風刺・戯文

悪人たちのボランティア

私が強く訴えたいのは、ボランティアをしている人はみんな悪人だということだ。

だが、これには二種の悪人が含まれている。最初の悪人は、ボランティアをすることで何か良いことをした気になる人々だ。つまり善人ぶった連中だ。そしてぶっているからにはその正体は悪人なのだ。

二番目の悪人だが、こいつらの悪辣さに比べれば、最初の連中など小悪党にすぎない。これらの大悪党はボランティアなどとうそぶきながら、そのじつ金のことしか考えていない連中だ。

なにしろボランティアには金がかかる。支援活動は言わずもがな、事務所の賃料、運営費、スタッフの給料に交通費、企業や行政との交渉、フェアの参加費、ニュースレターの発送費に、会議のお茶菓子……。

これらの経費をかき集めるため、大悪党たちはボランティアなどそっちのけで、あちこちほっつき回って寄付金をせしめ、めざとく助成金を見つけて掠め取ろうとし、講演会で人心を迷わし、フェアトレード商品で荒稼ぎすることに精を出しているのだ。

事情を知らぬ一般人たちはボランティア活動を「ノンキなお遊び」とバカにしてはばからない。だが、これらの悪人たちのボランティア活動の裏にどれだけの狡賢さと計算高さと抜け目なさが渦巻いていることだろうか。これに比べれば一般人たちの金儲けなど児戯に等しい。

だから、私は不祥事を起こした芸能人たちにみそぎとしてボランティアさせるのは断固として反対だ。人間はボランティアをやって善人になりはしない。むしろボランティアたちの悪どさに染まって、差別の撤廃や人間の平等を訴えて政府に楯突きかねない。

旅・観察

森鴎外記念館(前編)

説経節を読んでいて、森鴎外の「山椒大夫」を知った。読んでみたが、本家のほうが面白い。しかし、他の短編がよかったのでいろいろ読んでみることにした。

鴎外というと「石炭をば早や積み果てつ」をむかし学校でやったきりで、難しくて読めないだろうと思っていたが、それ以外はけっこう私にも読めた。ひどくつまらないものもあるが、女の人を書くときはイキイキしている。たぶんスケベだったのだろう。

いくつか読んでいるうちに、森鴎外がベルリンに留学していたことと、そこに記念館のあることも知った。6 月にベルリンに行ったときは、やはりスケベであったとされる楽聖デヴィッド・ボウイのベルリン三部作のことしか頭になかった。それで、『Low』『“Heroes”』『Lodger』の 3 枚のアルバムの曲の多くと、イギー・ポップのアルバムなどが録音された有名な音楽スタジオ、Hansa Tonstudio を訪問した。ベルリンの壁が近くにあったことがわかるので、“Heroes” がより感慨深く聞ける。

訪問したといっても、ハンザ・スタジオの中には入れない(有料のガイド・ツアーがあるようだ)。また、ボウイ饅頭やチャイナ・ガールの烏龍茶が売っているわけでもない。ただ、スタジオのガラス窓に大きな画面が設置されていて、デヴィッド・ボウイのいろいろな表情がかわるがわる映し出されているだけだ。

いっぽう、森鴎外記念館は中に入ることができる。しかも無料だという。そこで今回、9 月のドイツ滞在中に行ってみることにした。

苦い文学

行き着くところ

飛行機の離陸前に流れる「機内安全ビデオ」のエンターテインメント化が進み、このままでは過激化するのではないかという、私の危惧についてはすでに述べた。

だが、私が憂慮しているのはそれだけではない。このままだと「機内安全ビデオ」は、ますます大作化し、さらにはシリーズ化する危険性がある。

もちろん、面白ければいい。乗客の安全意識が高まればいい。そう考える人もいるかもしれない。だが、もし、この傾向が行き着くところにまでいってしまったら? そして乗客がすっかり飽きてしまったら? そのとき、機内にいったい何が残るというのだろうか?

それは、もはやビデオに見向きもしない一般大衆ではないだろうか?

そんなやりきれない思いを抱えながら、今年の夏、私はさまざまな航空会社を利用した。そして、つい昨日のことだ。離陸前の機内に座る私は信じがたいものを目にしたのだった。

なんと、ビデオなどいっさい流さずに、通路に立った客室乗務員がじつに高らかな声で安全に関する説明と実演をはじめたではないか。

同じような危機感を共有している航空会社がある、と私はうれしくなった。いや、私を喜ばせたのはそれだけではなかった。客室乗務員が説明を終えたとき、すべての座席から拍手が沸き起こったのだった。

この飛行機に乗り合わせたすべての乗客が、生の実演に感動したのだった! 

私は感激のあまり、手を打ち鳴らしている隣の紳士に思わず声をかけた。

「ああ、これぞ客室乗務員です。本物、本物です!」

すると、紳士は怪訝な顔をした。

「客室乗務員? いいえ、この人たちは著名な俳優で、このフライトのために企画された特別公演をいままさに終えたのですよ!」

不可解な言葉に戸惑う私の目の前で、先ほどの「俳優」たちが再び現れ、一列になって手を繋ぎ、カーテンコールに応えた。

苦い文学

日本版DBS

【ザンゲー通信 記者の論点】
教師による子どもたちへの性犯罪が後を絶たない。

学校だけではなく、学習塾も性犯罪の舞台となった。被害にあった子どもを思うといたたまれない。

このような状況で、我が国でも「日本版DBS」の論議が活発になっている。「日本版DBS」とは性犯罪歴のある人物が学校などで働けないようにするシステムだ。

だが、「DBS」は性犯罪を完全に抑止するわけではないことも指摘されている。というのも、これから新しく性犯罪を犯そうと教職についた「まだ見ぬ性犯罪者」については防ぎようがないからだ。

また、教師による性犯罪の増加も問題だ。この調子だと、たとえ「日本版DBS」が開始されたとしても、もう登録も追っつかなくるのではと懸念されている。

しかも、増加率を考慮に入れると、やがては教師全員登録という事態にもなりかねない。

もっとも、そのときには子どもに対する性犯罪はゼロになっている可能性が高い。というのも、もはや我が国には子どもはひとりもいなくなっているはずだから。

苦い文学

厳重警戒

今月下旬に開催される国葬には、海外から数多くの要人の参列が見込まれるとあって、警視庁は総力をあげて万全の警備体制で臨む予定です。

都内の主要な駅や空港などでの警戒がよりいっそう強化されるなか、一風変わった競技大会が今日、スタートしました。

スタート会場となる皇居前に集まったのは、軍服を着た若者、迷彩服をまとった男性、いかにも怪しげな身なりの男性など、およそ30名。

これらの競技者たちは、国葬までの間にどれだけ警察に職務質問されるかを競います。

「この大会のために警戒にひっかりそうな服装をアメ横で買い揃えました」と語るのは、米軍放出品で全身コーディネートした30代の会社員の男性。競技に参加するために、栃木から駆けつけました。

いっぽう、「ワタシ、ワカリマセーン」と困った様子で話すのはアジア系の外国人男性、と思いきや、日本人。茶色い塗料で肌を塗る、周到ぶりです。「警官は東南アジア系と見るとすぐに職務質問しますからね。優勝間違いなしですよ」と自信のほどをのぞかせます。

大会の主催者は「国葬の警備は税金によって賄われるものです。その警備を国民はもっと積極的に利用すべきでは」 そんな思いから、今回の大会を企画しました。

「今回の国葬をきっかけとして、次の国葬、そのまた次の国葬、と大会をつないでいければ」と夢を膨らませます。

なお、この競技では、職務質問の結果、逮捕された場合は失格となるそうです。