苦い文学

半減期

原発事故が起きたとき、その周辺のすべての住民は強制的に避難させられた。

私たちみんなだ。

私たちは楽しく遊んで暮らしていたのだが、楽しかったすべてのものを捨てなくてはならなかった。そして、仲良く暮らしていた私たちは、離れ離れになってしまった。

私たちが移住したのは見知らぬ町だった。清潔で、暮らしやすく、放射線量に悩まされることもなかった。

だが、生活はつらいものだった。なぜなら、私たちは他所者だったから。

はじめは誰もが歓迎し、同情してくれた。しかし、それらの気持ちはまるで、甘いコーティングのようなものだった。時間が溶かしてしまったあとは、その下に隠されていた憎悪が剥き出しになった。

私たちは好きでこんなところに来たのではないのだ。そして、町の連中だって好きで受け入れたわけではないのだ。

私たちの誰もが「帰ろう」と密かに言い交わすようになった。その囁きは次第に大きくなり、私たちの心を激しく突き動かした。

ある夜、私たちは故郷に向けて出発した。

どれだけ放射線が高かろうと構うものか、と私たちは思った。

放射能物質にはいつかは半減期がくるが、人の憎悪にはいつまでたっても減る時などきやしないのだ。