風刺・戯文

デューティ・ヘイヴン

タックス・ヘイヴンとは、税金ゼロか、ほとんどかからない租税回避地のことです。納税の義務を回避して脱税したり、非合法な利益によって得た資金を洗浄する拠点となっていて、ときどきニュースになったりします。

このタックス・ヘイヴンの代表として知られるのは、ケイマン諸島、バージン諸島、ジャージー島などの島です。

ところで、最近、デューティ・ヘイヴンという言葉も話題になっていますね。これは責任回避地とも呼ばれていて、うまく利用すると、どのような責任も回避できたり、非合法な行為によって生じた責任を洗浄してキレイにすることもできるのだそうです。

実は、このデューティ・ヘイヴン、日本国内にもあるんです。

それは竹島と尖閣諸島です。

政治家たちは、自分の言葉や行為をこれらの島を経由させることで、責任を回避させたり、卑劣な意図をクリーンにしてみせたりしているのです。最近では、政治家たち、台湾までデューティ・ヘイヴン扱いにして、責任回避に利用しています。

では、どうして、島で責任を消したり、キレイに洗ったりできるのでしょうか。でっかいクリーニング工場が夜も昼も動き続けているということです。

それにしても、うっかり発言で戦争が起きたとしても、責任なしどころか、万歳三唱ときたら、死んだ私たちは浮かばれませんね。

苦い文学

悪の王宮

悪邪帝国 どくろ大帝様

玉座前落下装置修理報告

【故障の現状】
玉座前面に設置された床面開閉式落下装置(バネ式)の床蓋が閉まらなくなった。

【経緯】
先月、裏切り者を落とそうと玉座の肘掛け突端部のボタンを押したところ、勢いよく開かずに、途中で止まってしまった。そのため、裏切り者が地下の穴に落下せず、玉座の利用者様(大帝様)に襲いかかった。周囲の悪の子分たちが直ちに八つ裂きにしなければ危ないところであったとのこと。

床蓋は半開きのままとなり、ボタンを押しても作動しない状態。

また蓋が開きっぱなしのため、地下孔に落とされた数々の裏切り者の死体から発せられる腐臭が王宮中に漂い、悪の活動に支障が出ている。

【故障の原因と修理】
装置の歯車・バネ部に人骨が挟まっていたのが原因であった。脱出しようとして巻き込まれたと考えられる。障害物を取り除き、グリスアップを行なったところ、問題なく開閉できるようになった。なお、歯車とバネには再発防止のため防護カバーを取り付けた。

腐臭については一時的な措置ではあるが、防臭剤(家庭用)を投下。

【今後の提案】
今後も同様の事象が起こる可能性があるため、落下装置の電動化を提案。また異臭対策のため、地下孔に超大型ディスポーザと浄化槽の設置を提案。

(修理担当者の名前と印)
*担当者が電動化とディスポーザの見積もりをお客様にお示ししたところ、逆鱗に触れ地下に落とされたため、支店部長が代筆。

苦い文学

ハエの王

その小便器は、最先端の技術と周到な心理操作術の結晶であるばかりでなく、この世でもっとも恐ろしい産業製品と言われている。

はじめは、小便器の底に置かれた目皿の少し上あたりに1匹のハエが描かれているだけに見える。だが、私たちが、それに向かって排尿を始めるやいなや、そのハエは翅を振るわせ、便器の表面を動き回るのだ。

私たちがなおも追求をやめないと、そのハエは増殖する。2匹、6匹、15匹、もう数え切れないくらいだ。それらは便器の中をブンブンと飛び回り、私たちはもう排尿で狙い撃ちするのに夢中になる。

尿による攻撃がやまぬと見るや、ハエたちは私たちの唯一無二の「武器」に襲いかかろうとする。ここで怯んではいけない。尿を便器の外にまき散らしてはいけない。その瞬間、私たちはたったひとつの大事な武器を永久に失うことになる。ただ撃ち続けるのだ。

すると、おお、恐ろしいことに、ハエたちは便器の中央に集い、おぞましい顔に転ずるではないか。目はランランと燃え、口からは鋭い牙が突き出ている。

ハエの王、大悪魔ベルゼブブの登場だ。

ベルゼブブは、「ブブブブ」とけたたましいハエの唸り音を立てながら、その真っ赤な口を開け、炎の舌を突き出す。私たちの武器に食らいつこうとするのだ!

だが、恐れるな! 自分の排尿器官を信じるのだ! 私たちが、ひたすら尿を撃ち込めば、この大悪魔は崩壊をはじめ、最後はバラバラになってしまう! 

ついにベルゼブブを倒したのだ。かくして私たちの排尿は終わる。

この小便器が世界でもっとも恐ろしい製品だといわれるのももっともなことだ。この戦いに挑めるのは、人並み優れた勇気と、人並み大きな膀胱をもった者だけだといわれている。

苦い文学

靴紐

昨日靴紐のことを書いたが、それは靴紐が自ずとほどける神秘の現象について、社会の関心を惹起せんと試みたものであった。

それで私の目的は達成されたかに見えたのだが、今日、あらためて紐靴を履いて外出してみて、まだまだ惹起し足りぬの念が強くなった。それでこの現象について3点ほどの補足をしたい。

1.歩いていると、紐靴の紐が緩んできているように感じることがある。この時に、立ち止まって結び直したり、輪を引っ張って結び目をきつくしたりしてはいけない。そうすると、数歩のうちに必ずほどけてしまうだろう。触らなければ決してほどけなかったのだ。

2.緩くなっていると感じていない時には、なおさら結び目を触ってはいけない。そうすると、数歩のうちに必ずほどけてしまうだろう。

3.片方の紐靴はしっかり結ばれているのに、もう片方は緩くなっていると感じることがある。歩くと気になってくるが、こういう時も直そうとしてはいけない。もし、緩くなっているほうを結び直したりすれば、数歩のうちに、しっかり結ばれているほうが必ずほどけてしまうだろう。

ああ、靴紐よ、これら神秘の現象よ。私たちは、お前たちを通じて、自分たちが所詮は「靴紐を結ぶ値打ちもない」存在であることを思い知らされるのだ。

苦い文学

ブライアン

失業中の私にはもはやブライアン・フェリーになるしか選択肢は残されていなかったのだ。

しかし、どのようにしたらなれるのか。ネットを検索したら、日本ブライアン・フェリー協会というものがあり、そこで簡単な講習を受ければいいのだという。とはいえ、あくまでもそれは初級ブライアン・フェリーであり、協会認定のブライアン・フェリーになるためには、2年間のブライアン・フェリーの実務経験を経て試験に合格しなくてはならない。道のりは遠い。だが、食いっぱぐれのない仕事だ。

私は緊急事態宣言が解けるとすぐに、都内某所にある日本ブライアン・フェリー協会に向った。白い上下のスーツをまとったのは意気込みを示すつもり。ところが、その住所にそびえ立つビルを前にして私は愕然とした。日本ブライアン・フェリー協会は8階にあるのだが、エレベーターが点検中で使えないというのだ。

階段を上ると私はめまいがしてくるのでいやだったが、しかたがない。なんとか上りきって受付を済ませ、ぜいぜい言いながら講習を受けることとなった。

「この講習ではみなさんがブライアンになるために必要な基礎知識を学びます。みなさんは彼になるためには何が大事だと思いますか」

講師の言葉に受講生たちが口々に答える。「ロキシー・ミュージック!」「グラム・ロック!」「キーボード!」

私も負けじと元気に叫ぶ。「乱れがちな前髪!」

「……いろいろな意見が出ましたね……ですが、ブライアンになるために一番大切なのは……」

講習が進むにつれ、私の中で違和感がつのっていった。それもそのはず、慣れない階段で疲れ果てた私は、うっかり7階の日本ブライアン・イーノ協会に講習を申し込んでしまったのだった。

どうりで私が「乱れがちな前髪!」と言ったとき、講師が睨みつけたわけだ。