レンタカーの事務所から少し歩くと、ラグレットという海辺の町に出る。海水浴場にはパラソルが並び、泳いでいる人たちがいる。私たちは海辺のカフェでお茶を飲み、チュニスにはない静けさを味わった。
それから町中に入りタクシーを探した。遠くに茶色い壁が見えた。古い城塞のようだ。行きにも見かけたこの建物についてSさんに尋ねると、これはカッラーカといって昔の牢獄の跡だという。今はイベント会場として使われているとのこと。
チュニスに戻ってからネットで調べると、十六世紀にスペイン人が作ったもので、カッラーカもスペイン語に由来すると書いてあった。私はなんとなくこの語にどこかで出会った気がしてきて、手持ちのデータを見直した。すると出てきた。
karraːka(複数 karraːkaːt)刑務所
面白いことに複数形まであった。これはチュニジアの物語集に出てきたもので、こんな例文もメモしてあった。
「カッラーカの臭いが彼から漂っている(=ムショ帰りだとすぐわかる、くさい飯の匂い)」
Sさんによると、カッラーカはあまりにも有名なので、転じて刑務所そのものを表すようになったのだという。このメモは二〇年前のものだが、ようやくその語の生誕の地に至ったというわけだ。
悪いことをした子どもに「そんなことをすると、カッラーカ行きだよ」と脅すこともある、とSさんはまた教えてくれた。