ライブ

黙ってお三味を弾いてくれ(7)

卒業発表会まであと一ヶ月というころ、毎日の練習の甲斐あって、私はようやく合奏のジャマをしない程度に弾けるようになった。うまく弾けないところもたくさんあるが、「間違えても、間違えてないという顔で弾くのが大事」という三寿々先生の教えを胸に刻んでやるしかない。

だが、そんなとき、とんでもないことが持ち上がった。

義太夫教室の卒業発表会は、私たち第 77 期受講生だけでなく、過去の卒業生たちも演奏を披露する場だ。第 46 期の卒業生という大ベテランも参加する。プロとして活躍している太夫や三味線演奏家もサポートとして出演する。単なる素人の出し物ではない。義太夫節の伝統をつなぐ場だ。

プログラムを見ると、最初の演目は「太棹メドレー」とある。つまり、私たちの演奏だ。メドレーでは、短い曲を 9 曲、7 人の受講生が順番に掛け声を担当することになっていた。私は、2 番目の曲と、最後の曲の担当だ。

ところが、1 曲目の掛け声担当の方が、体調の問題で参加できなくなった。それで、代わりを務めることになったのが私だ。

これが何を意味するかというと……

伝統ある卒業発表会の、最初の演目の、最初の掛け声、つまり大事なイベントの開幕を告げる「ハッ」を、私が発するということになったのだ。

震え上がったのはいうまでもない。

苦い文学

バブルのトラウマ

私たちはバブル崩壊以降、なんでも膨らむものに警戒するようになってしまった。なぜなら、それは必ず破裂するからだ。バブルの破裂があまりにも衝撃的だったため、網で餅を焼くのさえ怖くなってしまった。アツモノに懲りてナマスを吹くありさまだったのだ。

経済のどんなに小さな膨らみでも、私たちはもうドッキリ番組の巨大風船のようにハラハラしてしまう。大慌てで叩き潰さずにはいられないのだ。

もう膨らむ経済はゴメンだ。だが、どうしたらいい? 私たちは考えに考えた末、ついに結論に到達した。経済を回すのだ。それ以来、私たちはシャカリキになって経済を回してばかりいる。

そんなとき、中国でどんどん富豪が誕生し、裕福な中国人が爆買いにやってきた。経済を回すのにかかりきりで飲まず食わずの私たちは、回す手を休めて、こうつぶやいたものだった。

「かわいそうに、そのバブルはきっと破裂するのに」 そして、私たちは再び経済回しに取りかかった。だが、それから何年経ったことだろうか。中国のバブルはいっこうに破裂せず、その気配すらない。そのいっぽう、経済を回す私たちの腕は痩せ細り、目も回ってフラフラしている。

もしかしたら、と私たちは考えた。私たちは間違っていたのかもしれない。バブルとは崩壊するに決まったわけではないのでは? そうだ。破裂しないバブルもあるのだ!

私たちはもう経済を回すのはコリゴリだ。回せば回すだけ、経済は碾き臼のように私たちの体を粉砕していくのだから。やはり、私たちにはバブルしかないのだ。

バブルのトラウマはもう終わりだ。アツモノに懲りるのはやめよう。そして、ナマスを吹くその息で、世界一のバブルを膨らませよう。

苦い文学

秘策

過激な動物愛護団体は、日本人に捕鯨をやめさせるために、長年活動してきた。だが、知恵のかぎりを尽くしてイヤがらせや過激な妨害活動を続けてきたのに、まったく効果が上がらなかった。

そこで団体のリーダーは、身分をいつわって日本に入国し、何ヶ月もかけて日本人を徹底的に研究した。

そこまでした甲斐あってリーダーはついに秘策を得た。日本から団体のメンバーに連絡し、さっそく実行に移すことにした。

過激な動物保護団体はその潤沢な資金を使って、炎上まちがいなしの鯨画像を合成したのだった。

鯨が喫煙禁止区域でタバコを吸っている写真、鯨たちが旅館の障子を突き破って顔を出している写真、鯨が被災地でブランド物を身につけているセレブ写真……。

それから、それらの写真をありとあらゆるSNSで拡散した。

すると、たちまち炎上が始まった。写真を見た日本人が怒ることといったらなかった。

SNSはこんな批判で溢れかえった。

「鯨のファン辞めた」

「鯨の入った料理はもう食べない」

過激な動物愛護団体のリーダーは秘策の結果におおいに満足して日本を出ていった。

苦い文学

生まれなかった子どもたち

もしかしたらあなたも《未出生児給付金》の対象では?

下記のいずれかに当てはまる方は、給付金の対象となる可能性があります!

《経済的問題から親が出産を諦めて、生まれることができなかった。》
《社会情勢を悲観した親が出産を諦めて、生まれることができなかった。》

*「未出生児」って?
親が事情により出産費用を支払うことができなかったり、「こんな国では子育てはできない」などと親が悲観したりしたため、生まれることができなかった子どものことを未出生児といいます。

*「未出生児給付金制度」って?
出産費用の保険適用を進める政府が、保険適用がなかった期間における未出生児の機会損失にともなう利益逸失を補填するために始めた給付金制度です。

《相談無料! 費用無料!》
まずはお気軽にお問い合わせください!(ただし、給付金請求には期限がありますのでご注意ください。)

*「未出生児給付金制度」を騙った警告文・偽サイト・架空請求にご注意ください! 

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苦い文学

玉手箱効果

亀を助けたおかげで、竜宮城で夢のような日々を過ごしていた浦島太郎は、故郷が恋しくなって、帰ることを決意する。

乙姫は大いに残念がる。だが、結局のところ浦島太郎には浦島太郎の人生があるのだ。そこで、玉手箱を渡し「決して開けてはならない」と言いながら別れを告げる。

亀によって浜辺に送り届けられた浦島太郎は、村がなくなり、奇怪な建造物がいくつも立っているのに気がつく。あちこち尋ね回った結果、地上では700年も経っていたことを知って愕然とする。

砂浜にへたり込んだ浦島太郎は、玉手箱を開けようとする。すると、空からドローンに乗ったアンドロイドがやってきて、玉手箱と引き換えに金銀財宝を与えようと持ちかける。

浦島太郎は同意し、玉手箱をアンドロイドに渡す。アンドロイドはドローンに乗って飛び去る。

ドローンはその世界で最も高い塔のてっぺんに着く。その塔の上では、老人がベッドに横になっている。

これは世界を支配する独裁者で、2000年もの間、延命を繰り返しながら生き延びていたのだ。だが、ついに死が訪れようとしていた。

アンドロイドは独裁者の前で玉手箱を開く。白い煙が立ち上がる。

たちまち独裁者は700歳に若返りして、再び人類を残忍に苦しめはじめる。