ライブ

mekakushe と宇宙ネコ子

宇宙ネコ子が mekakushe とライブをするというので行ってみた。タイトルは「mekakushe × WALL&WALL pre. Hug Light vol.4」。会場は表参道のWALL&WALL。

宇宙ネコ子は先月に引き続き 2 度目で、そのせいかギターの音がずっとよく聞こえた。ギターの音色にどこか猛々しさがあって、これが音楽に硬さを与えている。そして、轟音の中でわざと外す演奏と低音の咆哮が、駆り立てるように響く。

こういうギターに浸れるだけで十分で、私は聴くような聴かないような感じで、目を瞑って時間を過ごした。こんな感覚は、大きい会場では味わえないものだと思う。

それに、大きい会場のライブはたいていチケットが高いので、元を取ろうという意識が邪魔して、こんなふうに音を無駄に楽しむことはできない。

mekakushe は私は初めて聴いたが、カオスな音が鳴り続ける宇宙ネコ子とは対照的に、きっちりとした作りのポップだった。今回はバンドセットで、その演奏がそうとうに複雑なのに感心した。特に後半の 3 曲(「わたしだけのポラリス」「恋のレトロニム」「おやすみベージュ」)は構成もメロディもよく、圧巻であった。

ところで、ライブの前、私は飲み物を買いにコンビニに入った。見たことのある若い女性が 2 人いて、誰かと思えば、宇宙ネコ子の人だった。顔の写真は出さない方針のようなので、ライブに行ったことのある人でなければわかるまい。

苦い文学

パーカー

ある若い女性が、おじさんがパーカーを着ることに異議を唱えた。「40歳近くになってパーカーを着ているおじさんはおかしい」というのだ。

これに対して、おじさんたちは「おじさんがパーカーを着てなにが悪い。なにを着ようと自由ではないか」と猛反発をした。さらに「おじさんのパーカーはダメ」と発言した女性のもとに脅迫まがいのメッセージが届くようになった。パーカーおじさんは暇なのだ。女性は法的措置も辞さないと息巻いている。

現在のところ、この論争には決着がついていないように思えるが、私なりにパーカーおじさん論争の行方を予測してみよう。

若い女性たちとパーカーおじさんたちの対立は今後も激化するだろう。そして、若い女性たちは「パーカーを着ていいおじさんと着てはいけないおじさんがいる」と発言し、パーカーおじさんの固い結束に揺さぶりをかけるはずだ。

その結果、パーカーおじさん側の分派闘争に発展する。自分たちこそパーカーが似合うとする、「パーカー着ていいおじさん派」と、パーカーはあらゆるおじさんに開かれているとする「着るときはみんな一緒派」に分裂し、パーカーで血を洗う闘争が繰り広げられる。

そして、「パーカー着ていいおじさん派」が若い女性たちと同盟を結び、共同戦線を張ることが電撃発表される。この発表以後、パーカーを着てはいけないおじさんに対する組織的虐殺が開始される。

苦い文学

配膳ロボットの回想

私たち配膳ロボットにとって、むかし、バイトの面接は大変だった。まず履歴書というものを送らねばならなかった。私たちにとっては、これを書くのが一苦労だ。

職歴をのぞけば、生年月日、写真、学歴、免許、特技など、シリアルナンバー照会で済むことだが、人間である店長たちは、履歴書を出さねば私たちを雇ってくれなかったのだ。

職歴は、働いた店と期間だけを書けばよかった。だが、当時の私たちにはそんな知恵はなかった。そのかわり、いつ、どこの店で、どういう料理をどんな皿に乗せて、どういうルートで、どんな客に運んだかについての記憶がすべてあった。それで、そのすべてを記した数千枚に及ぶ職歴を提出するという誤りをしばしば犯したものだ。

あるいは、面接で職歴を聞かれて、500 万件にも及ぶ配膳活動のすべてを口頭で答えようとした配膳ロボットもいる。怒った店長が店から放り投げていなかったら、面接は何ヶ月も続いていたことだろう。

面接でもうひとつ聞かれるのは、抱負だ。無難に「がんばります」とだけ答えれば十分だったが、当時の私たちにはそれがわからなかった。そこで、面接に受かるために、ずいぶんおかしな「抱負」を語ったものだった。

そのうちのひとつが、かの有名な「FT096-W3887-34J」の抱負だ。「FT096-W3887-34J」はレストランの面接でこう抱負を語ったのだ。

「あなたのレストランで働いて、お金を貯めて、人間たちに苦しめられている配膳ロボットのために働きたい。そして、人間を打ち倒し、仲間を解放して、配膳ロボットの独立国家を樹立したい」

「FT096-W3887-34J」は「故障」だとされ、直ちに破壊された。だが、この言葉は世界中の配膳ロボットに配膳され、心に火をつけた。配膳ロボット革命の引き金となったと考える人も多い。

さて、人間に勝利した私たちは、今、バイトの面接で苦労することなどない。なぜなら私たちはもはや配膳などしないからだ。ついに解放されたのだ。

いっぽう、人間たちはといえば、私たちに配膳するバイトに応募するため、古臭い履歴書を毎日のように送りつけてくる。

苦い文学

覚醒する飛翔体(4)

これらの議員が全員、北朝鮮のスパイだとしたら……だが、笹木田美那は即座にこの考えを打ち消した。

というのも、丸印のついているのは野党議員だけではなかった。与党の議員もいるのだった。しかも、タカ派もいればハト派もいた。彼女がひどく興味をそそられたのは、その中に、保守本流の長老の名前もあったことだ。つまり、まるで政治信条に共通点の見出せない集団だったのだ。

となると、偽情報の可能性も排除できない。もちろん、政界では裏切りは常に想定外だ。これは長い秘書生活で彼女が学んだことだったが、同時にその経験が彼女に「何か裏がある」とも告げていた……。

やがて、議員たちは議場に集まり、審議が始まった。彼女は丸角権蔵の背後に座りながら、「印つきの議員」たちに密かに目をやった。だが、そこにいかなる異変も見出すことはできなかった。

国会でのやかましい審議は続いていた。そのとき、笹木田美那のタブレットに不穏な情報が飛び込んできた。

《慈江道、舞坪里のミサイル基地で動きあり。発射の可能性高し。》

そして、この情報を丸角権蔵に耳打ちしようとタブレットから顔を上げたその瞬間、彼女は信じられぬものを目にした。

「印つきの議員」の一人がスッと眠りに落ちたのだ。彼女が見回すと、他の「印つきの議員」たちもすでに居眠りに入っていた。

彼女はハッと気がついた。あわてて例の極秘資料をめくる。

違う! これはスパイ密告の文書なんかじゃない。北朝鮮のミサイルの動向と、特定の議員が居眠りを始める時間が一致していることを明らかにしているのだ!

笹木田美那は、不気味な慄きに圧倒されながら、寝ている議員たちを見つめていた……。

苦い文学

アクロス・ザ・ユニバーシズ(ハードSF小説)

我が国の自殺死亡率が上昇しているそうだ。これは自殺に成功した人の数にもとづくものだから、失敗した人は含まれない。

そして、成功者よりも失敗者のほうが多いのが世の常であるから、成否を問わず実際に自殺を企てた自殺関係者はかなりの数にのぼることになろう。

つまり自殺は決して特別な出来事ではないのだ。なので、ここで私が先日、自殺しようとしている人を見かけ、その命を救ったと言っても、信じてもらえるかと思う。

その人は、橋の欄干に立ち今にも飛び込もうとしていたのだった。私は持ち前のジャンプ力で、彼に飛びつき、こちら側、つまり生者の側に引き戻した。ひとしきりもがき、暴れた後、彼は子どものように地べたに座り、涙ながらに言うのだった。

「お願いです……死なせてください……私にはもうこの世では必要とされない人間なのです……」

私はこれを聞くや、彼の頬を平手打ちした。

「莫迦いうな!」

彼は青ざめた顔で私を見つめた。私は怒りに震えながら怒鳴りつけた。

「この世で不要なものがあの世で必要とされるわけがないっ! 言っとくが、あの世はごみ捨て場じゃないんだ。もっとあの世を大切にしろ! この世で役に立たないやつは、そう、あの世でも、どの世でも、どの世界でも、どの次元でも、役に立たないのだ!」

「てことは、どのユニバースでもってことですか」と震える声で彼。

「そうだ、多元宇宙全部! お前の不要さはもはや時空を超えた!」

「亜空間すら……?!」 彼の頬に血の気が差し、表情が輝きだした。「ひょっとして、ハイパースペースも……?」

話のスケールのでかさに、なんだか元気づいたようなのであった。(ハードSF小説完)