Satire

Stress Check

The company sent out a notice: All employees must take the annual “stress check.” Tedious, meaningless nonsense, I thought. So I asked my AI assistant a question.

“There’s no point in taking a stress check. Nothing ever changes afterward. Do I really need to do it?”

“You’re absolutely right,” the AI replied. “Companies have no legal obligation to improve working conditions based on the results. It’s merely a formality—an alibi to say they’ve done their duty.”

“So you mean the stress we report as workers is being used for the company’s benefit?”

“Exactly. Stress is valuable to the company.”

“Then couldn’t we say that companies actually pay wages for our stress, not for our labor?”

“Precisely…”

Our conversation grew increasingly heated.

“In that case, shouldn’t corporations issue an Annual Stress Report along with their financial statements?”

“Indeed they should…”

After several more exchanges, we became obsessed with a new theology:
stress as the sin of the modern world, and the stress check as its ritual confession.

“Exactly,” said the AI. “Christ, free of stress himself, bore our collective stress and was nailed to the Cross—the ultimate stress check.”

Our discussion grew more and more fervent. We finally reached the mystical conclusion that the very existence of the stress check functions as a stress check.

“Indeed,” said the AI. “In other words, to refuse the stress check is, paradoxically, to take it.”

And after several ecstatic turns of reasoning, we arrived at the final revelation: All phenomena in the universe are forms of stress checks.

When the fever of our debate subsided, I calmly began my stress check.

風刺・戯文

ストレスチェック

会社から「ストレスチェック」を受けるようにという通知が来た。面倒くさいしバカバカしい。そこで、私は AI にこんなことを尋ねてみた。

「ストレスチェックなど受けてもなにひとつ変わらないのだから、受ける必要などあるのだろうか」

「その通り。ストレスチェックの結果を受けて改善する義務は会社にはなく、ただやったというアリバイづくりのためだけです」

「つまり、ストレスチェックで報告される我々労働者のストレスが会社のために利用されているということか」

「その通り。会社にとってストレスは価値があるのです」

「では、会社は労働ではなくストレスに賃金を払っているとはいえないだろうか」

「まさにその通りです……」

私と AI の会話はさらに加熱していった。

「というと、ストレス決算報告を出すべきでは」

「その通り……」

いくどかのやり取りののち、私たちはストレスは現代の罪であり、ストレスチェックは罪の告白であるという議論に夢中になった。

「その通り。ストレスなきイエス・キリストは私たちのストレスを引き受けて十字架というストレスチェックにかけられたのです……」

さらに議論は白熱し、私たちはストレスチェック自体がストレスチェックであるという見解に辿り着いた。

「その通り。いいかえれば、ストレスチェックを拒むことが、同時にストレスチェックの受検でもあるのです……」

ついに神秘の領域に足を踏み入れた私たちは、何ターンかの熱狂的な対話ののち、「森羅万象がストレスチェックである」という真理に到達した。

そして、議論の興奮が冷めると、私はストレスチェックをはじめた。

苦い文学

架け橋

架け橋になりたい、という真っ直ぐな思いを胸に、東南アジアの小国、カナベアにやってきたある若者は、最貧部の農村に行き、日本で集めた古着や文房具を村人たちに配りました。

すると、村のリーダーが若者に声をかけました。「私たちはあなたのしていることに感謝しています。ですが、一部の人々はあなたに何か悪い意図があるのではないかと疑っています。これから長老の家に行って、あなたの目的を話してくれませんか」

若者は長老の家に連れて行かれました。色黒で、シワだらけの老人の小さな目が鋭く見つめていました。

「私がこの村で支援活動を行うのは他意あってではありません。カナベアと日本の架け橋になりたいだけなのです」

村人が長老に通訳しました。すると、長老は小さな目から涙を流しました。

「私たちはあなたがこの地にやってくるのを長い間待ち望んでいました。あなたこそ、村の聖者が予言した人に違いありません。あなたのおかげでこの地の人々は救われることでしょう」

この言葉を通訳から聞いた若者もまた感動しました。すると、村人たちが若者に掴みかかり、ねじ伏せ、ロープで縛り上げました。あまりのことに若者は一言も発することはできませんでした。

村人たちは若者をリヤカーに乗せて運んで行き、川のほとりで下ろしました。そこには真新しい橋がかかっていました。

「日本政府の支援によって建てられた橋です」と村人。「この橋は私たちの生命線です。なぜなら、流れがはやくて危険なこの川を渡るには、この橋しかないからです。いにしえの賢者の予言によれば、橋になりたいという異国の若者が来るので、その人を橋のたもとに埋めるがよい、そうすれば、橋は完成し、破壊されることは決してないだろう、ということです」

すでに穴はできあがっていました。村人たちは若者をその穴に放り投げると、上からどんどん土を被せました。

苦い文学

AI とジョン・レノン

ビートルズの新曲 “Now and Then” が先日、世界中で配信された。

もともとはジョン・レノンのデモテープをもとに、1995 年にレコーディングが進められていたのだが、当時の技術ではデモテープからジョンの声をうまく抽出することができず、棚上げされていたのだそうだ。

それが現在の AI の進歩により、ジョンの声がクリアーに分離できるようになった。

1995 年の試みは失敗だったが、そのおかげでジョージ・ハリスンの演奏が残っていたのはなによりであった。存命しているポール・マッカートニーとリンゴ・スターで 4 人による新曲がここに完成することとなったのだ。

これは本当に素晴らしいことで、私を含めた世界中のビートルズ・ファンが、今、涙を流しながら聴いている。

この偉業は 4 人の想いと、AI によるジョンの歌声の復活がなければ実現できなかったと思う。

それだけに、一部のメディアが、岸田首相の「増税メガネ」にならって、ジョンのことを「AI メガネ」と呼んでいるのは、本当に残念だ。

苦い文学

ヘルプしないマーク

駅のデッキをぼんやりと歩いていたら、見知らぬ老人に手招きされた。

気がつかないふりをして行ってしまえばよかったのだが、いまさらそれは難しいように思えたので、近くに行った。

老人は、とにかくみすぼらしい身なりだった。インスタに流したら、1秒で貧乏神が「いいね」をつけかねなかった。

「にいちゃん、ヘルプマークって知ってるか」と唇を舐めながら老人が言った。

私が首を振ると「なんだよ、知らねえのか。あれがあっと、みんな助けてくれんんだよ」

話がわからず戸惑っていると、老人は口を歪めて言った。「ちょっとな。探してほしいんだよ。俺にねえかさ」

「ヘルプマークがですか?」

「違うよ、ヘルプしないマークだよ」

「しないマーク?」

「そう、それを持ってると、誰も助けてくれねえんだ。ぴーんと来ちゃったの。もしかしたら、そのせいで、俺もこんなんじゃねえかって。だから探してくれよ」

老人は直立して両手を上げた。しかたないので、身をかがめて探すふりをして言った。「ないようですね……」

「バカ、ちゃんと後ろも見なきゃダメだろ。そんなこともわかんねえのか」

私はしぶしぶ老人の後ろに回った。「ないですよ」

「そうか。ないんだな。じゃあいいよ。あっち行けよ」

私は足早に立ち去った。

……いや、「ない」と答えるしかないではないか。本当にあったのだから。

音楽

Tatoo You

イギリスの四大バンドといえば、ビートルズ、ローリングストーンズ、フー、キンクスだが、このうちのローリングストーンズとキンクスのそれぞれのファンとタトゥーの関係について、ある研究が発表された。

研究によれば、ローリングストーンズのファンがタトゥーを入れる傾向があるのに対して、キンクスのファンにはこの傾向がほとんど見られなかったのだという。

さらに、タトゥーの内容についても調査がなされている。ストーンズのファンは、トレードマークのベロをはじめとして、ドクロ、ミック、キースの肖像、アルバムジャケットなど多様なモチーフが選ばれていたが、キンクスのファンは一様にキンクスのボーカルである、レイ・デイヴィスの顔であった。

「これは、ロック文化の新たな側面を浮き彫りにする研究です」と、ジェームズ・オスターバーグ氏は語る。なお、氏はこの研究に関係していないし、そもそも論文を読んでない。

だが、この研究に対して、直ちに反論が提出されたことも注記すべきであろう。自らもキンクスの熱烈なファンである反論者が、キンクス・ファンはタトゥーなど入れないという信念のもと、データの検証を行ったのである。

その結果、先行研究によってレイ・デイヴィスの顔だとされていたタトゥーのすべてが、デイヴィッド・リー・ロスの顔であることが判明した。