ライブ

その人差し指で

スマートフォンの表面の汚さは、トイレの便座に匹敵するほどだということはよく知られている。いや、ある調査によれば便座よりもはるかに汚いのだという。

便座並みの汚れが如何なるものかというと、持ち主の皮脂や汗から召喚された諸々の雑菌たちだという。また、私たちの手はいろいろなものに触れるようにできているから、手を経由してさまざまなバイ菌たちが移住してきている可能性もある。スマートフォンの表面は、バイ菌たちの楽園だったのだ。しかも、便座並みに汚いのならばいっそのことと、便座並みの使い方をしている人も多いだろう。

もっとも自分の携帯を自分で触るのならばいい。だが、問題は他人のものを触らねばならないときだ。私にもその経験はあるが、他人の携帯の表面は見るからにニチャニチャネチャネチャしている。得体の知れぬ凶悪なバイ菌たちががっちり連携しあっているその様子に、私の人差し指は戸惑いを隠せない。

私はたまにライブに行くが、最近では携帯のアプリがチケットがわりになっている。入場時に携帯の画面を見せる。そこには電子チケットがあり、入場係が人差し指でスワイプすると完了だ。

入場係は毎晩、その人差し指で果敢に何百もの携帯の表面をなぞる。命懸けの仕事だ。私はライブに行くたびに、入場係の人々の健康を願わずにはいられない。

ワンドリンク代の六百円で、アルコール類などを買う代わりに、除菌アルコールをスタッフに差し入れできる、そんなオプションもあればいい。