チュニジアのパンのことについて書いてきたからには、フティーラのことも取り上げなければなるまい。
フティーラとは、丸くて平たい揚げパンだ。丸めた生地を薄くして、油の入った大鍋で揚げて作る。ピザのようにフチは厚いが、内側はパリパリに揚がっている。
お店の人は、目の前で生地を広げて鍋に放り入れる。そのときにちょっと回転させるのがコツのようだ。それから油に浮いた生地を、カギのついた棒でクルクル回したり、ひっくり返したりする。すぐに揚がり、油を切ってできあがりだ。私はハチミツをたっぷりかけるフティーラが好きで、これしか食べない。卵入りもあって、フティーラの中央のくぼみに卵を割り入れて一緒に揚げる。たぶんおいしいのではないかと思う。
フティーラも、前に書いたラブラービーと同じく朝の食べ物だ。朝、お店に行くと、出勤前の人や、揚げたてを紙に包んで持ち帰る人たちでにぎわっている。
チュニジアの民話にもフティーラの店が出てくる。以下は、召使いが、異国で落ちぶれたご主人を探す場面だ。
「その国に着くと、召使いは旅の宿に、馬を預け、あらゆる市場、あらゆる通り、あらゆる小路を一日中歩いて回った。一日、二日経ち、三日目、フティーラ屋に入ってフティーラを食べようとしたとき、自分のご主人がかまどで薪をくべているのを見かけた。まさにご本人、ボロ切れをまとって、汗まみれで、炎に顔を舐められながら働いているのだった」
もちろん、ガスの普及した現代では、このような危険な労働環境はありえない。安心してフティーラを召し上がっていただきたい。
(写真:揚げたてのフティーラ、チュニス)