苦い文学

ベルベル語に出会う(5)

私はいくつかの単語を尋ねてみた。すると S さんは、ひとつひとつ答えながら、「これは私の出身のターウジュート村ではこういう。でも、他の村では違う言い方をする」と説明してくれた。

「水はなんと言いますか」

「水は、アマーン。アルジェリアでもモロッコでも、どこのベルベル語でもこれは同じだ」

他の地域のベルベル語についても経験豊富なようだ。さらに、チュニジアのベルベル人の生活や考え方についても教えてもらった。

「たとえばあなたのようなよそ者がターウジュート村に行っても、誰も挨拶もしないよ。ましてや笑いかけたりなど絶対にしない。それが習慣なのだ」

「でも、ベルベル人同士なら笑ったりするでしょう」

「ベルベル人は笑わない。だからジョークも存在しない」

「ほんとかな」と思うが、チュニス暮らしの長い S さん自身は、笑わないわけではない。軽薄なところのない、落ち着いた男性だ。S さんこそまさに、ベルベル語の先生を頼むにふさわしい人のように思えた。

私たちは、調査の条件について簡単に取り決めをして、2 時間の「初顔合わせ」を終えた。明日から、念願のベルベル語の調査が始まるのだ。

(写真:カフェの風景)