脳から取り出されたばかりの免疫は、蛭のような赤い胴体を拗らせ、六本の足を互いに絡み付かせている。私はもう慣れたが、はじめて見る人には吐き気を催す人もいる。まるで苦しんでいるようにも見えるのだ。
興味深いのは、なかには叫び声のようなものを聞く人もいることだ。もちろん、免疫には口がないのでそんなことはありえない。おそらく、その人の脳内に寄生している免疫が反応しているのかもしれないし、取り出された免疫が脳に直接働きかけているのかもしれない。
いずれにしても、この苦悶の状態は、塩水の入った容器に入れることで、徐々に解消される。
免疫はただゆっくりと漂っている。だが、しばらくすると、六本の足を伸ばしたり縮めたりしだす。そのうち、足をたくみに動かして、泳ぎはじめる。
私は免疫が自分の力で泳ぎ出すこの瞬間を見るのがとても好きだ。とはいえ、いつまでも見ているわけにはいかない。海に放つときがやってきたのだ。
私はどれくらいの免疫を海に放したことだろうか。海から生まれたわれわれ人間の脳漿の中で生きる免疫が、自由に暮らせる場所は、海しかないのだ。
私は免疫たちが海のどこで暮らしているかは知らない。それを見出すのは私の仕事ではないからだ。私がすべきなのは、免疫たちをひとつでも多く虐待から救い出し、海に返してやることだけだ。
だが、ときおり想像することはある。明るく美しい海の中で、免疫たちが集団になって、まるで踊るように泳いでいる様子を。これらの免疫たちが二度と孤独な思いをしなければいいと思う。