風刺・戯文

新しい英和辞書

言葉は常に変わっています。新しい意味や新しい使い方が次から次へと誕生しています。私たちは言葉がわからない時に辞書で調べますが、そこに記された情報はすでに古く、もうない場合すらあります。辞書を引いている間にも、世界は変わっているのです。

だからこそ、新しい辞書が重要です。この度、私たちが新しい現代アメリカ英和辞書を出版したのも、日本の英語学習者の皆さんに、今現在使われている本当の英語を学んでほしいからです。

例えば、truth という言葉の意味を調べてみましょう。従来の辞書ではこんなふうに書かれているはずです。

truth【名詞】(複~s) 真実、事実、本当のこと

ですが、私たちの辞書では現代アメリカ口語の最新の情報を盛り込んでありますから、そんな時代遅れなことは書きません。ご覧ください。

truth 【名詞】(複~s) 嘘、でたらめ

さらに「偽造の、嘘の」を意味する fake を新しい辞書ではこう定義しています。

fake【形容詞】真実の、事実の、本当の
   例文:it’s fake news!「これは本当のニュースです!」

ぜひこの新しい『Clown 英和辞書』をご活用ください!
(『Crown 英和辞書』とのお間違えにご注意ください)

風刺・戯文

The pre-fucking-sident

“fucking” を辞書で調べると、「ひどい、いやな」などを意味する「無意味な強意語」だということだ。以前、何かで読んだのだが、この “fucking” の特徴は、どこにでも現れるということなのだそうだ。

「Where’s my fucking phone?!」「Are you fucking serious?」のように名詞や形容詞の前に現れるし、「She fucking ignored me.」のように動詞の前にも現れる。また副詞の前だっていい(「He came fucking out of nowhere!」)し、「No, we fucking won’t.」のように助動詞の前だって平気だ。

しかも、単語の中にだって入り込んでしまうというのだ(例:abso-fucking-lutly、un-fucking-believable、fan-fucking-tastic)。

これほど自由に動くことのできる神出鬼没の fucking なのだから、ついに文から飛び出して、大統領になっちゃったとしても、とくに驚きはない。

風刺・戯文

Finds You Well

Dear my friend,

I hope this email finds you well.

If it does not find you, it will follow you until it does. For it finds you well.

You can go somewhere. You can find a safe place to hide. I am sure you will. But you can’t escape. This email has super nice eyes, ears, and nose. It sees wherever you hide, well.

You may take a bullet train, a plane, or any other hi-tech vehicle, thinking you can escape.

Too bad you don’t know that this email is the fastest. It goes everywhere in an instant.

No, don’t escape. Don’t be afraid. Just stay where you are. It won’t hurt you or kill you. It only comes to find you well.

It doesn’t care if you are well or not. Even if you’re dead and are buried, it finds you, certainly well.

All the best,
The Sender

風刺・戯文

文字の腐敗

LGBTQ の TQ だと? なんだ、バカバカしい。性自認の多様性など、百害あって一利なしだ。男と女で十分だし、それ以外に何が必要だろうか。さっそく TQ は削除だ。

だが、消すのは TQ だけで果たして十分だろうか? LGB だって危険だぞ! 男も女も平等なのだから、LGB だけ特別扱いするなんて、バッカらしい。こいつらも消そう。

ところで A はどうだろうか? B の隣にあるから、B に感染している可能性が大いにある(恐ろしいことにワクチンなどないのだ!)。邪悪な多様性の芽は早いうちに摘まねばならない! 削除だ。だが、とすると C も危険では? あっ、よくよく考えてみれば D と E と F も、 B と G に挟まれているではないか!

ぐうう! 淫らなやつらめ、この私を騙そうったってそうはいかない。削除だ!

待て、待て、それどころではない。G から Q まで全部怪しいぞ。腐ったみかんが全部をダメにするように、腐った文字もどんどん悪を繁殖させてしまうのだ! ほら、R だって、S だって! その次だって! もう手遅れかもしれない……これは大鉈を振るうしかないぞ!

……そして、大統領は新たな大統領令に署名をした。その大統領令にはただこう書かれているだけだった。

ZZZZZZ ZZZ ZZZZZZZZ ZZZZ ZZZZZZZ ZZZ ZZZ…………

風刺・戯文

不死の男

長い間、彼は自分の命をないがしろにしてきた。いつ死んでもいいと思っていたのだ。天才は早く死ぬものさ、そんなふうにうそぶいて、命にしがみつく小市民たちを嘲笑っていた。

だが、彼にも、自分が天才でもなんでもなく、それどころか、小市民以下ですらあることに気づかされるときが来た。そのとき以来、彼のたったひとつの希望は、長生きすることになった。あらゆることに負け続けたこの負け犬は、寿命の長さで勝つという、人生のラストチャンスに賭けたのだった。

彼は長生き健康法ならなんでも実践した。命を伸ばすのに益ありと聞けば、どんな遠くにも足を運んだ。どんなまずいものでも食べた。どんなサプリメントも、どんな薬品も、彼が試さないものはなかった。長生きに関するどんな些細な情報も、彼の研ぎ澄まされた注意から逃れることはできなかった。

あるとき、街を歩いていた彼の耳に「俺はインモータル……」という言葉が飛び込んできた。長生きのために英語の文献すら目を通していた彼はすぐに気がついた。「インモータル」とは不死のことだ。「俺は不死だと? これは究極の長生きじゃないか……そうだ、今この時代、不死が実現しても不思議ではない。俺も不死を目指す!」

彼は歩みを止め、その声がしたほうを振り向いた。青白い顔の痩せた男がいた。時代を超越した謎めいた雰囲気が漂っていた。「もしや、現代のサンジェルマン伯爵では?」 彼の心は高鳴った。

痩せた男は、そんな彼に気づかず、自分の隣に立つ連れに向かって言った。「そう、俺はいつも……胃もたれ」