風刺・戯文

地球温暖化のためにできること

【あほうの党党首からのメッセージ】
高齢化が我が国にもたらすのは、社会保障費の増大です。つまり、年金・医療・介護という三重の社会保障費が政府の財政を圧迫するのです。

このままでは、高齢者の暮らしが危うくなるだけでなく、現役世代の負担もますます重くなるばかりです。

しかも、我が国の将来を左右するこの未曾有の事態に対して、与党はいうもおろか野党までもが、ただ手を拱いているだけなのです。もう、こんな政治家たちに我が国は任せられません。

私たちあほうの党は、この問題に真剣に取り組み、ついに解決する方法を見つけました。それは、地球温暖化です。みなさん、地球温暖化というと、なにやら悪いことのように思ってはいませんか? 氷山が溶けたり、砂漠が広がったり……こんなのはぜんぜん他の国のことです。我が国には関係ありません。それどころか、我が国にとっては実は地球温暖化はいいことずくめなのです。

だって、地球温暖化により、我が国が常夏の国となるのですから。こうなると、もう冬などないのです。夜、外で寝たって平気なのです。暖かいのですから! だから、高齢者にはあれやこれやのホームはもう不要です。道端でのんびりお過ごしいただければいいのです。しかも、いい陽気ですから、心も軽くなります。気分も上々です。病気なんかすぐに治ってしまうでしょう。医療費削減です。年金だっていりません。空き缶を置いておけば、道ゆく人がお金を投げ入れてくれるのですから。そう、必要なのは社会保障費なんかじゃなくて、敬老の精神だったのです! 

どうですか。地球温暖化で医療も介護も年金も不要となりました。地球温暖化のためにできること、きっとたくさんあるはずです。私たちあほうの党と一緒にがんばってみませんか。

【お知らせ】
大晦日の夜、「地球温暖化チャレンジ」を実施します。プログラムは、「本当は楽しい地球温暖化」「燃えないごみを燃してみよう!」「裸で野宿で温暖化を先取り!」など盛りだくさん。奮ってご参加ください! *防寒具は各自ご用意ください。

風刺・戯文

無料ニュース勢

木鐸というのは、むかし中国で法令などを人民に触れて歩くときに鳴らした鈴のことで、ここから「社会の木鐸」という言葉が生まれた。これは、世の人々に警告を発し、正しい方向へ教え導く役割を担う報道機関や記者のことを指す言葉だ。

現代のネット上の報道は無料と有料の2種に分かれている。世界を知るための重要なニュースや、鋭い分析記事、深い評論・コラムなど、私たち民草を教導するような記事はまずまちがいなく有料だ。つまり、社会の木鐸も富裕層の耳にしか届かなくなってしまったのだ。

そして、無料ニュースはといえば、ほとんどが有名人の顔に関わるものだ。顔に違和感、顔に絶賛の声、顔に指摘、顔が物議……、ニュースにお金を払う余裕のなく、木鐸の音などついぞ聞いたことのない私たちにとっては、それでもう十分過ぎるほどだ。

ところが、最近、無料ニュース界に新たな動きが生まれた。中国のメディアが日本のために日本語で中国のニュースを無料で流してくれるようになったのだ。中国の古代遺跡の発掘、ウイグルの発展、人民を潤す善政の数々……「顔」のニュースに倦み疲れていた私たちにとってはまさに朗報。中国のメディアは、ケチな日本のメディアと比べてなんと太っ腹なのだろう。これも中国政府が後ろについているおかげだ。本場の木鐸は政府謹製でタダだったのだ。

私たち無料ニュース勢は、富裕層御用達の日本のメディアなどもう見捨てた。いずれ私たちは、日本のことを中国の報道機関を通じてだけ知るようになるだろう。そのとき、日本の首相がどんなに喚いたって、私たちには隣の国のことのように思えるだろう。

風刺・戯文

和ステナブル

世界でも日本人だけが、虫の音を味わいのある音として聞き取ることができるということは、古くから知られていますね。これは日本人だけが持つ特殊な脳の構造によるものなのだそうです。

日本人独特のこの脳の構造に、またまた世界でも稀な新たな現象が発生していることが、最近の研究で明らかになりました。日本人ならではの斥力です。

具体的な科学的プロセスは次のようなものです。

日本人が「外国人」と聞くと、脳内に斥力が生まれます。この斥力は脳内に位置する理性や思いやりを弾き飛ばそうとします。ですが、脳は頭蓋骨で保護されているから、実際には分離することはできません。すると、行き場を失った斥力が熱に変換され、日本人の脳内がカッカし始めのです。

脳は高温には耐えられませんから、熱を外に逃がそうとします。熱は、頭蓋骨から首を経て放出され、末梢部、つまり指先に流れ込みます。この熱によって指が自然に動き出すのです。もしこのとき、指の下にキーボードを置くと、タイピング運動と呼ばれる現象が観察されます。素晴らしいヘイトスピーチが X(元 Twitter)やヤフコメへと拡散されていくのです。

日本ならではのこの自然現象に関心をもったある科学者が、このプロセスを代替エネルギーとして使えないかと研究をはじめました。そして今日、ついに大規模な実証実験が都内で行われました。

広大なホールに、机と椅子とが並べられ、そのひとつひとつに日本人が着座しています。日本人の手元にはキーボードが置かれ、そのキーボードからはケーブルが伸びています。すべてのキーボードのケーブルは、ホールの中央の装置に集められ、その装置の上には豆電球がひとつ置いてあります。

実験が始まりました。ホールに設置されたスピーカーから、外国人犯罪のニュースを読み上げる声が朗々と聞こえてきます。日本人たちはじっと耳を傾けています。このとき生じている脳内の変化は観察することはできませんが、次第に日本人たちの顔が赤くなってきたのがわかります。カッカしているのです。

そして、ついにタイピング運動が始まりました。みな思い思いのヘイト発言を、慣れた指遣いで手元のキーボードに入力しています。

カチカチカチカチ! カチカチカチカチ!

それぞれのタイピングによって生まれた微弱な電流が、ケーブルを通じて中央の装置に流れ込みます。

「や、点いた! 豆電球が! 成功だ!」

日本人独特の斥力が、実用可能でクリーンなエネルギーへと変換された瞬間でした。

サステナブルなエネルギーの実現するサステナブルな社会、もうそこまできてますよ。

風刺・戯文

歴史の試練

僕たちが恐れていたことが、現実になろうとしていたんだ。

2025 年 12 月、アメリカのトランプ大統領はびっくりするような行動に出た。ナイジェリアのイスラム過激派に、キリスト教徒が迫害されているといって、空爆を実施したんだ。大統領は、キリスト教徒を守るためならば、軍事行動だってやるぞ、と世界に睨みを効かせてる。

このニュースを見て、僕たちは本当に心配になったんだ。トランプ大統領は、次に僕たちのこの日本を攻撃するに決まっているから。

だって、トランプったらこんなふうにいったっていうじゃないか。

「Run of Shimabara(島原の乱)!」

僕たちは、アメリカの飛行機が日本中を飛び回って、爆弾を落としまくる様子を想像して、震え上がった。おしっこも漏らした。キリスト教徒の怒りの焼夷弾で黒焦げになるのが、僕たちの運命だったとは。

だけど、そんなとき、僕たちの素晴らしい首相が立ち上がった。彼女は勇ましくアメリカに飛んで行って、トランプ大統領に恭しくひざまづいていった。

「閣下、島原の乱は、キリスト教徒とは関係ありません。極左の暴動に過ぎません」

そして、首相は大統領に、日本の歴史の教科書(検定合格)を見せたんだ。確かに、島原で暴れ回っていたのは、みんな民主党みたいな顔をしてたんだ。それで大統領はいったんだ。

「善哉善哉、それでこそ同盟国じゃ」

僕たちは、首相が彼女で本当に良かったと、胸を撫で下ろした。首相にかかっちゃ、歴史の改竄なんて朝飯前なんだ。

風刺・戯文

語れるゴミ

ごみ出しルールを守りましょう!!

ごみを出す際は、「出し方」「収集場所」「収集日」(朝8時30分まで)を守り、決められたルールで出しましょう!

ルールが守られていないごみは収集されませんので、ご協力をお願いします。

【語れるゴミ】成長の法則、成功プラン、世界の真ん中で咲き誇る日本、恋愛成就のパワースポット、言語化で人たらし、富裕層の習慣、外国人の日本賞賛、引き寄せ力、日本人の子どもの虐待死、魂の救済など。

【語れないゴミ】無意味な努力、貧乏人のアドバイス、狂人の長広舌、外人の日本語、犯罪者の正論、外国人の子どもの虐待死、知らない民族の大量虐殺など。

【資源ゴミ(「リサイクル」と書いてお出しください)】ヒーローのピンチ、恋人の難病、実は御曹司、敵が生き別れの兄、努力は裏切らない、庶民はしたたか、開けない夜はない。

【粗大ゴミ(回収は有料です)】無名の人の一生

【有害ゴミ(中身が見えない袋に入れてください)】リベラルの言説

【回収できないゴミ】国旗

*分別基準は選挙の結果により変わることがあります。

風刺・戯文

中国の漢字

最近、私は YouTube などで、日本語の字幕の漢字が中国の漢字になっているのに気がついた。例えば「直」だ。この漢字が、左側の縦棒がなくなり、さらに、下の横棒が上の「目」の下辺と一体化してしまうという中国の漢字なっているのだ。また、糸編もそうだ。下の「小」の部分が3つの点になってしまう。これも中国の書き方だ。

よく考えたら、これは怖いことではないだろうか。なぜなら、中国が日本に侵入してきている紛れもない証拠だからだ。私がこういうと、こんなふうに反論してくる人がいる。

「いえ、それは中国のせいではなく、パソコンや携帯の設定のせいですよ。設定を変えれば日本の漢字が表示されるようになるんじゃないですか」

いや、たとえそうだとしても問題は、そのまま使っている人がたくさんいるということなのだ。こうしたいいかげんな人々のせいで、中国の漢字がもう取り返しのつかないほどまん延してしまっているのだ。

「まさか」と思う人もいるかもしれない、だがまさかどころではない。例えば、「一」をみてほしい。果たしてこれは日本の漢字だろうか。いや、すでに中国の「一」が日本の「一」になりすましているのではないか。こう考えると、私はもうなにもかもが疑わしく思えてくる。もはや「日本人」も、実は中国人なのではないか?

いや、それどころか、この「私」も?

風刺・戯文

第二次世界観戦争

アニメや漫画に「この世界観にはついていけない」とか「この世界観にはハマれない」などと言う私たちは、貧乏人や家のない人、ひどい病人や難民を見ても「この世界観はちょっと……」というようになった。

さらには、隣国の偉い人を見ても「なんだこの世界観は」などと私たちは呆れてた。だから、私たちの首相がそのあたりピーンときて、やたらと世界観を大切にしだした。それで、ついに隣国の世界観にまで文句をつけたとき、私たちは喝采を送ったんだ。

で、隣国ときたら、私たちを激しく非難。しょうもない世界観のくせに引き下がるどころか、挑発してくるってのか。おたがい睨み合っているうちに、最初の銃弾がどちらかの陣営からか発射され、誰かが死んだ。世界観戦争が始まったってわけ。

開戦の知らせに、私たちは小躍りして喜んだけど、だんだん様子が違ってきた。食べ物もないし、毎日タダ働きだ。文句をいうと殴られる。誰かが「この世界観にはついていけない」と言ったら、警察がやってきて、そいつをどこかに連れて行った。だから、私たちはこの世界観に慣れるしかなかった。

戦争は終わる気配もなく、やがて私たちはみな前線に送り込まれた。世界観と同じように、戦場にも慣れるかと思ったけど、そんなことはなかった。銃火のなか、死体に囲まれ、傷に苦悶しながら、私たちが無言で思い続けたのは「この世界観にはついていけない」ということばかり。

私たちも近く、戦場で殺されるはず。そして、その死の瞬間にもやはり「この世界観にはついていけない」がいくども脳裏をよぎることだろう。

でもさ、私たちはいつ世界観から置き去りにされたっての。

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風刺・戯文

文学のリマスター

リマスターとは、現代の最新技術を用いて、昔の音源や映像の音質や画質を向上させることだ。音楽であれば、デジタル化、音圧調整、ノイズ除去などによって、音を補正すると、クリアで迫力のある音に生まれ変わる。

映像のリマスターも同じで、解像度を高くしたり、傷やノイズを無くしたり、色調を鮮やかに補正することだ。YouTube などには、古い作品とリマスター後の映像を並べ、その違いをはっきりと示してくれる動画もたくさんある。古い映画やアニメ・ドラマが、まるで最新の作品のようにキレイに見えるのだ。

このリマスターの手法を、文学にも応用できないか、と私はかねてから考えていた。そして、いろいろ試行錯誤した結果、ついに小説のリマスターに成功した。解像度を 8K にまで高め、独自に開発した AI を活用してノイズを消去し、色調も可能な限りオリジナルに近いものを目指した。リマスターしたのは、あの名作、夏目漱石の『それから』のラストシーン。ぜひ、クリアになったイメージと、美しい色彩を味わってほしい。

【修復前】
烟草屋の暖簾が赤かった。売出しの旗も赤かった。電柱が赤かった。赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。仕舞には世の中が真赤になった。

【8K AI リマスター後】
烟草屋の暖簾が赤かった。売出しの旗も赤かった。電柱が赤かった。赤ペンキの看板がそれから、それへと続いた。仕舞には世の中が真赤になった。

風刺・戯文

足繁く通いすぎて

神経質というか屁理屈屋というか、とにかく厄介な人が東京に来て、その人を食事に連れて行かねばならなくなった。私はネットで見つけた良さげなレストランを提案することにした。「ここなんてどうでしょうか、有名人が足繁く通う名店とのことです」と言ったら、その人が怒ること怒ること。ひとしきり罵り喚くと気が済んだのか、彼はこんなことを話しだした。

……僕はね、この「足繁く」って言葉の使われ方にもう我慢ならんのだ。これは、ある場所に頻繁に行くという意味でしかないのだが、今では、さっきの「有名人が足繁く通う名店」みたいに、気取った連中が、有名人とやらにあやかって自分を演出するために使うクリシェになってしまった。それこそ、ボロ靴、しかも歩き方のせいで片方だけすり減ったってくらい摩滅してしまったんだ。それでだね、僕はここ数年、毎日、SNS かなんかのコメント欄にこんな書き込みをして、「足繁く通う」を正気に帰らせようとしているんだ。

「テロリストが足繁く通うアジト」
「卑劣な盗撮魔が足繁く通う駅」
「麻薬中毒者が足繁く通う公衆便所」

その人はこう捲し立てると顔を紅潮させながらつけ加えた。「こんなふうに僕は毎日、言葉を世界に送り出しているのだ。まるでちょっとしたオウィディウスみたいじゃないか、『悲しみの歌』で自分の本をローマに送り出したところがね」

私は「どうかこの男も、そのローマの詩人みたいに首都から追放されるように!」と内心祈りながら、いちばん近くにある汚くてまずい店に彼を案内した。言葉に対する感覚とは逆に、舌は粗雑なようで、うまいうまいと貪っていた。

風刺・戯文

世界観戦争

私たちは世界観が大好きだ。「魔法が現実に存在する世界」「記憶が貸し借りできる世界」「愛が禁止された世界」「同じ一日を何度も繰り返す世界」などなど、面白い世界観がなくてはもう生きていけないほどなのだ。

だけど、どんな世界観でもいいというわけでもない。つまらない世界観だってある。とくに私たちの世界観を邪魔する世界観は最悪だ。たとえば「私たちをきらいな人が幅を利かせている世界」とか、そんな世界観にはついていけない。それで私たちは、自分たちの世界観を守るために、不愉快な世界観の撲滅に立ち上がった。

私たちの世界観が、不快な世界観とがぶつかって、摩擦が生じ、ついに火が着いた。世界観の戦争がはじまったのだ。別の世界観も次々と巻き込まれて、世界世界観戦争の様相を呈しきてきた。世界中で燃え盛る戦火のせいで、もう世界そのものが消滅しそうなほど。だけど、私たちはまったく気にしてない。なぜなら、世界がなくても世界観はなくならない、そんな世界観だから。

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