苦い文学

非対面世界(3)

しかし、その謎はすぐに解けた。授業の後、研究室に戻る途中、たまたま出会った同僚にことの次第を語ると、こう言ったのだった。

「出席代行だよ。そういう業者がいるんだ」

「業者?」

「学生が金を払って、代わりに出席したり、レポートを書いたりしてくれる中国の業者がいるんだよ。こういうのは昔からいたが、オンラインになってから増えてきてる」

「それはひどいな」

「確かにそうだ。だが、事情がある。うちの大学に入る中国人のほとんどは、中国の競争社会で落ちこぼれた学生だ。そこで、親がせめて留学でもさせようっていうので、本人の意思とは関係がなく、日本に来たわけだ。だから、そもそも大学の講義になんかついていけるだけの実力もない。日本語だってろくに話せないだろ。じゃあ、どうしてそんな学生をうちの大学が受け入れるのか」

「ああ、金だ」

「そうだ。連中の親がとんでもなく金を持ってるからね」

「ただ、そういう業者がいて、留学生の親がなんでも金で解決するとしても、それにしてはずさんじゃないか。男と女が入れ替わるなんて」

「もちろん、他の大学じゃあ通用しない。オンラインで 100 人以上詰め込んで、儲けようとしている我が大学ならではだ」

「しかし、わかってしまったからには、そんな学生には単位はやれないな」

「そうだな。だがそれはキリがないぞ。他にもいるのだから、みんな F にしないと不公平だ」

「じゃあ、どうすりゃいい?」

「我々の仕事は学びたい学生に教えることだ。学びたくないヤツらに割く時間はない。それだけだ」

「それこそ不公平に思えるな」

この一言にイラついたのか、同僚はこう言って会話を打ち切った。

「だが、学校の都合というものがある。しかも我々はその金で食ってるんだ」