ライブ

スタンディング・エヴォリューション

12月18日の Homecomings のライブは座席指定だった。私はこれを知って喜んだ。ライブの間中立っているのはつらいから。

そしてライブがはじまった。みんなじっと座っていた。音楽をじっくり聴きたい成熟した客層なのだと私は思った。するとメンバーが言った。

「いつもと同じように好きなように立ったり座ったりしてください」

曲が進むにつれ、立ち上がる人が出はじめたが、観客たちは相変わらず座っていた。私は足がむずむずしてきた。これまで行った Homecomings のライブはすべてスタンディングで、体が覚えてしまっているのかもしれなかった。

私は足を伸ばしたいという衝動に抗った。会場でそのとき立っていたのは 3 分の 1 ほどで、立てばまだ目立つ状況だった。それに後ろの人にだって迷惑だ。

私は立つか立つまいか、ジリジリした。そのせいでもう曲など聴いていられなくなった。そして、演奏が最高に激しくなり、肉体の芯を掴んできたのをきっかけに、私は立ち上がった。一瞬で空間がクリアになり、音と光が私を圧倒した。

他の観客たちも立ち始めた。最後の数曲になるとほとんどの人が立っていたと思う。

そして、音楽は私に新たな確信をもたらしていた。

ライブで最初に立った人々の心理や身体の状態などを詳しく調べれば、人類の直立歩行の初期条件が復元できるのではないか。

少なくとも、「後ろの人に迷惑では」という認知を弱める脳の変化が、猿を直立させる刺激となったのは間違いなかろう。

苦い文学

クマの新しい駆除法

私たちの県では今、クマ被害が大問題になっている。クマが山から降りてきて、農作物を食べ荒らしたり、人々に危害を加えているのだ。犠牲者まで出ている。

はじめは猟友会が銃で仕留めていた。だが、お駄賃を渋ったら臍を曲げて引き上げてしまった。それ以来、私たちの地域は荒らされ、脅かされている。

そんな中、私たちの県知事がすばらしいアイディアを出した。「ドローンから落とした爆発物をクマに食べさせ、リモコンで腹の中で破裂させるのだ」

県は全力を上げて実用化に取りかかった。爆発物自体を作るのは簡単だった。問題は、それをどうクマに食べさせるかだった。研究者たちは県営動物園のクマを相手にいくども実験を繰り返した。おいしそうな匂いをつけたり、はちみつを塗ったり、生肉を巻きつけたり……どんなに工夫をしても、クマは食べないのだった。この作戦は失敗だった。

そして、先ほど県知事は、私たち県民に向けて新たな作戦を発表した。

「県は、人間が爆発物を飲み込んで、クマに食べられに行くのがいちばんだという結論に達した。マイナンバーの最後の数字が9の県民は全員、各市役所に来るように……」

苦い文学

コロちゃん

今日、病院に行ったら、60代の担当医がこう助言してくれた。

「最近は、インフルエンザが下火になってきたかと思ったら、コロちゃんが再び増加してきています。コロちゃんは若い人がなっても大したことはないですが、50代以上の人がかかると大変なので、コロちゃんにしっかり注意してください」

なぜ「コロちゃん」なのか。私は非常に気になり、その理由をいくつか考えた。

1)コロナを克服したので、もう怖くないぞという意味での「コロちゃん」
2)「コロナ」と聞くと怖がる患者を安心させるための「コロちゃん」
3)災いを招く「コロナ」を忌避する呪術的な「コロちゃん」
4)もともと病気をちゃん付けする医師なので「コロちゃん」
5)ちゃん付けなどではなく、正式な医学用語としての「コロチャン」

だが、私はこれらのどの理由にも納得できなかった。そこで、辞書を引くと「ちゃん」は「親しみをあらわす」とある。おお、なんと恐ろしいことではないか。

もしも、医者とコロナは私たちが思っているような「敵同士」ではなかったとしたら……!

もしも、お互いちゃん付けで呼び合う仲だとしたら……!

そして、ひた隠しにしてきたその関係が、今日、ポロリと出てきてしまったのだとしたら……!

そして、ああ、私がさんざんバカにしてきた陰謀論が、マスコミの報じない真実だったとしたら……?!!!

苦い文学

いじめはあった

以前、このブログで、教育委員会の仕事は「いじめはなかった」と言うことだ、と私は書いた。そしたら、それがどういう経路か教育委員会のお耳に入ったらしい。教育委員会からお呼びがかかった。

さっそく出向くと委員長が出てきてこう言った。「教育委員会では現在、いじめがあった、といえるような組織づくりを進めているのです。新しい私たちをぜひご覧にいれたくて」

委員長は私をまずある部屋に案内した。委員たちが椅子に座って大きな本を熱心に見つめている。見れば『ウォーリーをさがせ』のようだ。

「これはなんですか」と私。

「これは『いじめられているウォーリーをさがせ』です」

そのとき、絵本に没頭していた委員が「いじめがあった!」とうれしそうに叫んだ。

「まずは成功体験の積み重ねが大切なのです」

次に案内されたのは、ゲームセンターのような場所だ。数名の委員が銃を構えてシューティング・ゲームに興じていた。

「いじめを見つけるための動体視力を鍛える場です」

私は画面を見た。次々と出現する子どもたちを、委員は撃っていくのだった。

「いじめられている子どもだけを瞬時に見抜いて、愛の銃で撃ち抜くのです」

そのとき委員がミスをして、いまいましげに罵った。「くそっ、いじめがなかった!」

その次に私が連れて行かれたのは、いくつものモニターがある部屋だった。何人もの委員がモニターをじっと見つめているのだった。委員長は言った。

「ここにいるのは、訓練で 99.9% のいじめ発見率をマークした委員のみです。現在、地区内のすべての学校の監視カメラを通じて、いじめがないか、チェックしているのです」

モニターには校内のさまざまな地点が映し出されていた。私の目の前に座る委員は、体育館裏の草地のモニターを注視していた。

すると子どもたちが現れ、一人の子を叩いたり、持ち物を放り投げたりしだした。委員は即座に「いじめがあった!」と反応した。

私は感心した。「いや、すごいものですね」

「ええ、私たちはいじめを見逃さず、そのすべてを記録しています」と誇らしげに委員長は語った。「おかげで、子どもが自殺したら、ただちに『いじめがあった』と発表できるようになりました」

苦い文学

ま黒コスモス

自然は命、命は自然。私たちの命は、自然の中に生まれ、自然の中で育まれるのであります。

その自然とは私たちの地球。ならば太陽系もまた自然、それどころか銀河、さらにはこの宇宙全体もまた自然でございます。

つまりは、この宇宙そのものが私たちの命を取りまく環境であります。占星術師をのぞいては、私たちはこのことをほとんど意識してまいりませんでした。ですが、広大ではるかに強力なこの宇宙が私たちの命に影響を及ぼさないとしたら、奇妙なことでございましょう。

そして、長年の宇宙研究の結果、私は宇宙の膨張が生命に与える影響を明らかにいたしました。

宇宙の膨張とは、かのアインシュタイン博士がかの相対性理論で明らかにした真理でございます。ア博士によれば、私たちの宇宙はものすごい勢いで膨張しているというのです。この全宇宙的な膨張現象が私たちの健康に密接なかかわりがあるのです。

宇宙の膨張に心身ともに同調させることがまさしく健康の基本と申せましょう。そして、心身の不調とは、宇宙との膨張とのズレによって生じます。具体的には次のような症状となってあらわれます。

膨張の遅れ(宇宙の膨張に心身が追いつかなくなっている時)の症状:
    痩せぎみ、低血圧、めまい、動悸、腰痛、下痢、男性機能の減退など


過剰な膨張(宇宙の膨張より先に心身が膨張している時)の症状:
    太り過ぎ、むくみ、息切れ、高血圧、肩凝り、便秘、男性機能の減退など

もしかしたら、これらは深刻な症状ではないとお思いになるかもしれません。ですが、死とは宇宙の膨張についていけなくなったとき起こるのです。このズレがいかに深刻な問題かおわかりになるかと思います。

さらに、宇宙の膨張は常に一定の規模で生じているわけではございません。ある時は遅く、ある時は早く、またある時は西宇宙のほうがより膨張し、またある時は北宇宙のほうでやや膨張の遅れが見られるといった按配でございます。私は研究と研鑽の結果、こうした宇宙の膨張をじかに感じ取れるようになり、かなりの予測が可能となりました。

心身の不調にお悩みの方、それはもしかしたら、宇宙の膨張との同調に問題があるからかもしれません。ご心配ならば、当方までご連絡くだされば、いかようにもご相談に乗ります。

なお、ご来訪いただいた方には、特別に冊子『宇宙の膨張理論から見た株価の銘柄判断』を無料にて贈呈いたします。