風刺・戯文

日本に学ぼう

この度、トルコ、イラク、イランなどの政府関係者が日本を訪問し、川口市を視察しました。どの国も、国内のクルド人をめぐる問題に悩まされてきた国です。

「私たちは日本で実に効果的なクルド人迫害が行われていると聞いてやってきました」と訪問者たちは語ります。「私たちはクルド人としばしば武力による対立を経験してきましたが、それでもクルド人勢力を消滅させることはできませんでした。ところが、日本ではいかなる武器もなしにクルド人を追い出すことに成功しつつあるというではないですか」

街でさっそく、クルド人に対するヘイトスピーチをする市民に出会った訪問者たち。通訳から内容を聞いて感心します。「こんなイヤがらせの仕方があったのですか!」

また、クルド人を追い出そうと集った市民の活動にも大いに関心を惹かれた様子です。

(訪問者)「日本では市民、行政、マスコミが一丸となってクルド人をいじめているのに感銘を受けました。これぞ民主主義のあるべき姿です」

訪問者たちは「クルド人の子どもを標的にするなど、日本人のすばらしい陰湿さを学ぶことができたのは大きな収穫でした」と、満足げにそれぞれの国に帰ったということです。

苦い文学

エアエアクオート

映画やなにかで、欧米の人が会話中に、両手の人差し指と中指を同時にクイクイと曲げる仕草を見たことがある人も多いだろう。

これは、英語などで用いられる引用符(”ダブル・クオーテーション・マーク”)を表す「エアクオート」と呼ばれるジェスチャーだ。エアクオートを使うと「他の人はそう言ってるけど、自分はあまり賛同していないよ」というようなニュアンスを表すことができる。

私の友人が先日、このエアクオートでギネス記録にチャレンジした。「どういうこと?」と怪訝に思う人もいるかもしれないが、こうだ。

ある言葉に両手でエアクオートをしたのち、すぐにその両手を少し外側にずらして、もう一度エアクオートを行うと、二重にエアクオートが行われていることになる。あえて文字で表せばこうだ。

   ““バカ””

彼はこのエアクオートをどこまで重ねることができるか、引用の限界に挑んだのだった。ギネス公認の記録は 578 回で、まずはこれを超えることが目標となる。

友人はギネス審査員たちの見守るなか、驚くべきスピードでエアクオートを積み重ねていった。まさに超人的な集中力・体力・腕力だった。576 回、577 回、578 回、579 回! ついに世界新記録達成だ! だが、彼のクオートはやまない! 590 回、前人未到の 600 台! そして、619 回! ここで惜しくも彼は力尽きた! しかし、彼こそがギネス記録保持者なのだ。

審査員たちが駆け寄り、左右からエアクオートの数を確認する。1、2、3……。審査員たちが急にざわめき出し、予想外のアナウンスをした。右側のエアクオートのマークがひとつ足りない、と。指を曲げ忘れたのか、それとも、曲げ方が弱かったのか……それにしても痛恨のミスだ。

残念ながら新記録とは認められなかったが、私たちはみんなで彼を “チャンピオン” とエアクオートで褒め称えた。

苦い文学

祟り

「日本にはアニメや漫画など世界に誇る優秀なコンテンツがありますが、それ以外にもまだたくさんあるのです。今、私たちが注目しているのは祟りです」と代表の梅田祟さんは語ります。

「祟りには、神によるものと、人によるものがありますが、私たちが関心があるのは、後者のほう、つまり、人の恨みが生み出す祟りです。この祟りがこれからの世界で求められると考えています」

梅田さんが示したスライドでは、赤く塗られた日本から、祟りの矢印がアメリカ、中国、ヨーロッパ、アフリカへと向かって伸びていきます。

「というのは、今後、世界各国で、戦争による虐殺、処刑、虐待死、無実の死が大幅に増えると予測されているからです。こうした非業の死を遂げた人々にとって、死の直後から効率的に恨みを晴らすことが大事ですが、日本の祟りならそのニーズに応えられると考えています。

梅田さんはスライドで「祟りのグローバル化」というキャッチフレーズを提示します。

「非業の死のトレンドの強い国・地域では、もしもの時のために『祟りたい』というニーズがますます高まっていくものと予測されています。こうした国を出発点に、世界各国の市場で『祟り』を積極的に売り込んでいこうではないか、というのが私たちの考えです」

スライドでは、世界各国で戦火がメラメラと燃え上がり、無数の人々の命が奪われ、苦悶の叫びが聞こえ、子どもたちの泣き声が響き……

苦い文学

ショック記事

マスコミの世界でなんと呼ばれているのかわからないが、「ショック記事」とでも呼べそうなタイプの記事がある。そのタイトルはいつもこんな感じだ。

「鈴木たかしショック! 主演ドラマ書店が閉店へ」

「鈴木たかし」というのは、私が適当に作った俳優の名前だが、このニュースの内容は、彼がかつて主演したドラマのモデルとなった本屋が閉店するというものだ。

この「ショック記事」では大事なきまりがいくつかある。

まず、ショックを受ける(とされる)人(ショック者)は、それなりの有名人でなくてはならない。

「斉藤ひでおショック! トム・クルーズ来日延期」

いったい知らないおじさんがショックを受けるという情報に何の価値があろうか。

また、ショック者と出来事の間に何らかのつながりがなくてはならない。仮に斉藤ひでおさんが有名人だとしても、最低でもトム・クルーズの熱心なファンでなくては、この記事は意味を持たない。

さらに、ショック者があまりにも事件に深く関与していてもいけない。だから「森元首相ショック! 高橋元理事逮捕!」なんてのもダメだ。

そして、ショック者が不特定多数でもいけない。例えば「国民ショック! 北からまた飛翔体」。

最後に重要なのを挙げるとすれば、ショック者が本当にショックを受けたかどうかについては、取材すらされない、ということだ。つまり、記者が「ショックを受けたにちがいない」と勝手な推測をし、それをタイトルにまでしてしまうのだ(もちろん、まれに本人がショックを受けたのが事実である場合もある)。

そんなわけで、ショック記事というのは、ショック者の性質、出来事の関係などいろいろな要素が絡み合ってできていて、案外難しいのだ。

だが、私は、長年のショック記事の研究の結果、万能のショック者を発見した。

それは尾木直樹氏だ。

「尾木ママショック!」 

さすが著名な教育評論家、どんなニュースにも合うのでぜひ試してほしい。