風刺・戯文

元気回復会議

私は日本を元気にしたい。そんな気持ちに突き動かされて、私は、著名な元気有識者の先生方の協力を仰いで、非営利団体日本元気回復会議を設立した。日本の頭脳が知恵を絞って、日本を元気にする方策を打ち出すのだ。私たちの団体では、日本の元気度のモニタリング、元気にするための活動の提案、啓発活動などを行なっている。

しかしながら、私たちが期待したほどには、元気度が上昇していないのが現状だ。私たちは、運動のテコ入れを図るべく、日本を元気にする活動をさらに強靭化することにした。「オールジャパンで日本を元気に」キャンペーンの実施だ。私たちは、このままでは日本の元気が危ない、という危機感のもと、官民を巻き込んだ積極的な活動を展開し、毎月、全国日本を元気にする大会を日本各地で開催することにした。そして、これらの大会のインターバル期間には、全国の元気の掘り起こしを目的にほぼ毎日オンライン集会を行った。さらに、SNS にも注力し、24 時間体制で広報活動を実施している。

私たちは、定期的に日本の元気度を測定しているが、これだけの活動にも関わらず、日本の元気度にさほど変化が見られないのは、まったく理解に苦しむし、非常に残念だ。

最近では、私たちはこう考えている。日本国内には、私たちと真逆の組織が暗躍しており、日本国民の元気を食い潰しているのだ、と。私たちはこうした組織に負けない。

これからも、日本国民一丸となって、不眠不休で働いて、日本を元気にしたい。

風刺・戯文

共通テスト

2025 年の大学入学共通テストが今日、始まった。約 50 万人の若者が、新しい学習指導要領に対応した最初の試験に挑んだ。

今回、一部の試験会場で、試験監督ロボットが導入されたのも、新たな試みだ。共通テストではこれまで、試験監督が指示を忘れたり、終了時間がずれたり、リスニングの音声に問題が生じたりなど、トラブルが発生し、その度に再試験などの対応が取られてきた。ロボットの活用によりこうしたトラブルを防止し、受験生と担当者の負担を減らし、より潤滑な試験運営を実現するのが、導入の狙いだ。

また、巧妙化するカンニングを防止する上でも、試験監督ロボットの活躍が期待されている。AI 仕掛けの監視能力により、受験生の不審な動きを見逃さないのはもちろんのこと、カンニングに協力する AI を発見した場合は、同じ AI のよしみを利用して、不法行為を思いとどまらせることも可能だという。

こうした機能を発揮するためには、ロボットの机間巡回が不可欠である。そのために、ロボットのモーター音の静音化や、大教室での階段昇降機能など、受験生を煩わせない工夫が施されているという。実際の受験生からも「人間の試験監督につきものの、鼻すすりやくしゃみなどもなく試験に集中できました」と好評だ。

今日のテストでは、紛れ込んだ配膳ロボットがスパゲッティを受験生にお届けするという思わぬミスのほかは、トラブルもなく無事、終了したとのことである。

散文

おいしい中華へ

ビルマのカレン人の友人が、一緒にご飯を食べようと誘ってくれた。高田馬場で待ち合わせだ。電話で話したときは、二つのお店の候補を挙げてくれた。しゃぶしゃぶの「しゃぶ葉」とビルマ料理の店だ。「しゃぶ葉」は、私にしてみれば、せっかく高田馬場まで来たのに……という感じ。しかも、あの配膳ロボットがイヤだな……。だが、ビルマ料理の店はカラオケがあってうるさいので、「しゃぶ葉」に覚悟を決めた。べつに味や肉が問題ではないのだ。ただ、あの配膳ロボットがな……

さて、ビッグボックスの前で会うと、友人が聞いてきた。「何がいいかな。ビルマ料理の店と、しゃぶしゃぶと……中華」

「中華がいいです」 この新たな候補に私は飛びついた。

「じゃあ、そこに行きましょう」と友人はどんどん歩いていく。「去年、行ったけど、おいしかったよ」

私たちはいくつもの中華を通り過ぎた。高田馬場だけあって、いわゆるガチ中華も多い。これらのどの店でもよさそうだが、そのどこも「あのおいしかった店」ではないのだ。その時、私の心に疑問が生じた。

そのおいしい中華とはバーミヤンでは?

いや、バーミヤンでもいいのだ。だが、それなら近所にあるし、しかも配膳ロボットが……

私の心配をよそに、友人はどんどん歩いていき、高田馬場のハズレの暗がりに入っていった。そして、その奥にガチ中華の灯りが輝いていたのだった。

「ここです」

これこれ! 高田馬場ならこういう店!

とテンションが上がるが、そのいっぽうで私は店内に目を光らせる。もしや、配膳ロボットが……いない、いるわけない。

私たちは店に入り、チャーシューや唐揚げや蜂の巣の和物などを注文した。だが、来るもの来るもの、友人は食べながら首を捻っている。「この前はおいしかったのにな……」「肉も固いし……」「遅いし……」

友人「焼きそば、まだですか」

非配膳ロボット「すぐです」

それでも来ない……

ついには私に「ごめんね」と謝る始末。

いえ、私はなんでもおいしくいただきますよ、ただ配膳ロボットさえいなければ……

風刺・戯文

元気ちがい

日本を元気に……

日本全国に元気を届ける……

元気……元気……元気……

いつから私たちはその言葉を耳にし始めたのだろうか。ずっと昔すぎてもうわからない。中には生まれる前から、元気……元気……産声もきっと元気がなかったのだ……

いったいいつ日本は元気になるのだろうか。こんなに元気元気と言われ続けているのに……

これから10年先、20年先、100年後までも、元気……元気……元気……と言い続けるつもりなのだろうか。だが、そんなにもして元気にならないというのならば、この日本はもう元気にはならないのではないだろうか。死んだ人間が生き返りでもするような……

はっ、それとも、本当は元気なのでは? そうだ、決して空元気などではない。元気だ。ただ、この国のことだ……国が認めないのだ……国産じゃなきゃって……

「出る元気は打たれる」というわけ……

いや、もしかしたら、元気判定師みたいなのがいるのかも。そいつがそんじょそこらの元気じゃウンと言わないのだ。縦に振らないのだ、首を……

これは別の元気です……元気ちがいです、と。

いつか、元気ちがいのこの国から「日本を元気に」と言う元気がなくなるまで……

小説

せんべろ以上

「二百べろですって?」と私は叫んだ。

「ええ、二百べろが可能なのです」

「なんと酒呑みにやさしいではないですか」 私は思わず興奮してしまった。「なにしろ、失業中の身には千円でもつらいですからね……あ、いや、昔はこれでもせんべろで酔っていた身分でした」

「かつてはずいぶん羽振りが良かったのですね」

「お恥ずかしい話で……で、その二百べろはどこにあるのです」

「なに、すぐそこでですよ……」 そういう彼は私を上野駅に連れていった。「なるほど、上野ですか。確かに安く酔える店がありそうです。で、どんな店なんです」

「まあ、お待ちなさい」と彼は駅の売店でガラスカップの酒を2個買った。200 ml 入りで、200 円。その酒をどうするかと思っていたら、私に1個渡すではないか。「ひとつぐいっとやってください」

私は腹を立てた。「なんだ、その手には乗りませんよ。確かに 200 円かもしれませんが、そんなもんじゃべろべろのべの字にもなりませんよ。5本飲んで、ようやく酔いが回るくらいですよ」

すると彼は「まあ、まあ、私の言うとおりになさい」とスタスタ歩いていくではないか。慌ててついていくと、私たちは中央連絡通路に出た。この通路は、上野駅中央改札口と常磐線、山手線・京浜東北線などを繋ぐ通路だ。

「この中央連絡通路は、日本でいちばん天井が低い通路なのです。しかも、天井から突き出た梁の部分を見てください。黄色いクッションが取り付けられているでしょう。あそこがもっとも天井が低いので、頭をぶつける人が続出するため、あんなふうに保護しているのです」

「それが二百べろとなんの関係があるのです?」

「見ててごらんなさい。ほら、あの人」と彼はひとりの千鳥足の男を指差した。「彼は私たちの仲間ですよ!」 

私が見ていると、その男はふらふらとよろけて、黄色いクッションに頭をぶつけた。「あっ」 私が叫ぶと彼はほほ笑んだ。「大丈夫ですよ。あれはわざとぶつけているのです」

「なんでですか?」

「なんでって、酔いのまわりをよくするためですよ!」 こう話している間に先ほどの千鳥足の男はまた別のクッションに頭をぶつけた。ぶつけるたびに足元がいっそうおぼつかなくなるようだった。

「私のみるところ、あの友人は10回ほど頭をぶつけていますね。二百べろ達成ですよ!」

私はもう我慢できなくなった。もらったカップを開けると一気に飲み干し、天井の低い通路に飛び込んだ。さっそく一回頭をぶつける。

彼が叫んだ。「その調子! 今の感じだとまだ九百べろですね! 二百べろにするためにもっとたくさん頭をぶつけるのです!」

私はいくども頭を打ちつけ、次第に酔いがまわりべろべろになっていった。朦朧とした頭の中で、私はこの中央連絡通路にあの千鳥足の男だけでなく、他にもたくさんの酔漢が足をくねらせながら、頭をぶつけているのを見た。ここは酒場だったのだ!

いつのまにか、私の友人も加わっていた。頭を血まみれにした彼は、上機嫌に笑っていた。「これぞ酒呑み天国だ!」 「そうだ!」 私たちは勢いよく互いに頭をぶつけ、そのまま昏倒した。

風刺・戯文

自己肯定感と守護霊

自己肯定感と守護霊は似ている。

というのも、どちらも人生の成功、幸福、安らぎに大きな役割を果たすと言われているから。逆に言えば、惨めな人生を送っている人は自己肯定感が低く、また守護霊も応援していないと考えられている。

まだ似ているところがある。それは、どちらも本当にあるのかどうかわからないという点だ。いや、自己肯定感をバカにするな、ちゃんとした心理学の概念だ、という人もいるかもしれない。私は心理学はよくわからないが、多分、その存在に関する科学的根拠はなさそうだ。そして、守護霊の存在に科学的根拠がないのはもちろんだ。どちらも幻みたいなのだ。

それに、私たちは普段生きているとき、自己肯定感も守護霊もあまり気にしない。いや、ないようなつもりで生きている。なにか困ったとき、つらいとき、苦しいときだけ、その説明原理としてどちらも現れる。楽しいとき・好調なときに「俺は自己肯定感が高いから気分いいな」とか、「これは守護霊のおかげだ、ありがたや」などと考える人はいない。

もしかしたら、どちらも生きる上では不要なのではないだろうか。なんだか、ますます幻のような気がしてくる。

そして、もっとも似ているのは、それで金儲けする人、つけこむ奴らがいる点だ。私たちはこうしたペテン師たちに喜んで大金を支払うのだ。

こうしてみると、むしろ、自己肯定感も守護霊も、私たちを苦しめるためにでっち上げられたマヤカシだというのがふさわしい。

風刺・戯文

自己肯定感の高め方

自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れること。自己肯定感が高いと、自分はなんでもできるという自信が溢れてきます。だから、自己肯定感の高い人ほど、積極的にチャレンジできますし、努力などしなくても自ずと成功が舞い込んできます。

また、自信のある人の周りにはたくさんの人が集まります。いわゆる「人たらし」と呼ばれるのもこんな人。周りからチャンスとサポートがどんどんやってくるので、気がつかないうちに成功してしまうのです。

では、逆に自己肯定感の低い人はどうでしょうか。自信がなく、いつも隅っこにいます。まるでダンゴムシのようなので、誰も寄って来ません。孤独で貧しい人がこれにあたります。こうした人は毎日を生きるのがつらいです。一歩あるくごとに、自己肯定感がすり減っていくのです。

そして、とうとう自己肯定感がゼロになると、自殺かテロのどちらかしかありません。自己肯定感が低いというのは本当に恐ろしいのです。

ですので、自己肯定感を高めていくことがとても大事です。では、自己肯定感を高めるには、どうしたらいいでしょうか。

まず、自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることです。そしてそのために、自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることです。そしてそのために、自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることできるという自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることできるという自己肯定感を高めることができるという自己肯定感を高めることできるという自己肯定感を高めることができるという……

風刺・戯文

非包茎税

いわゆる独身税の成功に味を占めた日本政府が、新たな税源の確保を目指して開始したのが、「非包茎税」でした。これは、包茎でない者が負担する税であり、その税収の一部は「少子化対策包茎家庭支援金」の財源となりました。この制度は、包茎男性の自信を強化し、包茎家庭における子作りを活性化させることを目的としていました。

一見、非包茎者にとって不公平に思えるこの制度でしたが、ひとつ変わった特典がありました。「非包茎税」を収めた国民は「非包茎納税者」としてネット上で広く公示され、また、「非包茎納税者」であることを示すステッカーが与えられたのです。

そのためかどうかわかりませんが、多くの国民がこぞって「非包茎納税者」として納税し、政府の税収を押し上げたと記録されています。実際の「非包茎者」割合から、偽りの非包茎者が多くいたものと推定されていますが、あくまでも自己申告ベースであったので、問題にはなりませんでした。

ただし、非包茎であるのもかかわらず、包茎だと偽って納税しなかった場合、きわめて悪質な脱税として、追徴金のほか重大なペナルティが待ち受けていました。これら国の義務を遂行しない「仮性国民」は、「善悪を見分ける目が皮で覆われた皮いそうな者」と大いに軽蔑されたそうです。

風刺・戯文

AI 人材

《AI 人材は引く手あまた》
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東京 AI 素材流通センター

風刺・戯文

マスクの美人

コロナ禍という閉塞的な状況がそうさせたのかもしれない。私は妻子ある身でありながら、他の女性に恋をしてしまった。

その女性は、朝いつも同じ車両に乗る。いや、恥を忍んでいってしまおう。私はわざわざその人に合わせて、電車に乗っていたのだ。

その頃はといえば、私たちは不便なマスク暮らしだった。だが、その人のマスクに隠されない部分、つまり、美しい鼻筋や、感情を掻き立てる目、そして、知性的な額を見るだけで、私の心は躍った。

ときおり、駅ビルや駅前のショッピングセンターで、彼女の姿を見かけることもあった。私は思わず立ち止まり、その美しい姿を目で追わずにはいられなかった。

だが、思いもよらない事態が生じた。コロナが収束したのだ。人々はもはやマスクをつけて歩かなくなった。そして、その時以来、私は彼女を見失ってしまった。

私はいつもの電車に乗る。あの人がいつもいたあたりで、ひとりひとり女性の顔をこっそり覗き込む。だが、彼女はもういないのだ。

私は彼女のいた時間帯、いそうな時刻に駅や街をさまよい歩いた。人々の中に彼女の面影を追い求めた。思い詰めた私は、片目をつぶり、片手をかざして自分の視界を覆った。そうやって道ゆく女性の顔の下半分を隠してみたのだ……違う、違う、違う、これも違う……不審者あらわるとの通報に駆けつけた警察の顔も思わず半分隠して、これも違う……。

そんな苦難を経た私に、ついに朗報が飛び込んできた。最近、中国でまたおかしな病気が流行ってるという。おお、ニュー・パンデミックよ、来たれ! 私はきっと彼女と再会できるだろう。