映画やなにかで、欧米の人が会話中に、両手の人差し指と中指を同時にクイクイと曲げる仕草を見たことがある人も多いだろう。
これは、英語などで用いられる引用符(”ダブル・クオーテーション・マーク”)を表す「エアクオート」と呼ばれるジェスチャーだ。エアクオートを使うと「他の人はそう言ってるけど、自分はあまり賛同していないよ」というようなニュアンスを表すことができる。
私の友人が先日、このエアクオートでギネス記録にチャレンジした。「どういうこと?」と怪訝に思う人もいるかもしれないが、こうだ。
ある言葉に両手でエアクオートをしたのち、すぐにその両手を少し外側にずらして、もう一度エアクオートを行うと、二重にエアクオートが行われていることになる。あえて文字で表せばこうだ。
““バカ””
彼はこのエアクオートをどこまで重ねることができるか、引用の限界に挑んだのだった。ギネス公認の記録は 578 回で、まずはこれを超えることが目標となる。
友人はギネス審査員たちの見守るなか、驚くべきスピードでエアクオートを積み重ねていった。まさに超人的な集中力・体力・腕力だった。576 回、577 回、578 回、579 回! ついに世界新記録達成だ! だが、彼のクオートはやまない! 590 回、前人未到の 600 台! そして、619 回! ここで惜しくも彼は力尽きた! しかし、彼こそがギネス記録保持者なのだ。
審査員たちが駆け寄り、左右からエアクオートの数を確認する。1、2、3……。審査員たちが急にざわめき出し、予想外のアナウンスをした。右側のエアクオートのマークがひとつ足りない、と。指を曲げ忘れたのか、それとも、曲げ方が弱かったのか……それにしても痛恨のミスだ。
残念ながら新記録とは認められなかったが、私たちはみんなで彼を “チャンピオン” とエアクオートで褒め称えた。