苦い文学

韓国アイドル・グループ

もしもあなたが自分の子どもを忍耐強く、落ち着いた心の持ち主に育てたいのならば、韓国アイドル・グループのファンにするようお勧めする。

なにしろ韓国アイドル・グループのファンときたら、ただの1秒も心の休まる暇がないのだ。

新曲発表を「カムバック」と呼ぶのは K-POP の慣習であるが、韓国アイドル・グループでこのカムバックを順調にしてくれるのはほんの一握りに過ぎない。あとのグループはといえば、ただひたすら待ち続けるだけ。ひどいときには1年、2年、いやそれ以上もだ。なんと忍耐がいることだろうか。

なかには、ついにカムバックのとき来らずして、解散してしまうグループだっていくつもある。だから、ファンは「カムバ」との公式発表を聞かないうちは生きた心地もしないのだ。

さらに、ファンの心胆寒からしめるのが、契約更新だ。K-POP グループの契約年数は7年と法律で決められていて、これが更新されるかされないかが大問題となる。というのも更新されなければほぼ解散だからだ。そんなわけで、韓国アイドル・グループのファンはその時期が近づくと、もうヤキモキして眠れないほどだ。

これ以外にも、事務所とのトラブル、兵役、体調不良、謎の脱退、スキャンダル発覚、過去のいじめの告発、「極端な選択」など、心配の種は尽きない。

こんな危機また危機の状況で、韓国アイドル・グループのファンを1年も続ければ、もうその子は間違いない。どんな不安にもへこたれない立派な若者に成長することだろう。

苦い文学

最強にハッピーな兵士

僕たちの仕事っていうのは、きついし、理不尽なこともいっぱいある。「配置された小隊で咲きなさい」だなんていうけど、心が折れそうになることもしばしば。

でもそれでもなんとかやっていられるのは笑顔があるから。そう思うと、ホント「笑顔って最強の武器」。この武器があれば、絶対に負けないね。

笑顔になれないときでも、口角を上げることが大切。そうすると自然と心まで笑顔になるし。

「彼は手をあげて志願した。彼は銃口をあげて戦った。そして彼は口角をあげて死んだ」

こんな最後だったらいいね。単に戦うだけじゃダメで、想いがなくっちゃ。それこそ「並の兵士は弾を込めるが、良い兵士は想いを込める」だ。

そのためにも銃はちゃんとしておかなくちゃ。「銃磨きは自分磨き」というから、銃の手入れをしたら、自分らしさに磨きがかかったかな、なんて思ったり。

ハッピーでいるためには自分磨きも大事だよね。自分らしくいたいもの。あと、忘れちゃいけない、大事なのは仲間たち。「ハッピーな兵士の3つの特徴」がまさにそれだと思ってる。

ハッピーな兵士の3つの特徴
①『隊長が推しです!』といえる。
②『仲間も推しです!』といえる。
③『推しのためなら死ねる!』といえる。

絶対死ねる。僕はただの兵士で難しいことはわからないけど、絶対に死ねる。自信ある……

(『将軍を信じなくてもいい。将軍に信じられる兵士になりなさい』より引用)

苦い文学

カーッペッ!

「カーッペッ!」と喉を鳴らす音も高らかに勢いよく痰を吐くのは、吉田二郎さん。「ここまで来るのにずいぶん苦労しました」とスッキリした顔で微笑みます。

吉田さんが痰吐き技術の再現に取り組んだのはおよそ2年前のこと。たまたま訪れた山奥で、勢いよく痰を吐く老人たちに出会ったのがきっかけでした。

「昔は東京のどこでも痰を吐く人を見かけたものでした。ですが今は……」と肩を落とします。

痰吐き衰退の原因について専門家はこう述べます。

「都会から痰吐きが姿を消した要因は、健康状態の改善、大気汚染の解消、社会の衛生化の傾向、喫煙率の低下などが挙げられる。つまり、現代ほど痰が絡みにくい時代はかつてなかったのである」

そこで吉田さんが思いついたのが、痰吐きの復活でした。今では、吉田さんの活動に共感する仲間たちが集まって、痰吐きの技を磨き合うようになりました。

「カーッペッ!」「お! 上手上手!」「いやそれほどでも」「じゃあ、今度は痰壺めがけてやってみようか」

「昔はどの駅にも必ず痰壺が置いてあったものです」と吉田さんは懐かしそうに語ります。「あの頃は日本が元気でした。その元気の象徴が痰吐きだったのです。これを次世代に伝えていくのが私たちの役目です」

近いうち、東京のあちこちで「カーッペッ!」という威勢のいい音が聞こえるようになるかもしれません。

苦い文学

魔の信号

横断歩道で信号は赤だが、あなたはどうしても渡りたい。車が走っていなければ渡ってしまうし、ひっきりなしに通るようであれば、諦めて青になるのを待つ。

問題は車が散発的にやってくる道の場合だ。車通りが途切れたときを狙えば、赤信号など無視して渡ってしまえるかもしれない。

そこで、あなたは左右から迫り来る車を窺いながら、渡る機会を狙い続ける。だが、なかなかそのチャンスは来ない。右が空いた、と思っても、左から車が飛ばしてくる。左が途切れた、と右を見ると3台ばかり連なっていて、これらが通り過ぎる頃には、左のほうから何台も接近中だ。

だが、やがて、左右のどちらからも車の来ない瞬間が来る。あなたはその隙をついて横断を始めるが、前を向いたあなたは気がつくのだ。信号がすでに青に変わっていることを。いや、あなたが渡り始める前にもう青に変わっていたかもしれない。少しでも早く渡ろうという努力が、結局あなたを出遅れさせたのだ。

赤信号の間、左右の車に翻弄されるかわりに、おとなしく待っていたほうが、どれだけ有意義に時間を過ごせたかもしれない。だが、時すでに遅しだ。

あなたは信号を出し抜いてやろうと躍起になっていたが、結局のところ、信号にしてやられたのだ。

これを魔の信号と呼ばずしてなんと呼ぼう。

苦い文学

女たちは怒っている

街を歩いていたらデモ隊にでくわした。手に掲げたプラカードにはこんなふうに書かれている。

「女たちは怒っているぞ!」 「女に対する差別を許すな!」

私も性差別の問題に対しては関心を持っているから、応援する気持ちで見つめていると、別の方向から新たなデモ隊が合流してきた。やはり同じようにプラカードを掲げていたがこんなふうに書かれていた。

「男たちは怒っているぞ!」 「男に対する差別を許すな!」

いわゆる「逆差別」の問題も扱っているのかな、と思って見ていると、デモ隊は新たなプラカードを掲げた。

「女たちと男たちは怒っているぞ!」 「女と男に対する差別を許すな!」

「女と男に対する差別」? 私はやや混乱し、デモ隊の後方にいる人に近づいて尋ねた。

「これは一体どんなデモ活動ですか? 女と男に対する差別とは?」

その人は私に「このニュースを見てください!」とチラシを見せた。

《刃物男を取り押さえ けが人も》
6日午後11時40分ごろ、駅ホームで「男が暴れている」と110番があった。男ははさみを持っており、警察は男の身柄を押さえ、保護した。現場に居合わせた若い男性が手に軽いけがをしており、男がはさみで切り付けたとみて、傷害容疑なども視野に男から事情を聴く方針。

《20億円以上だまし取っていた詐欺グループの女逮捕》
架空の投資をもちかけ、20億円以上をだまし取っていた詐欺グループの女が逮捕された。女は、自営業の女性に、うその投資メールを送るなどして、およそ200万円をだまし取った事件に関与した疑いが持たれている。

その人は憤まんやるかたないという表情で語った。

「ひどいもんではありませんか! どうして女と男はいつも犯罪者なのです? いったい女性と男性とどう違うのです? 『もう我慢できない!』と全国の女と男が立ち上がったのです!」

苦い文学

オニスタグラム

Instagram に上げる写真には、自分がもっとも昂揚した瞬間が写されている。

それは、異国の景色や美しい風景から受ける感動だったりするが、そうした瞬間はめったにない。そこで、我々はもっとありふれた瞬間で手をうつことになる。

そうした瞬間のうち、もっとも手軽で、なんの苦労もいらないのが食べ物の写真だ。毎日必ず出くわすものだし、自分で作る必要もない。注文して、出されたものをパチリとすればそれで完成だ。

そもそも、人間は食事を前にした時がいちばん高まるのだ。Instagram が食べ物の写真で溢れるのも当然といえば当然といえる。これは別に悪いことではないが、ひとつ困ったことがある。

食べ物の写真を上げる習慣が広まったせいで、食べ物を前にして写真を撮らないというごくごく当たり前の行為が、今度はその食べ物に対する不満を意味するまでになってしまったのだ。

そのせいで、このまえ食事をごちそうになったとき、ただその誤解を避けるためだけに、私は写真を撮らざるをえなかった。

それはさておき、鬼たちの世界にも Instagram があって、やはり大流行りだ。

鬼たちの投稿を見てみると、どの鬼も、人間の写真を何枚も上げている。

人喰い鬼も、われわれ人間とそう変わらないようだ。

苦い文学

落とし込み

「最近、ふさぎ込みがち」「がっくり落ち込んで、なにもやる気がおきない」

病気? うつ病? それにしても、ああもう、生きていても……

ちょっと待ってください! その症状、もしかしたら、妖怪「落とし込み」のしわざかもしれません。

【妖怪「落とし込み」とは】
あれを落とし込め、これを落とし込め……なんでも落とし込まずにはいられない日本の企業文化が生み出した恐ろしい妖怪、それが「落とし込み」だ。人間たちの気持ちを落とし込んで、落ち込ませて、死に追いやるのがおもな特徴。理由のない落ち込みはこの妖怪が原因だ。

【妖怪「落とし込み」に出会ったら】
暗がりを歩いているときに、この妖怪が「二回、落とし込まれるものはなんだ」と尋ねてきたら、こう答えよう。

「人間だ。生まれる時は母親の胎内に、死ぬ時は墓に落とし込まれるのだから」

この言葉を聞くや妖怪は消え失せるといわれている。

【妖怪「落とし込み」誕生悲話】
ひとりの若者が、なんでも落とし込ませたがる上司に苦しみ、命を絶った。その若者の無念の思いが妖怪の形に落とし込まれたのだという。

苦い文学

終末の鐘

私たちの社会ほど、子どもを憎んでいる社会はない。

ありとあらゆる知恵と技術と科学を動員して、子どもを苦しめることに夢中になっているのだ。

口を開こうものなら、うるさいと怒鳴りつけられる。元気よく走れば、騒がしい、とナイフ片手に脅される。どこに行っても厄介者扱いで、居場所はない。学校ではいじめや体罰が教育委員会のお墨付きで横行してる。

外を歩けば、老人が車で突っ込んでやろうと待ち構えてる。声をかけてくるのは、変質者か変態か性犯罪者か誘拐犯だ。これら剣呑な連中からどうにかこうにか逃げたと思ったら、車の中に閉じ込められて蒸し焼きになる始末。

便利であるべき携帯電話、パソコン、ゲーム、ありとあらゆる先端技術が、相手が子どもとなるととたんに牙を向く。子どもの未熟な脳を利用し、金を奪い、知性と精力を消耗させにかかるのだ。そして、ふらふらなった頭のたどり着く先は、電車への飛び込みか、犯罪の片棒担ぎだ。

世界中いたるところ、子どもの叫びが、まるでこの世の終わりの鐘みたいに鳴り響いている。

こんなでは、産まれないほうがマシではないか。少子化も当然ではないか。そして、産まれたとしても、ちょっと見ない間に、すぐ大人になってしまうのも当然ではないか。

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冷え込み

どうしていったん暖かくなったのに、急にまた寒くなったりするのだろうか。しかも、冬物をしまってからこういうことが起きるのだ。徐々に気温を上げることは不可能なのだろうか。

私ははじめはこれは気象庁の連中がやっていることだと思っていた。わざと急に温度を下げて、半袖姿の私たちがブルブル震えているのを見て、大笑いしているものとばかり思っていたのだ。

だが、最近、そうではない、と考えるようになった。気象庁の陰謀など、そんなことあるわけがない。

むしろ、私は、これは私たちの心の問題ではないか、と思っている。

たとえば春先に暖かい日が続くとしよう。私たちははじめは大喜びだ。冬物を片付けたり、クリーニングに出したりして、早くも半袖半ズボンで外に飛び出す。

だが、暖かい気候が数日続くと、私たちの心に不安が生じるのだ。「いや、こんな日がずっと続くわけない」「長袖をしまったのは早まったか……」

それどころか気温がぐんぐん上がり、汗ばむようになると、私たちは死刑宣告を受けたような気になる。「夏日だと? ということは次はもう冬ではないか!」

私たちの心が先に冷え込んでしまうのだ。そしてこのマインドの冷え込みが急な寒気を招くのである。

だから、心を強く持とう。一度上がった温度は絶対に下がらないと、私たちみんなで心から信じれば、きっと天気も応えてくれるはずだ。

苦い文学

はずしてもつけても

アナウンサー:公然わいせつ行為の疑いで、男(61)が逮捕されました。

(都内某所の繁華街の映像、記者が立っている)

記者:繁華街の真ん中で男は、不特定多数に対して露出行為を行なったとのことです。

アナウンサー:逮捕された自称・無職の男(61)は、午後6時ごろ繁華街の大通りで、若い女性たちの目の前で、露出行為を行なった疑いが持たれています。女性たちにケガはありませんでした。

(CG による再現映像:男が通行人の前でマスクを外す)

記者:警察によりますと、男は夜の大通りを徘徊し、露出行為に及びました。犯行を目撃した市民からの110番通報でかけつけた警察官に逮捕されました。

目撃者:女の人たちの悲鳴が聞こえたので、なにごとかと思って……ええ、びっくりしましたよ。

記者:調べに対し男は「マスクを外したのは間違いない」と容疑を認めています。

アナウンサー:犯行後、手際よくマスクで顔を隠そうとするなど、常習犯の可能性もあるとみて、警察は慎重に調べを進めています。