苦い文学

左右

異次元政治の効果だろうか、最近、街で物乞いを見かけることが増えた。だが、昔の物乞いと違って「右や左の旦那様」という口上が聞かれないのはやはり寂しい。

しかし、その事情も理解できる。今や「旦那様」などと呼びかける時代ではないのだ。現在の日本社会は平等な社会であるから、金持ちであろうと物乞いであろうと貴賎の区別はない。ただ自己責任があるだけだ。

また、今や女性の社会進出も進み、路上もジェンダー・センシティブになった。そんなところで「旦那様」を連呼すれば、たちまち性差別的だと炎上間違いなしだ。そもそも、女性を排除してわざわざ収益を半分に減らす理由もなかろう。

かくも問題の多い「旦那様」に代わって私が提案したいのは「サポーター様」だ。インクルーシブでジェンダーフリーな時代にふさわしい呼びかけではないか。

また、「右や左の」というフレーズもいまや古びて聞こえるかもしれない。だが、この言葉こそ実は現代社会においてワン・アンド・オンリーの価値を持っているのだ。

というのも、この言葉には、右翼も左翼も協力して豊かな日本を創ろうではないかというメッセージが込められているからだ。分断の進む我が社会においては、こうした和解と調和を勧めるポジティブな言葉こそ、人々の心に響くのだ。

アメリカの状況を見ても分かるように、この社会の分断は猶予のならない喫緊の課題だ。「慌てる乞食は貰いが少ない」などというが、ことこれに限っては大いに慌てた取り組みを期待したい。