犬が喋り出した、というか、神がそうさせたのだ。
犬曰く「私は卑しくなどない。私はあの老人の家で育てられ、家と羊の番をしてやり、彼がくれる粗末な食べ物で十分やってきた。ときには主人がうっかりして晩飯抜きで夜を過ごすこともあれば、主人自身もすっからかんの時もある。そうすると、彼と私は一日、二日、三日、いやそれ以上も食べずにいるのだ。それでも私は一度たりとも家を離れたこともなければ、他の家にも行ったこともない。彼以外の主人を知らないのだ」
こういうと、矛先は男に向けられる。
「お前は、祈りと断食に生きて、いったい何年になるというのだ。なのに、たった一晩、パンが途絶えただけで、もう我慢しきれなくなって、パンを与える神を離れて、人間の門前へと足を向けたのだ。お前こそ主人を信頼していないのだ」
そして、犬は実に無情な言葉を放つ。
「お前が礼拝と崇拝のうちに過ごし、空腹に耐え忍んだこの年月は、今日すべて無駄となった」
犬の言葉は激しさを増していく。
「今さら山に戻ったところでなんになるのか。さあ、町へと降り、人と交わるのだ。人々と金の取引をせよ、常人のごとく、働いて、商って、売って、買って、盗んで、奪い取り、騙して、嘘の誓いをたてよ。そして、死が訪れるその日に神がお前に下す苦しみに備えるがいい」
パンのことを考えると、私はいつも、呪いにも似た犬のこの恐ろしい言葉を思い出す。犬が喋りださないよう、やさしくしたい。
(写真:モスクの階段に寝そべる犬、チュニス)