苦い文学

非対面世界(5)

日本の大学への留学生は、2つに分けることができる。大学に向いている留学生と向いていない留学生だ(もうひとつ、働きたいだけの留学生もいるがここでは触れない)。大学に向いている留学生とは、普通の、そして大部分の留学生だ。

これに対し大学に向いていない留学生は普通ではない。なぜなら、大学に向いていない人が大学に来ることは普通はないからだ。

しかし、次の二つの条件が揃った場合だけは別だ。つまり、留学生の親にかなりの資産があり、しかも、なにがなんでも(子どもの意思・適性などお構いなく)外国の大学を卒業させたいと考えている場合のみ、普通でないことが起こりうるのだ。

しかも、そうした親の中には、自分の子どもが日本で何を学ぶかなんて重要ではなく、ただ日本で大学を出たという証明書だけ持って帰ってきてくれればいい、という考えの持ち主も一定数いる。

そして、こういう親を持つ留学生の受け皿となっているのが、彼の大学なのだ。いや、「受け皿」など結構な表現すぎる。親の弱みにつけ込んで、いいカモにしているというのが実情だ。

こうした状況を考えてはじめて、代理出席業者が横行するのも、そして、それに口を出すなという彼の同僚の態度も理解できるようになる。

なぜなら、親に言われて日本に来ただけで「勉強する気」などない裕福な留学生にとって、代理出席業者を利用するというのはさほど抵抗感のないことだからだ。また大学からすれば「大学卒業証書」だけを4年間かけて無難に「売りつけ」ればいいだけなのだから、代理出席を追求するなどどうでもいい事柄だ。いや、むしろ、やる気のない学生を追求し、ことを荒立てたりして、中国で悪い評判を立てられるほうが、よっぽど商売の邪魔だ。

それゆえ、放っておくのが一番ということになる。だが、彼はこの考え方は気に入らなかった。