Satire

Work–life balance

The president suddenly announced, “I throw away work–life balance — I will work and work and work and work.”

One employee asked, “Do we have to throw it away too?”

“If the president throws it away, what company is there where rank-and-file employees don’t?” the president replied. “You will work for the company, work and work and work. If not — you’re fired!”

After he left, the employees gathered to consult. “Is it burnable trash? Or bulky waste?” “Maybe it’s recyclable.” An old hand scoffed, “Don’t be ridiculous. It isn’t household garbage — it’s industrial waste.”

They rang the city environmental office, but no one there knew how to dispose of a work–life balance.

“Don’t ask the city — you’ll have to ask the government directly,” they were told, and they were out of options.

At their wits’ end, they hit upon a simpler plan than trying to throw away the work–life balance. In the dead of night they all went to the president’s house. He was drinking alone, dead drunk. While he slept, they wrapped him in a mat and threw him into Tokyo Bay. It was so dark that nobody could tell who had done what.

Note: “I throw away work–life balance” and “work and work and work” alludes to Prime Minister Sanae Takaichi’s inaugural remark (Oct 2025): “I will discard the term ‘work–life balance.’ I will work and work and work and work and work.”

風刺・戯文

ワーク・ライフ・バランス

社長がこんなことを言い出した。

「ワーク・ライフ・バランスを捨てて、働かねばならない」

社員の一人が言った。「私たちも捨てねばならないのでしょうか」

「社長が捨てるのに、平社員が捨てない会社がどこにある」と社長。「会社のために働いて働いて働くのだ。さもなければクビだ!」

社長が行ってしまうと、社員たちは集まって相談した。「燃えるゴミだろうか? それとも粗大ゴミだろうか?」 「リサイクルかも」 すると古株の社員が呆れたように言った。「バカなことを言うな。家庭ゴミなわけない。事業系ゴミだ!」

そこで、市役所の環境課に問い合わせたが、だれもワーク・ライフ・バランスの廃棄法を知らないのだった。

「市役所ではなく政府に直接に聞いてください」 こう言われてはもう打つ手なしだ。

困り果てた社員たちは、ワーク・ライフ・バランスを廃棄するよりも簡単なことを思いついた。真夜中、全員で社長の家に行き、酒を飲んで寝ている社長を簀巻きにして、東京湾に投棄した。真っ暗闇だったので、だれがなにをしているかだれにもわからなかった。

苦い文学

サ行

サ行音について、しばしば「最近、舌足らずの発音をする人が増えた」という人がいる。どういうことかというと、英語の three や third の th で発音する人がいるというのだ。

「舌足らず」かどうかはともかく、そういう発音をする人がいるのは私も知っている。それどころか、日本語の教材の音声でも「これ、th では」という発音がある。

それはともかく、英語では s と th の区別は大事だが、日本語はそうではないので s を th で発音しても大して困らない。これが、th の発音の原因のひとつだろう。

th といえば、この音は f にも似ているのだという。three の th は舌と前歯の隙間を息が通過するときに出る音だし、いっぽう f は、前歯と下唇の隙間を息が通過するときの音だ。どちらも 歯と柔らかい部分(舌か唇)で作る音だから、似ているのだ。

そこで、私は考えた。もしも s を th で発音する人がいるのならば、さらに進んで、その th を f で発音する人もいるのではないか、と。

そんな矢先、先の衆院選で立憲民主党の枝野幸男さんがインタビューに答えているとき、私の鋭い耳ははっきりと捉えたのだった。

「実際に(じっふぁいに)」

ふぇいじかの発言だけに、重みがあるといえよう。

苦い文学

被害者

僕らの町に被害者がやってきた。そりゃもう大歓迎だ。なにしろとてもひどい目にあった人だ。手を差し伸べないなんてどうかしてるよ。

それにしてもなんてかわいそうな人だろうか。僕らは自分の持てるものを持ち寄って被害者を支えることにしたんだ。

寺に使っていない納戸があるから、そこに住んでもらおう。僕らは蜘蛛の巣を払って、埃をこすり落とした。それからなんといっても食べ物だ。ちょうど倉庫に古米・古古米・備蓄米が余ってる。これをあげよう。

服も必要だ。僕らは町の人々に声をかけて古着を集めた。あっというまに段ボール箱に20箱。被害者は大喜びだ。

仕事は……というと、ちょうど草むしりの仕事がある。誰もやりたがらないけど、被害者の憂さ晴らしにはぴったりじゃないか……。

そして、2週間ほど経ったとき、とんでもない事実が明らかになった。

あの被害者、僕らのあげたお米や古着をネットで売って金儲けしてたんだ。被害者め、売り払って得た金で、新しい服を買っていたのだ。新米を食べていたのだ。肉なんか食べていたのだ。寺に厄介になっているというのに!

もうみんなカンカンだ。「被害者のくせに!」「金目当てだった!」「騙された!」「被害者なんかじゃなかった!」「ペテン師だ!」

被害者はせめて被害者らしくしてなきゃ。そもそも、こんなんだから被害者になったんじゃないか。

いい気味だ。

苦い文学

現代の弁慶ライフ

朝、電車に乗っていると、山伏のような異様な人物が乗り込んできた。まるで弁慶のようないでたちなのだ。

電車は都内に近づくにつれだんだんと混んできた。ドアの近くの席に座っていた私は、弁慶の様子をうかがっていた。この男、ただの乗客ではなかった。

普通、ドアの近くに立っている乗客は、乗り降りのさいに、脇に寄るか、奥のほうに進んだりして、邪魔にならないようにするものだ。場合によっては、いったん降りてドア付近を空けることもある。

だが、この弁慶、ドアの前からいっかな動こうとしないのだった。なので、乗降する人は身を屈めて脇を通り過ぎねばならなかった。

電車は満員になり、やがて、もっとも乗り降りが激しい駅に到着した。ドアが開くやいなや、いっせいに人が出口に動き出した。人々は前に立ち塞がる弁慶を小突き、押しのけようとしたが、弁慶は仁王立ちのままだ。

おお、彼はどれだけ迷惑だったことだろうか。乗り降りする人々の舌打ち、毒突き、罵りが矢のように襲うなか、彼はドア前を死守し続けたのだ。

「弁慶の立ち往生だ!」 傍で見ていた私は心の中で叫んだ……。

再びドアが閉まり、電車が走り出した。弁慶は相変わらずドアの前で踏ん張っていた。

降りる駅に到着したので、私は立ち上がった。彼の脇を通るのは少し不安でもあり億劫でもあった。だが、そこは彼の目的地でもあったらしい。彼は私より先に降り、ずんずん歩いて行ってしまった。

いっぽう、私は尿意を覚え、駅のトイレに駆け込んだ。列に並び、用を足し、改札口に向かった。

自動改札口を通るとき、端にある有人改札口で、あの弁慶が立っているのが見えた。

彼は、長々しい巻物を広げてなにやら読み上げていた。駅員は何とも言えない顔つきをして聞いていた。

苦い文学

リテラシー

ある識者によれば「ネット上の情報はすべて嘘」なのだそうだ。

確かに、インターネットに流布する情報のうちには、悪意ある虚偽も相当あるから、そのようにはじめから疑ってかかるのもありといえるだろう。

しかし、情報の真贋を見分けるいくつかの指標がないわけではない。こうした指標はリテラシーと呼ばれるが、私の場合は、誰がその情報の発信者であるかに留意している。具体的にいうならば、その発信者が、専門家であるかどうかだ。

例えば、今の天気を知りたいとしよう。まず、気候の専門家の監修するサイトAを見ると「晴れ」となっている。情報源の不明なサイトBでは「晴れのち曇り」だ。いっぽう、窓から外を眺めると、大雨が降っている。このうちどれが今の天気として正しいだろうか?

もちろん、お天気サイトAである。なぜなら、信頼できる専門家が関与しているのはこのサイトだけだし、私は天気の専門家ではないからだ。