風刺・戯文

太いパイプ

自公連立の解消という衝撃が走った昨日から一夜明け、高市自民党総裁の女性初の首相就任が必ずしも確実とはいえない状況になってきました。

「今回の公明の離脱は、高市さんが公明党との太いパイプを持っていなかったためだ」と語る自民関係者。また自民党幹部も「高市さんが今後、首相になるためには、野党との協力を取り付ける必要がある。そのために高市さんは、野党との太いパイプを積極的に構築すべきだ」と注文をつけます。

そんななか、今日、自民党本部前に熱烈な高市支持者が集まり、手に手にパイプを持って高市首相誕生を呼びかけました。

集会の主催者「太いパイプがないという高市さんに対する批判にいてもたってもいられず、今日の集会を企画しました。私がもってきたのは呼び径 200 の硬質塩化ビニル管です」

別の参加者「それじゃだめですよ。私は炭素鋼鋼管。直径は 500 です」

「ちょっと待てよ」と別の参加者。「いや鋼鋼管なら、溶融亜鉛でメッキされた白管のほうがずっといい」

「そんなことはない!」「いやそうだ!」「おい待て! このパイプは中国製じゃないか!」「バカ言うな!」

初めは穏やかに始まった集会ですが、最後は支持者同士が互いをパイプで殴り合う騒ぎとなりました。

苦い文学

トーチョー

ローマ字の綴りで “ky” は “Tokyo” や “Kyoto” などのように、日本語の「キャキュキョ(kya, kyu, kyo)」に用いられる。

ビルマ語にはこの「キャ、キュ、キョ」に当たる音がない。別になくてもいいのだが、問題はこの音をビルマ文字で “k” と “y” にそれぞれ当たる音の組み合わせで表記し、なのに実際の発音は「キャ、キュ、キョ」ではなく、「チャ、チュ、チョ」(に似た音)となることだ。

そんなわけで、ビルマ語話者は「Tokyo」を「トーキョー」ではなく「トーチョー」と発音する。ビルマ文字の綴りに変換してしまうのだ。どうしてこんなことが起こるかだが、おそらく昔はビルマ語には「キャ、キュ、キョ」という音があったが、これが歴史的変化により「チャ、チュ、チョ」に変わってしまったのだろう(こうした変化は他の言語でもよくある)。音は変わってしまったが、綴りは変わらないので、 “ky” が「チャ、チュ、チョ」を表すこととなってしまったのだ(こうした綴りのずれは、日本語にも英語にもたくさんある)。

もっとも、ビルマ語話者が「キャ、キュ、キョ」を発音できないわけではない。ただ、それはいわば「外国語の音」なので、若干の訓練が必要なのだろうと思う。

以前、東京に来たばかりのビルマ語話者が「ここがトーチョーか」などと言っていると、先輩のビルマ語話者が「トーキョーだよ」と訂正したことがあった。外国では「チャ、チュ、チョ」ではなくて「キャ、キュ、キョ」のときもあるよ、ということはビルマ語話者はそれなりに意識しているようだ。

さて、以前、留学生に日本語を教えていたときのことだ。いくつかの調味料が教科書に出てきたので、私はあるビルマ人学生に音読させてみた。

「塩、醤油、酢、ソース、マヨネーズ、ケキャップ……」

ケキャップだって!

と、私は心の中で叫んだ。このビルマ人学生は、「チャ、チュ、チョ」は「キャ、キュ、キョ」で発音する、ということを意識しすぎて、「チャ」のままでいいものまで「キャ」に直してしまったのだ。

この現象は、言語学では過剰訂正(つまり、なおしすぎ)と呼ばれている。

苦い文学

絶望した人々を救え!

競争社会の厳しさと経済格差の拡大により、自己肯定感を失い絶望している人々の存在に心を痛めた大富豪は、財団の研究員たちに対策を練るように命じた。

研究員たちは、完成か死かという壮絶な決意をもって研究に臨み、数ヶ月後、大富豪のもとに小さなイヤホンを持ってやってきた。

「自信を失い絶望した人々は、この装置で、自分が人生の中心だという自信を獲得するでしょう」

大富豪はなんでもまっさきに研究成果を試さずにはいられなかったから、研究員からイヤホンを奪って装着した。

たちまち大歓声が大富豪を圧倒した。まるでドームのステージにいるような臨場感だ。大富豪は数歩あるいた。すると、数万の観客たちが大喝采を送った。

そばにある椅子に座る。大きな拍手が湧き起こる。会場は大盛り上がりだ。

大富豪は思わず口走った。「ありがとう!」

ヒューヒュー! ピーッ! 観客たちは歓声と口笛で応じる。

「サンキュー!」 なぜか英語も飛び出た。割れんばかりの拍手!

大富豪はだんだん生き生きとしてきた。何万人ものファンが応援してくれているという、絶対的な肯定感が大富豪を若返らせたのだった。

大富豪は思わず飛び上がり、走り回った。この世で誰も見たことのないダンスを踊り、誰も聴いたことのない歌を歌った。ファンたちは熱狂し、ドームのボルテージは最高潮に達した。

研究員たちは大富豪がこれほど機敏に動き、顔を輝かし、楽しそうにしているのを見るのははじめてであった。「成功だ」と誰もが確信した。

大富豪はさすがに疲労し、椅子に腰掛けた。だが、すぐに立ち上がり、猛烈に体を動かし始めた。しまいには、ふらふらになってぶっ倒れた。

「おかしいぞ」 研究員たちは大富豪のそばに駆け寄った。だが、大富豪は研究員たちを振り払い、よろめきながら立ち、ふたたびあの過激なパフォーマンスを始めた。何度倒れても、そのたびに立ち上がるのだった。

「いかん!」 研究員たちは慌ててコンピュータでイヤホンの音声をモニターした。すると、スピーカーからこんな音声が流れてきた。

「アンコール! アンコール! アンコール!」 倒れた大富豪は体を痙攣させて、必死に立ちあがろうとしていた。

研究員たちは大富豪に飛びかかり、イヤホンをひったくった。

大富豪は虫の息で ICU に担ぎ込まれた。研究員たちは、その夜、お祝いをかねて、そろってライブに行く予定だったが、やむなく中止となった。

苦い文学

ミサイル防衛についての提案

北朝鮮のミサイル発射による威嚇が続いている。我が国の安全を脅かす重大な事態だ。

こうした危機に対して我が国ではかねてから、ミサイル防衛システムの整備を進めてきた。

弾道ミサイル対処能力を持つイージス艦とペトリオット(PAC-3)の配備によって、防衛体制を構築するとともに、自衛隊が、レーダー、人工衛星、航空機、艦艇などあらゆる手段を用いて、常時、我が国周辺を警戒監視しているのだ。

それだけではない。北がミサイルを発射するやいなや、自動警戒管制システムが着弾点を直ちにはじき出し、すぐさま迎撃を行うようになっている。

だが、これで本当に我が国は安全だろうか? 我が国の守りはこれで鉄壁であろうか? 答えは否だ。我が国は今なお北のミサイルの脅威にさらされているのである。

ここで私は、北朝鮮のミサイルによる脅威を限りなくゼロにする、画期的な防衛策を提案したい。

それはナビダイヤルの導入である。

我が国をナビダイヤルで城壁のように包囲するのだ。

いかなるミサイルであろうと、我が国に飛来するやいなや、ただちにナビダイヤルが発動する。

まずは非情な警告から始まる。「ナビダイヤルの通話料金は、発信者様のご負担です」

ついで「サービス向上のため録音させていただきます」という威嚇。これに続くのは、いつ終わるかも知れぬ、恐ろしく長いガイダンスだ。この初期防衛プロセスによってミサイルは大いに推進力を削がれる。

だが、それだけではない。次にミサイルを待ち受けるのは、永遠に続くかのような番号の選択の迷路だ。ミサイルは、さまよい、待たされ、耳障りな音楽を苦々しい顔で聞き、さらにさまよう。そして、ようやく出口に辿り着くのだが、そこで、ああ、あろうことか、こう聞かされるのだ。

「ただいま混み合っておりますので、しばらく経ったのちもう一度おかけください」

ミサイルは絶望とともに、北朝鮮へと弾き返されるのだ。

「ナビダイヤル防衛」、ぜひ前向きに検討していただきたい。