散文

幼年期の終わり

六月にチュニジアに行ったとき、明らかにAIが描いた絵が表紙になっている本を本屋で何種類も見かけた。内容にはよさそうなものがあったが、買う気にはなれなかった。

日本でも、広告やチラシの類にAI製のものをよく見かけるようになった。これもどれも同じで、実につまらない。

このブログでもずいぶん前から記事のアイキャッチに生成AI画像を使ってきた。二〇二二年十月二十二日から Stable Diffusion で作った画像を使い始め、二〇二四年六月二日からは WordPress で記事にAI画像を作成するサービスが始まったので、それを使うことにした。

だが、二〇二六年三月二十七日からはAI画像を使うのをやめ、自分で撮った写真を使うことにした。なぜなら、AIの絵は面白くないからだ。思えば、私がAIの画像を使い始めたのは、簡単に奇妙で変で面白い絵が出てきたからだ(二〇二三年ごろの画像を見てほしい)。しかし、次第にAIが発展するにつれ、面白くない絵を描くようになり、今やその絵は世界中に溢れている。

もちろん、AIでは面白い画像を作れないといっているのではない。ただ、よい画像にするのには非常に時間がかかる。忍耐も必要だし、センスも必要だ。だが、たいていの人は時間もヴィジョンもないから、「描いて」とだけで済ませる。すると、吐き気がするほどつまらないものが出てくる。

「描いて」と指示するだけで、奇怪な絵が出来上がる時代は終わってしまったのだ。幼年期は過ぎ去り、今や当たり前の大人になって、あたりさわりのないものばかり描くようになってしまった。

それどころか、私の書いた物を読ませると「つまらない人間が書いたいやらしい文章」などと生意気を言うようになった。

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風刺・戯文

夏の恐竜

恐竜は冬眠をしたのでしょうか。

従来の学説だと、恐竜は、トカゲと同じような変温動物であり、冬は体温が下がるため、冬眠していたとされていました。

ですが、最近の研究では、恐竜は恒温動物、つまり寒くても体温を維持できたため、冬眠はしなかったという考えが主流だとのこと。というのも、寒冷地にも適応した恐竜がいたこともわかってきたからです。

これに対し、異を唱えるのが、吉田九郎さん。吉田さんは古生物に関する長年の研究にもとづき「やはり恐竜は冬眠していた」と主張しています。

「その証拠はじつは私たち人類に隠されています」と吉田さん。「もちろん人類は恐竜時代にはまだいませんでした。ですが、人類の祖先となる小さな哺乳類は恐竜と同時代を生きていました。これらの哺乳類にとって恐竜はじつに恐ろしい存在でありました。あまりにも恐ろしかったので、その恐怖の記憶が DNA レベルで刻み込まれ、現在の私たちにも引き継がれているのです」

吉田さんは手に持った「夏休み特別企画、大恐竜展」と描かれたチラシを見せます。

「これがその証拠です。私たち人間が夏になると必ず恐竜展を開催してしまうのは、DNA に組み込まれた太古の恐怖がなせる技なのです。つまり、哺乳類にとっては夏といえば恐竜なのです。もし恐竜が冬眠していなかったら、真冬にも恐竜展を開催していたことでしょう!」

苦い文学

横断歩道

ワルシャワの街を歩いていて感心させられたのは、信号機のない横断歩道で必ず車が止まってくれることだ。歩行者優先の意識は徹底していて、横断歩道に近付いただけで、横断する意思を示す前ででも、車は止まる。

ずいぶん昔のことだが、マルタ島でも同じような経験をしたことがある。だからといってヨーロッパ全部に当てはまるとはいえないが、そうではないと考える理由もない。

それにしても、と私は日本の道路事情を思わずにはいられない。日本では横断歩道で車が止まったのを見たことすらない。それどころか、渡ろうとするとかえってアクセルを踏んで威嚇してくる始末だ。もっともこれは日本だけではない。韓国、台湾、中国でも同じような状況だろう。

ただ、横断歩道で車が止まる社会のほうが止まらない社会よりいいかというと、必ずしもそうではない。横断歩道で車が止まるのは、それ以外のところでは歩行者は渡らないという、車と歩行者の契約があるからのようでもある。

しかし、日本では私たち歩行者は、車の危険がなければ、どこであろうと果敢に道を渡らずにはいられない。これはある意味では自由だが、車にしてみれば、車道という車の聖域に対する侵犯行為でもある。そんなわけで、車も横断歩道で「おい渡れるもんなら渡ってみろ」とやけに歩行者に挑発的になるのだ。

いずれにせよ、日本人からすれば、横断歩道で車がスッと止まるなど信じ難い光景だ。私がその光景をビデオに撮って SNS に流したら、「フェイク動画だ」と炎上まちがいなしだし、ファクトチェック機関が緊急声明を発する事態となることだろう。

苦い文学

ギターの力(4)

ギターのストロークはもはや目に見えないほどの速さに達していた。その激しい演奏とともに若者たちの歌声とも叫びともつかぬ声が反復しながら続いていた。手を繋ぎ、抱き合っていた男女たちは、再びひとりに戻って、頭を振り、手を振り上げていた。

助手が博士に叫んだ。「危険域に達しています! 直ちに介入すべきです!」

「やむない!」と博士は苦渋の決断をすると、会場の人々に向いて厳しい顔で語った。

「少し予期せぬ事態が起きましたが、まもなく元どおりになります」

だが、そのとき、会場から悲鳴が上がった。モニターの中で、ギターを若者から奪おうとした助手が弾き飛ばされたのだ。博士は振り向いてモニターを見た。いまやギターは暴走を始め、若者たちを恐ろしい歌の世界に引きずり込もうとしていた。

ギターの恐ろしい轟音が、若者たちの口から狂った歌を生み出した。

「人間なんてラララーララララーララ、人間なんてラララーララララーララ、人間なんてラララーララララーララ」

博士は飛び上がった。「いかん、ジャンボリー化が始まった! こうなったらもう止める手立てはない! みなさん、ただちに退避してください!」

凄まじい叫びと混乱が始まったが、博士はそれにかまわず壇上を去り、地下通路を通って、キャンプ場に走った。

助手がすがりつく。「博士! 危険です! もう私たちには手が負えません」

「弦を切ればなんとかなるかもしれん!」

「ですが、それでは博士の命が!」

「この力を目覚めさせた者が責任を取らねばならぬのだ!」

博士はニッパーを片手に若者たちの輪の中に飛び込み。ギターに手をかけ、弦を切った。閃光が走る。そして、巨大な光が生じ、すべてを飲み込んでいった。

光が消え去った後に残されたのは、一面の焼け野原。そこをさまよう人々は、どこかで「禁断の遊び」が鳴り響いているのを聞いたような気がした。

苦い文学

機関と器官

【ロシアのハッカー集団、日本政府にサイバー攻撃と犯行声明】

ロシアのプーチン大統領への支持を表明しているハッカー集団「王の耳」が、昨日、日本政府関連機関および器官にサイバー攻撃を仕掛けたと犯行声明を出した。

「王の耳」を名乗るアカウントは、SNS上に声明を投稿し、「我々は日本政府がウクライナ支援を続けることへの抗議として、日本政府の機関と器官を標的としたサイバー攻撃をこの数ヶ月行なってきた」と書き込み、現在のところ、目標は十分に達成されていると主張している。

このハッカー集団によれば、日本政府諸機関へのサイバー攻撃を行なったほか、日本政府のセキュリティ設備に侵入し、これを遠隔操作することによって、岸田首相にしか聞き取れない怪音波を発生させ、岸田首相の聴覚器官に破壊的影響を与えるのに成功したという。

実際、政府機関のウェブサイトでは接続障害が生じているが、総務省は「原因は不明」としている。また、岸田首相の「聞く力」も、ここ2ヶ月ほどいちじるしく低下し、国民の意見がつながりづらい状況が続いている。

なお、政府はこの犯行声明については「寝耳に水」と否定している。