このとき以来、犬と男という二つの存在が私の中で結びついた。思えば、駐車係をしている男の周りにはいつだって犬がいた。そして、犬が寝っ転がっているところでは、男がビールケースに座ってタバコを吸っているのだった。
ある夜、私は男がこう犬に話しかけているのを聞いた。犬は歩道に寝そべっている。
「かわいそうなチビめ! お前はいつまでそこにいるつもりなんだ?」
男は、犬を置いて、ホテルの脇の道に入っていった。だが、すぐに再び犬のところに戻ると、屈んで犬の前足を取った。
「かわいそうなチビめ!」
またあるとき、男が犬を置いて道を渡ってしまった。残された犬は歩道を行ったり来たりした。車にさえぎられて男を見失いでもしたかのようだった。犬は表通りのほうまで歩いていきさえした。私は「お前の友人はいつもの寝床にいるぞ」と思いながら見ていたが、やがて犬も気がついたのか、道を渡って、男のいるマットのそばにゴロンと横になった。
犬と男の間にいったいどういう出会いがあり、どういう物語があったのだろうか。チュニジアには農閑期に出稼ぎに行く人もいるそうだ。どこかの村からふたりしてはるばるやってきたのだろうか? 夕暮れの田舎道をとぼとぼ歩いたり、列車に乗ってそろって景色を眺めたり……。私はいろいろなことを考えた。
もうひとつ不思議なことがあった。日中、犬も男も姿を消すのだ。ふたりでどこかに行ってしまったのだろうか。それとも、昼間は別行動という、あんがいドライな関係性なのだろうか。男はどこかのカフェで仲間と過ごし、犬は路地裏で野良犬たちと雑談を、とそれぞれの社交生活を楽しんで……。
ある昼下がりのこと、もっとも暑い時間帯に私はホテルを出た。犬も男もいない。ただ日差しが車と道を焼いているばかりだ。すでに汗をかきながら、私は歩道を降りて車道に踏み出す。
そのとき私は、駐車された車の下に犬がいるのに気がついた。影の中、前足に顎を乗せ、そこから外を見ていた。