苦い文学

カスタマー

物乞い、あるいは乞食は、路上などで行き交う人々から金銭を恵んでもらって、生きている人々のことだ。

昔は、海外に行くと、この物乞いによく出くわしたものだが、最近では日本でも見かけるようになった。輸入されたのかもしれないし、あるいは、アベ政治が取り戻してくれたのかもしれない。

先日、都内のある駅前で、路面に座って物乞いをしている人がいた。その前にはお茶碗が置かれ、ご存じのとおり、そこにお金を放り投げてもらうシステムとなっている。

だが、私はその様子を見て失望した。お茶碗の隣に安い日本酒の紙パックが置かれているのだ。

これでは顧客(あえてこう言うが)に「どうせ酒に消えるんだろうな」と思わせるだけだ。

そうではなくて「いったいこのお金はどう使われるのだろう」とカスタマーに思わせるのでなくてはならない。我々はそのワクワク感(カスタマー・エクスペリエンス)にお金を払うのだ。

では、どうしたらよいだろうか。紙パックを隠す、というのも一案だ。だがもし、私が物乞いをするならば、むしろ逆を行きたい。高級シャンパンや高級ウィスキーを置くのだ。

注目度は抜群だ。「映えスポット」としてバズる可能性だってある。

「物乞いで集めたお金でどうやってあの酒を?」と興味津々で思わず財布を開く投資家もいるはずだ。「景品かな?」と射的感覚でお茶碗にお金を放り投げる人も出てくる。

そのうち、お金を放り投げるためだけにみんな列を作り始めることだろう。もうこうなったら、立派なアトラクションだ。

物乞いとしては成功といえるだろう。