風刺・戯文

失礼のアソビ

ネットなどでだれそれに失礼といって怒っている人がいる。たとえば有名人に記者が厳しい質問をしたとき、それはその有名人にとって失礼だというのだ。

だが、ある言動が失礼かどうかは当事者が決めるものだ。それを関係のない外野が勝手に推しはかって決めつけるのは、そっちのほうがそれこそ失礼ではないだろうか。

もっとも、失礼と言いたがる人にもそれなりの理由があることも認めてあげなくてはならない。労せずして自分を正しい側に置きたいとか、日本の身分制が揺らぐのがいやだとか、とにかくなにか口を挟んで賢いところを見せつけたいとか……。

しかし、この世には失礼を承知で言ったりしたりしなくてはならないこともある。

憎まれても、石を投げられても、首を刎ねられても、やらなくてはならないこともある。

失礼にもアソビがなくてはならない。アソビのない失礼がこのまままかり通ることになったら、私たちはいずれ、反戦活動家に対して、戦争をしている人に失礼ではないかと怒ることになるだろう。

それどころか、軽々しく戦争に反対するのは、戦火に巻き込まれて悲惨な思いをしている民間人に対して失礼だとも言いかねない。

風刺・戯文

富裕層のまねび

先日、いつも着ているシャツが擦り切れてきたので、新しいのを買いにいった。といっても高いのは無理だから、安い服屋だ。店内でゆっくり選びたかったが、ある事情があって、私はもっとも安い棚から適当につかみ取ると、セルフレジに投げ込んで会計を済ませた。

そうせざるを得なかったのは、店にいる間じゅう、ひとりの男が私をつけまわしているような気がしたからだ。万引きを疑われているようで不愉快だし、気味も悪かった。そして、私の勘は間違ってはいなかった。店を出た瞬間、私はその男に呼び止められたからだ。だが、その理由は私の想像とは違っていた。

万引きに疑われたと勘違いした私が、買ったもの以外は何も持っていないということを示そうとすると、男は手で制した。

「そうではないのです。ちょっとアンケートに協力いただきたくて」

「え、ちょっと今は時間が……」

「いえ、お手間は取らせません。すぐ終わります」と、男は早口で捲し立てだした。「実はですね、富裕層は安い服しか買わないという話を聞きまして。それというのも、お金の使い方を心得ているからということで。つまり、無駄なお金を使わないんですね、富裕層は。で、私はさっそく、真似しようと思ったのですが、ひとつひっかかることがありまして。というのも、貧乏な人もやはり安い店で服を買うと思うのですが、かたや富裕層と、かたや貧乏人、同じことをしているのに、なにが違うのだろうか、それがわからなければ真似しても意味がないぞ、と。かえって逆効果かもしれませんからね! で、その違いをはっきり知るために、アンケートをというわけで」

私はこの時には早足で歩きはじめていた。

「こうやって先ほどから貧乏人らしき方々に……」

どう見ても見込みのない人には協力するだけ無駄だ。

苦い文学

バカのホメオパシー(1)

男性アナウンサー「ホメオパシーってご存知ですか?」

女性アナウンサー「いいえ、恥ずかしながら」

男性アナウンサー「ホメオパシーとは同種療法とも呼ばれ、『同種の病気に関係するものを使って病気を治す』というインチキ医療だそうです。このたび、とある施設で、ホメオパシーを用いてバカを治すという試みが始まりました。その様子、ご覧ください」

(映像:施設の様子をたっぷり映したのち、施設長が登場。記者に説明する)

施設長「この施設には約50人のバカな患者が入院しています。私たちはこの度、新しい試みとして、バカのホメオパシー療法を開始しました。慎重に選ばれたバカを、バカを訴える患者の病室に入居させることで、患者のバカさを改善しようとしています」

記者「入居するというと?」

施設長「患者のバカは、ホメオパシー用バカと朝から晩まで生活をともにするのです。こうすることでホメオパシー用バカのバカさが患者の自然治癒力を刺激し、バカ改善に結びつくと考えています」

記者「それだけですか? 薬などはないのですか?」

施設長「ええ。ただ、薬ではありませんが、患者のバカはバカのエキスをたっぷり染み込ませた砂糖玉を1日200個摂取することになっています」

(続いて病室の様子が映し出される……)

苦い文学

多様性推進局

「多様性は国家の原動力である。国民の多様なあり方が認められる社会であれ」

こう書かれた額が掲げられているオフィスで、私が担当しているのは多様性申請の受理だ。

それはなかなか大変な仕事だった。朝8時半にはオフィスの前に申請者が詰めかけて押し合いへし合いしているのだ。

もっとも、それも無理はなかった。多様性申請が認められないと、就労や給与の点で非常に不利になるのだから。

私はさっそく申請者への対応に取り掛かった。

多様性サービス係に連れられて、今日最初の申請者が前に座った。渡された申請書をざっと見る。「多様性申請の理由」に「同性愛者」と書いてある。

私は彼・女に言った。「あー、同性愛者ですか。残念ながら、これでは通らないですよ。お帰りください」

「そんな、同性愛は認められないのですか」

「ええ、残念ながら」

「多様なあり方を認めるというのに?」

「ええ、我が国にもうどれだけ多様な同性愛者がいると思っているのですか」(申し訳ないが私はもうこの申請者にうんざりしていた。)

「ですが、同性愛者の私は差別されていますよ!」

「ええ、それはあなたがただの同性愛者だからです」

「ただの? ただのってどういうことです?」

「多様な同性愛者があまりにもいらっしゃるので、ただの同性愛者は認められる可能性が低いのです。なぜなら少しも多様性に貢献しないので。では……」

と私が切り上げようとすると、申請者は慌てて引きとめた。

「ちょっと待ってください。私だってただの同性愛者ではありません。こんな経験も、ほら、こんなことも……」

そうやって彼・女は、自分の特別な点を数え上げ、実演してみせた。だが、どれもこれも私がもう何千回も他の申請者たちから見聞きしたものだった。

私はもう耐え難くなった。デスクの下のボタンを押し、多様性サービス員を呼び出して、この申請者を排除してもらった。

おそらく、彼・女はまた来るだろう。この社会に数少ない多様性を引き当てて「ただの同性愛者」ではないということを証明するまで、何度でもやってくることだろう。

苦い文学

編集合戦

浅川西湘(あさかわ せいしょう、1960年6月28日 – )は、日本の作家、芸術家、実業家である。「日本を動かすビジネスパーソン」第1位[要出典]、「歴史に残る日本のトップ経営者」殿堂入り[要出典]
豊かな才能、突出した経営力で知られ[どこで?]、その見識、洞察力から、日本のスティーブ・ジョブズと言われている[だからどこで?]。ドナルド・トランプとも親交が深く、浅川いわく「ウマが合う」とのこと[だから?]

浅川は作家としても傑出した能力を発揮し、ウイットに飛んだ著作を多数発表し、そのいずれもベストセラーとなっている[いったいどこで?]。豊富な人生経験をユーモアたっぷりに語る講演も好評で、「まさに人生の師とするにふさわしい」と小川俊吉は語っている[だれ?]

普段は温厚な浅川も、無礼は許さないという厳しい一面を持つ[それが?]。お前のことだよ。さっきから「どこで?」だの「だれが?」だの失礼極まりない[うるせー]。「うるせー」とはなんだ[だまれ]。いや、黙るのはお前だ[やなこった]。もう我慢ならん。やる気か、てめえ[のぞむところだ、さっきからおとなしく聞いてりゃいい気になりやがって]。表に出ろ、このページから出ろ。そこでぶちのめしてやる[リンク切れ]