外追放するとのことです。

この 53 万人のうちどれだけが強制送還の対象となるかわかりませんが、これがトランプさんが追放したい移民の全部というわけではありません。アメリカの「不法移民」は 1100 万人以上いるということですから、なかなか大変です。

2024 年のアメリカの強制送還数は 70 万人だそうです。トランプ政権になってから、毎月の強制送還数は減っているということですから、これが今後ペースアップするといっても、いきなり 2 倍 3 倍になるとは考えられません。果たしてトランプさん、任期中に片付けられるのでしょうか。

しかも、強制送還というのは非常に手間と労力がかかります。トランプ政権には法手続きの問題はいっさいありませんから、これは無視できるとしても、「不法移民」の逮捕の問題や、移送までの収容設備と移送手段の確保はそう簡単ではありません。しかも、これらのすべてに莫大な経費がかかります。

強制送還は思ったよりも簡単ではないんです。そこで、アメリカでは「むしろ、逆にトランプ大統領を国外追放したほうが安上がりなのでは」などと真剣に議論されているそうです。

我が国に FedEx で送られてこないことを願うばかりです。

風刺・戯文

真実を報じないレストラン

久しぶりに街に出たので、何回か行ったことのあるハンバーグの店に行ってお昼を食べることにした。店の前に行くと、人が集まって騒然としているのが目に入った。近寄って人垣越しに見ると、ひとりの男が店の前に立ち塞がるように立ち、叫んでいるのだった。

「このレストランはとんでもない店だ!」 そう男は怒鳴った。「客に偏ったものを食べさせているぞ! みなさん! 見てください! これはこのレストランが調理しない料理です!」

男は手に持っていたボードを掲げた。それは山菜そばの写真だった。「このレストランの偏向調理を許すな!」

そのとき、警察官が数名駆けつけてきた。警察官たちが近づくと、男はよせばいいのにボードを投げつけた。たちまち男は組み伏せられ、そのままどこかに連れて行かれた。

店の前は再び日常に戻った。集まっていた人々も立ち去っていったが、何人かは私と同じように店に入った。私たちはなにごともなかったかのようにハンバーグを食べた。誰かが「山菜そばなら自分で作ればいいのに」と言った。それから別の声が聞こえた。「あの男、今頃、取調室で山菜そばを食べているかもしれないぞ!」 さらに誰かがこう言った。「そういえば、あの顔、なんとなく山菜そばに似ていたような……」

私はこれらの言葉に笑いを堪えるのに苦労したが、このとき私たちは知らなかったのだ。やがてあらゆる SNS が「#山菜そば」で埋め尽くされることになろうとは。

風刺・戯文

三日会わざれば

【ザンゲー通信社:記者の目】
世界中がアメリカのトランプ大統領の言動に振り回されています。なにしろ言うことがコロコロ変わるのですから当然です。

本紙でもすでに報じたように、先週、トランプさんは、ウクライナのゼレンスキー大統領のことを「選挙を経ていない独裁者だ」と非難しました。

ところが、昨日、記者とのこんなやりとりが飛び込んできました。

記者「まだゼレンスキー氏を独裁者だと思っていますか?」
トランプ大統領「私がそんなこと言いましたか? 信じられません。で、次の質問は?」

この報道に触れたとき、私は思わず目をこすりました。これを刮目と言うのですが、まさに「トランプ三日会わざれば刮目して見よ」です。

このことから、私があらためて思ったのは、トランプさんこそ、インターネット時代の政治家だということです。なにしろ、いつの間にか内容が更新されているのですから。

ですので、これからトランプ大統領について報じるときは、私たち記者は「トランプ大統領(最終閲覧日:2025年2月28日)」とする必要がありそうです。