旅・観察

主人への信頼(1)(チュニジアの民話)

チュニジアのパンについて考えるといつも思い出すのが「主人への信頼」という物語だ。この物語では、パンが大事な役割を果たしている。

イスラームのある行者がいた。彼は山で一年中断食をしていた。日没時になると、天からパンが一切れ落ちてくる。行者は、そのパンを半分食べ、残りの半分を夜明け前に食べる。それからまた、一日の断食に入る。男はこんな生活を何年も続けていたのだった。

ある夜のこと、男のところにパンがやってこなかった。

男は一晩中パンを待ったが、パンは来ない。翌日も断食を続け、日没が近づくころには、とうとう空腹に耐えかねて山を降りた。麓にある貧しい村に行き、村人に食べ物を乞うと、粗末な大麦のパンが二つ与えられた。

男がパンを持って、山に帰ろうとすると、村人の犬があとをつけてきた。パンを狙って、吠えかかったり、服を引っ張ったりするので、男はパンを一個、犬に投げ与えた。犬はガツガツ食べてしまう。だが、それでも犬は満足せず、襲いかかってくる。男はとうとう二個目のパンも与えてしまった。

これで二つともパンはなくなってしまった。ところが、犬はなおも男の後をつけてきて、男の足に噛みついた。男は罵った。

「お前より卑しい犬は今まで見たことがない。お前の主人がくれたパンを二つともくれてやったというのに、いったいなんの用がまだあるのだ。俺からなにが欲しいのだ!」

そのとき突然、犬が喋り出した。

(写真:焼肉とサラダとパン)