Maarten Kossmann というベルベル語研究者が、『The Arabic Influence on Northern Berber』という本で、ラテン語からのベルベル語借用語について論じている。そして、猫派の私たちにとってありがたいことに、そこで cattus についても少し詳しく論じ、これと関係のあるベルベル語の語をいくつか挙げている。なお、ベルベル語は、ひとつの言語ではなくいくつもの言語に分かれる言語群だ。以下の括弧内はそのベルベル語の名前だ。
takaṭṭust (Ghadames)
qaṭṭús (Nefusa)
一応の経路としては、ラテン語の cattus がベルベル語に入り、kaṭṭus になり、それがアラビア語方言の qaṭṭūs に繋がると考えているようだが、実際の経路や順番は不明だとしている。
例えば、Nefusa のベルベル語で [q] となっているのは、アラビア語の影響では、と考えている。つまり、ベルベル語からアラビア語という経路だけでなく、逆の経路もありうるというのだ。
問題の us についてだが、他にも似たような us がつく語がある。チュニス方言でいうならば fallūs(ひよこ)は、ラテン語の pullus に結びつけられることも多い。
ベルベル語にも us で終わる語があり、これらは古い時代にラテン語からベルベル語に借用されたので us が残ったという解釈もありうるとしている。その場合、これがそのままアラビア語方言に受け継がれたと考えることもできる。もっとも、そうだとしても(6)で私が触れた疑問は残るのだが。
それはさておき、興味深いことに、Kossmann も cattus については、他の語とは少し違うと考えているようだ。というのも、これはラテン語としては後期の資料にしか出てこないため、他の us がつく古い借用語とは同じように考えることができないというのだ。要するに、わからないのだ。
私はこれまでしきりに不思議がってきた。これを不思議に思う人もいるかもしれないが、専門の言語学者も不思議がっているのだから、不思議でもなんでもないことなのだ。