風刺・戯文

独身をつらぬく男

こんにちは、独身をつらぬく男です。

現代の日本では、未婚率は年々上昇し、独身はすでに当たり前となりました。今やどこにでも独身が溢れています。独身の人々が人生を楽しんでいます。まるで、独身であることが、劣っていると見られていた時代などなかったかのようです。

「独身をつらぬく」とは、そうした古い時代の名残りです。そうした時代には、結婚だけが唯一の選択肢であり、それ以外の道を歩こうとするものは、大変な苦労をしたものでした。ですから、独身は「つらぬくもの」とされるほど、覚悟のいることでした。

現代は、そうした苦労がなくなったかわりに、独身をつらぬくこともなくなってしまいました。皮肉にも、独身の認められた現代ほど、独身をつらぬくのに困難な時代はないのです。

私、独身をつらぬく男は、今、この独身をつらぬく行為を復活させようと奮闘しています。現代では、それはほとんど不可能な行為かもしれません。ですが、試すだけの価値はある、と私は考えています。

なぜなら、不可能だとわかっていても真剣に挑み続ける、この私のひたむきな姿を見て、胸をときめかせる女性がきっといるはずでしょうから……。

風刺・戯文

インバウン人

私たちは、インバウン人。日本を外国の脅威から守るために、過酷な戦いを続けている。日本政府の特殊機関「Z」が、密かに開発した人間兵器が、私たちなのだ。

Zは、円の価値が下落し、安くなったニッポンを買い漁る外国人観光客を撃退するために設立された。このZが、国家存亡の危機において最初に戦線に投じた兵器が、インバウン丼だ。

インバウン丼とは、身の毛もよだつ高額の価格によって、おぞましい外国人観光客の資金を奪い取ることを目的に開発された、見る目もおいしそうな海鮮丼だ。この兵器は、当初は期待通りの活躍をしてみせた。外国人観光客の資金力に打撃を与え、日本国内での収奪に歯止めをかけたのだ。

だが、円安のスピードがインバウン丼の効果を遥かに超えるという予想外の事態が明らかになると、Zは、私たちインバウン人の開発に乗り出し、実用化に成功したのだった。

私たちは今、日本のあちこち、とくに新宿や渋谷などの激戦地区で、外国人観光客に対する捨て身の攻撃を繰り返している。私たちは日本を守るために死ぬことを厭わない。なにも知らない日本人たちは、インバウン丼を軽蔑したように、私たちを軽蔑しているが、それは私たちの尊い任務を汚すものではない。

私たちには親もいなければ、家族もいない。Zだけが私たちのことをわかってくれる。Zだけが、私たちの流した血と涙に、どんな外国人観光客も払いきれないほどの価値があることを教えてくれた。

私たちは日本のために死ぬだろう。そして、Zが約束してくれたとおり、靖国で安らうことだろう。

風刺・戯文

読者の皆様へ

【読者の皆様へ】
本作品には、差別や偏見を助長するような表現、言葉、言い回し、慣用句、罵詈雑言などが含まれています。

そして、これらの表現や言葉は、あくまでも表面的なもの、というわけではなく、作者の偏見や差別意識の明確な表れだということは、作品全体をよく読めば、否、最初の1ページ目を読んだだけでも、明らかです。また、作者が、差別や偏見に対して抗議するどころか、面白半分にこれを煽っていることも、読者の皆様ははっきりと読み取られることと思います。

これらの表現は、これが書かれた現在、そしてこれが書かれる以前の過去、そしてこれが書かれたのちの未来(おそらく今後人類が存続する全期間)においても、決して許されるべきではありません。

しかしながら、こうした作品を出版するさいにこのような「読者の皆様へ」的な文を末尾に掲載すれば、どのような差別的な表現も可能であるどころか、出版社が真剣に差別に向き合っている感も演出できるとのことなので、私たちはこのような小文を掲載し、本作品を刊行することとしました。

読者の皆様におかれましては、どうぞご理解いただけますようお願いいたします。

風刺・戯文

改姓専門弁護士

熊谷さん「猟友会に撃たれたらと思うと心配で……」
森田さん「マナーの悪いソロキャンパーが火の不始末をしたせいで火事になったら?」
寒川さん「『地球温暖化なのにまだその苗字?』と笑われました……」

そんな悩みのある苗字のみなさん、専門の弁護士にどうぞご相談ください! 苗字変更実績ナント1万件!

【お客様からの感想】
「いまどき井戸など不要と思い、ご相談しましたところ、たちまち変更できました!」(原さん、旧姓:井原)
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【改姓トラブルにも対応!】
「財政再建のため合併したところ、新しい市の名前をめぐってトラブルに。弁護士先生のおかげで無事解決しました!」(な行市さんたち、旧姓:中村、西村、沼村、根村、野村)

改姓といえば「いばりかわ弁護士事務所」!

風刺・戯文

見失った羊

(朝、押しつぶされそうなほど満員の通勤電車が急に停止し、アナウンスが流れる)

ただいま、停止信号のため、緊急停止いたしました。信号が変わりしだい、運転を再開いたします。

(ざわめく車内)

ただいま、線路内に人が立ち入ったとの情報が入りました。安全の確認が取れるまで、しばらくお待ちください。お急ぎのところ、電車が遅れまして、まことに申し訳ありません……安全の確認が取れたため、線路内に立ち入った人の捜索を開始したとのことです。

(車内に怒りの声が上がる)

お急ぎのところ、申し訳ありません。現在、捜索中とのことです。聖書に書いてあるとのことですが、昔、百匹の羊を所有している人がいたそうですが、そのうちの一匹がいなくなってしまいました。そこで、その所有者は、残りの九十九匹をほったらかしにして、見失った一匹を懸命になって探し、ついに見つけました。

(苦しくなった乗客が喘ぎはじめる)

所有者は、大喜びでその羊を連れて帰ると、友人や近所の人々を呼び集めて、羊が見つかったお祝いをしたそうです……再び情報が入ってきました。どうやら無事に保護されたとのことです。運転再開までしばらくお待ちください。

(ほっとする乗客たち)

見つかったお祝いが終わりしだい、発車いたします。

(罵声、悲鳴、絶叫)

風刺・戯文

宇宙人は人類を監視している

近年、世界各地で UFO の目撃が相次いでいますが、これは UFO に乗った宇宙人が私たち人類を監視しているからでしょう。

それは、UFO の目撃地点が、核施設、大規模テロの現場、戦場などに集中していることからも明らかです。宇宙人は、人類が核をどう使うかに関心があるのです。はっきり申し上げれば、人類が愚行によって滅びないように、監視を続けている、ということです。では、どのように彼らは人類を監視しているのでしょうか。

UFO から目視によって監視しているに違いない、そう思う人もいるかもしれません。それは確かにそうなのですが、考えてみてください。宇宙人は人類よりもはるかに進んだテクノロジーを持っているのです。高度な技術によって、人類のあらゆる場面を記録し、分析している可能性のほうが高いのです。

つまり、ここにいる皆さんの日常のすべてがモニタリングされているのです。これは、今後、宇宙人が私たちと接触してきたときに、大きな問題となると思います。

なぜなら、宇宙人が行なっていることは、盗撮にほかならないからです。これは迷惑行為防止条例と軽犯罪法に抵触する犯罪行為です。それだけではありません。全人類ということを考えると、当然、未成年者も含まれますから、児童ポルノ製造等罪にも関係してきます。仮に「不特定または多数の者に提供する目的」で宇宙に公然と送信したとなれば、天文学的な重罪となるでしょう。

もちろん、これらの法律の対象はあくまでも人類であり、宇宙人ではありません。ですが、宇宙人の盗撮が見逃されるのというのは、不公平な話です。全宇宙を視野に入れた法整備が強く望まれるところです。

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スキマ人

貧富の格差がますます広がり、貧困層はもはや本業だけでは生きていくことができなくなった。いまやスキマ時間を活用して稼ぐしかないのだ。

スキマ時間で稼げるような仕事はスキマの仕事だった。人々は、スキマを見つければ見つけるだけ金になることを知った。スキマこそ金だったのだ。人々はスキマの仕事を求めて、社会のスキマの奥へ奥へと入り込んでいった。

そのいっぽうで、富裕層の世界も激しく変化を遂げていた。進歩したテクノロジーによって富裕層はますます豊かになり、超高性能 AI が貧困層の本業を根こそぎ奪っていった。本業を失った貧困層に残されたのはスキマだけであった。

貧困層は、さらなるスキマを目指した。社会の最奥に沈潜し、知覚の閾値以下の空間に身を隠した。スキマに適応して進化した結果、貧困層は完全に社会から見えなくなった。富裕層は貧困層の存在を感知することもできなくなった。

貧困層は極小のスキマでのびのびと手足を伸ばし、繁殖し、発展し、やがて独自のスキマ文明を築き上げた。

そして———世界をスキャンする富裕層のある科学者が、不可解な生命反応を観測した。科学者は分析のすえ、次のような結論に至った。

「この世界には私たちとは異なる生命体が潜んでいる。私はこの生命体をスキマ人と名づけよう。もし、ファーストコンタクトが実現すれば、私たちはこの知的生命体から高度な科学を学ぶことができるかも知れない」 

科学者がそう発表すると、富裕層の社会は猛烈な批判を浴びせかけた。科学者は学会を追放され、地位も信頼もすべてを失った。そして、ある日突然姿を消した。

弟子たちは、科学者がスキマに消えたと証言している。

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悪の王宮

悪邪帝国 どくろ大帝様

玉座前落下装置修理報告

【故障の現状】
玉座前面に設置された床面開閉式落下装置(バネ式)の床蓋が閉まらなくなった。

【経緯】
先月、裏切り者を落とそうと玉座の肘掛け突端部のボタンを押したところ、勢いよく開かずに、途中で止まってしまった。そのため、裏切り者が地下の穴に落下せず、玉座の利用者様(大帝様)に襲いかかった。周囲の悪の子分たちが直ちに八つ裂きにしなければ危ないところであったとのこと。

床蓋は半開きのままとなり、ボタンを押しても作動しない状態。

また蓋が開きっぱなしのため、地下孔に落とされた数々の裏切り者の死体から発せられる腐臭が王宮中に漂い、悪の活動に支障が出ている。

【故障の原因と修理】
装置の歯車・バネ部に人骨が挟まっていたのが原因であった。脱出しようとして巻き込まれたと考えられる。障害物を取り除き、グリスアップを行なったところ、問題なく開閉できるようになった。なお、歯車とバネには再発防止のため防護カバーを取り付けた。

腐臭については一時的な措置ではあるが、防臭剤(家庭用)を投下。

【今後の提案】
今後も同様の事象が起こる可能性があるため、落下装置の電動化を提案。また異臭対策のため、地下孔に超大型ディスポーザと浄化槽の設置を提案。

(修理担当者の名前と印)
*担当者が電動化とディスポーザの見積もりをお客様にお示ししたところ、逆鱗に触れ地下に落とされたため、支店部長が代筆。

風刺・戯文

北朝鮮の拉致問題

北朝鮮の拉致問題ほど私たちを怒らせるものはないのだ。被害者たちとその家族はどれだけ悲しい思いをしたことだろう、悔しかったことだろう。日本人がないがしろにされコケにされているのだ。しかし、政治家たちときたら、口先ばかりでいっこうに進捗なしだ。業を煮やした私たちはついに自分たちで政党を作った。日本のために尽くす本物のリーダーが率いる偉大なる政党だ。

私たちはこの偉大な政党が政権を取るためになんでもした。GHQ の押し付けた公職選挙法などなんの意味があろうか。力のあるものがありとあらゆる手段を使って勝つ、それだけが法だ。

そして、ついに偉大な政党の政権が樹立された。私たちはこの時から北朝鮮との、そしてその背後にいる中国とアメリカとの全面戦争に突入したのだ。

偉大な政党は必ず戦争に勝つ。だが、そのためには私たちは偉大な政党にすべてを捧げなくてはならない。私たちは財産と基本的人権をすべて政府に供出した! そして、日本に巣食うありとあらゆる敵を逮捕し、ガス室に送った! 偉大な日本の時代が始まったのだ。

そして今、偉大な日本で私たちは痩せ細り、餓死寸前だ。互いに憎み合っているから、力を合わせることもできない。軍人たちに殴られ通しで、いつもコブだらけだ。

「拉致被害者を取り戻す前に、日本人全員が北朝鮮に拉致されてしまった」

これが私たちの最新のジョークだ。

風刺・戯文

家庭裁判所

日本の政治家や野球選手は、不倫や性加害などのスキャンダルが発覚したとき、追及をうまく切り抜ける方法を知っている。その方法とは、追求が始まったらこんなふうにいうことだ。

「妻に怒られた」「妻に叱責された」「バカだね、と奥さんに怒られた」……

言い方はいろいろあるが、我が国のジャーナリストたちはこれを聞くと「なーんだ、もう怒られたのか、じゃあ追求はやめにしよう」とか「てことはもう奥さんの許しは得ているのだな、もう非難はやめだ!」と考えて、追求の矛を収めてしまう。

こうしたことが起こるのは、我が国では、妻が司法の一翼を担っているからだ。そして、この妻が裁判官を務める司法機関が家庭裁判所である。我が国の優秀なジャーナリストたちが、あっさりと追及をやめてしまうのは、すでに家庭裁判所において妻によって審理がつくされた訴訟を、家庭の外で蒸し返すのは、おかしなことだからだ。

さすがに法治国家だけあって、一事不再理の原則が徹底しているというべきだろう。