旅・観察

安物ガイ(チュニジアへの旅行)

チュニジア行きの航空券には大きく分けて、中東系とヨーロッパ系があり、中東系のほうが二十万円強なのに比べて、ヨーロッパ系だと三十万から五十万円になる。

私は先日チケットを買いに行って、自らの経済状況などを真剣に検討した結果、初めから目をつけていた中東系の安いチケットを買うことにした。エミレーツ航空の二十万円だ。旅行代理店の話だと、中東の情勢次第では便の変更や欠航の可能性もあるという。だが、出発はまだ先のことだ。よくなることだって大いにありうる。安物ガイの消費マインドを支えるのはこの楽観性だ。

今回の旅は、旅費などが研究費から出る。私は旅費の申請のための書類を作成し、これを、研究費を管理してくれているオフィスに送った。書類が整っていないと、研究費を使うことはできない。

次の日、メールの返信が来た。リアリズムのメールであった。

・チュニジア行きの往復でドバイを経由している。
・現在、外務省の海外安全情報では、ドバイはレベル3(渡航中止勧告)となっている。
・経由地であっても、レベル3以上の地域への滞在は許可できない。
・経由地の変更か旅行の延期が必要。

よく見ると「外務省の海外安全情報(危険情報)」としてあった。海外安全情報だから安全だ、と私が言い出すかも、と念を入れたのだ。

もう! 私はすべてキャンセルして、新たなルートで旅程を組み直した。キャンセル料は総額いくらになるかわからない。戦争があると、銭失いも桁がちがう。

(写真:ありし日のドバイ国際空港)

散文

日本語教育能力検定試験やよのさ(1)

 昨年、私は日本語教育能力検定試験を受けて合格した。

 私にとっては合格して当然の試験だ。

 なぜなら、私は日本語教師養成講座で教えていたこともあるからだ!

 「な、なのに合格してなかったのか……」と呆れる人もいるだろう。

 ならば、さらに呆れさせて進ぜよう。

 私はその日本語教師養成講座で、試験直前対策講座も担当していたこともあったのだ!

 「なんたる嘘つき、経歴詐称!」と義憤に駆られる方もいるかもしれない。しかし、日本語教師養成講座は、日本語教育能力検定試験の合格のみを目的としたものではないし、また、日本語のことなんか知らなくても教えられる分野もある。例えば、私が担当していた言語学分野だ。だが、それでも合格しているに越したことはない。

 現在の私は、日本語教師養成講座には関わりがないので、したがって日本語教育能力検定試験を受けようなどとは思わなかった。

 だが、去年の今頃のことだ、私の知り合いの何人かが日本語教育能力検定試験を受けようと決意した。それで勉強会を開くことになり、私に声がかかったのだ。一緒に受けませんか、と。

 私は迷った。試験勉強など面倒くさい、というか、試験時間が90分、30分、120分、合わせて4時間だ。きっと『ブラックジャック』のピノコのように試験中に倒れてしまう……もう試験の緊張に耐えられない体なのだ。

 断ろう、と思った瞬間、私の口から驚愕すべき言葉が飛び出した。

 「うけゆにきまってゆよのさ」

 そんなわけで、これからこの試験を受けようという人のために若干の経験を書き記しておこうと思うのである。

手塚治虫『ブラック・ジャック』「ハッスル・ピノコ」より