散文

カレンの木べら(手首結びの儀式4)

私たちが会場の前方で座っていると、入れ替わり立ち替わりスピーチが始まった。初めはビルマ語、次に別の若者が出てきてスゴー・カレン語で話し始める。その次は西ポー・カレン語、さらに東ポー・カレン語と続く。これはこういう式典ではよくあることで、同じ内容をビルマ語とそれぞれのカレン語で繰り返すのだ。

カレン語はこの三つ以外にもたくさんあるが、話者が多いのはこの三つなのだそうだ。カレン人の集いなのにビルマ語が使われるのは、カレン人以外のゲストもいたからでもあるが、そもそもカレン語の話せないカレン人もいるからだ。

さて、カレン語でのスピーチの最後に日本語でのスピーチもあった。あらかじめ準備した原稿をカレン人の若者が読み上げる。十分に分かりやすい日本語だ。

内容は手首結びの儀式とそれに使われる品々の説明だ。これは儀式の前に友人に教えてもらったのとほとんど変わりはなかった。また、私が少し不思議に思った soul だが、スピーチでも「良い魂」「悪い魂」と言っていた。もしかしたら、カレンの文化では、魂は体内にずっと留まっているものではなく、外に出て良くなったり悪くなったりするものなのかもしれない。もっとも、私が誤解している可能性はある。

なんにせよ、長いスピーチの時間は終わり、いよいよ儀式の開始となった。初めに木べらを取り、笊の縁をトントン叩く。どういうリズムで叩けばいいかわからないので、隣の人を見ながら叩く。私の左隣にいるのは、カレン人の女性で以前から知っている人だ。右隣の男性は知らない人だが、私と同じように戸惑っているところを見るとカレン人ではなさそうだ。私は女性の方を見ながら合わせて叩く。その向こうでも横一列に並んだ人々が叩いている。

この調子なら、私が間違って「悪い魂」を引き寄せたとしてもたぶん害はないだろう。