ここで説明について考える。
物語は大きく分けると三つの部分によって構成される。登場人物たちの行動などの出来事を述べる文、登場人物の会話(という出来事)、それ以外の部分だ。最初の二つは基本的には前後関係がある出来事であり、時間の流れの中に継起的に位置づけることができる。
単純な物語は基本的には出来事を継起的に述べるだけで成立する。そこで、継起的に出来事を述べる文を、物語文と呼ぶことにする。
「むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。ある日のこと、おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。すると、川から大きな桃が流れてきました」
これは典型的な物語文だ。もっとも、ただ単に出来事を継起的に述べているだけでなく、実際には「語り初めの構文」とおじいさんとおばあさんを対比させる構文も含まれているので単純ではないが、それでも「おばあさんが川に行く」と「桃が流れてくる」という出来事の継起をそこに見ることができる。
この例には会話は現れないが、発言自体ひとつの出来事なので、ひとまずは物語文に含めておくことにする。
さて、それ以外の部分というのは、出来事(のある側面)についてなにかを述べる部分だ。これにはいろいろとあると思うが、主なものは出来事に関わる人物や状況の描写、出来事についての説明、出来事の評価(コメント)だ。ここではまとめて説明文と呼ぶことにする。それぞれ例をあげよう。
描写
「むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。ある日のこと、おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。川は穏やかに流れ、囁くような水の音は心浮き立つようでした。すると、川から大きな桃が流れてきました」
説明
「むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。ある日のこと、おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。なお、当時は男は山に行き、女は川に行くのが一般的な就業形態でした。すると、川から大きな桃が流れてきました」
コメント
「むかし、むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。ある日のこと、おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。これはおそらく、洗濯機がないか、洗濯機を使わないエコな暮らしを実践していたものと推察されます。それはともかく、おばあさんが川で洗濯をしていると、川から大きな桃が流れてきました」
これらの説明文には共通する特徴が少なくとも二つあるが、そのひとつは、出来事が継起する物語の時間を止めることだ。