無人の教室を後にして、一階の教務課に行くと、若い職員が出てきて、奥にある部屋に連れて行かれた。
そこには一人の男が座っていた。入学式などでしか見たことのない幹部だ。幹部は彼を座らせると、受講生からハラスメントの訴えがあった、と告げた。
「ちゃんと出席しているにもかかわらず、欠席にすると脅された、と連絡してきた」
「代理出席の疑いがあるので、しつこく言い過ぎたかもしれません。ですが、カメラをつけさせるたびに出てくる人が違うのです」
彼ははじめに女子学生、次に男子学生、そして今日はおよそ学生らしくない人物が現れたことを語った。
「だが、その証拠はあるのか。もしかしたら、名前を間違っている可能性もあるのでは?」
「いえ、そんなはずはありません……では、その学生の写真を見せてください。この学生ですよ」 彼はファイルから名簿を取り出し、問題の学生の名前を示した。
「彼女の写真ならここにある」と幹部は机の上のファイルを広げた。そこには、ぽっちゃりした女子学生の顔写真が貼られていた。
「この子ではありません。最初の学生も、その次もその次もみんな違う顔でした! みんな、この学生が雇った業者だったのです!」
その瞬間、室内に声が響き渡った。
「君の見たのはどの顔だ!」
幹部の背後にある扉が開き、あのナマズ髭の老人が姿を現した。
「さあ、答えるのだ。この写真の顔か、それとも他の顔か」
驚きのあまり彼は言葉を発することができなかった。
「答えられないのなら、教育活動に戻りなさい。さもなければ、この大学から出ていくかだ」
コロナ禍も出口が見え、多くの学校で対面授業が復活したが、彼の大学だけは今も相変わらず非対面授業を続けている。もはや彼は学生にカメラをつけるように求めたりなどしなかった。出席しようと、欠席しようと、代理出席業者に頼もうと、どうでもいいではないか。講義では、彼もまたカメラを消して、たった一人の教室で、好きな本を読んで過ごしている。